日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT42] 光ファイバーセンシング技術と分析による地球科学の発展

2025年5月29日(木) 13:45 〜 15:15 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:辻 健(東京大学大学院 工学研究科)、宮澤 理稔(京都大学防災研究所)、荒木 英一郎(海洋研究開発機構)、江本 賢太郎(九州大学大学院理学研究院)、座長:辻 健(東京大学大学院 工学研究科)、宮澤 理稔(京都大学防災研究所)、荒木 英一郎(海洋研究開発機構)、江本 賢太郎(九州大学大学院理学研究院)

15:00 〜 15:15

[STT42-06] トンガDAS観測における火山性地震の震源方位推定

*中尾 俊介1市原 美恵1中野 優2、Vaiomounga Rennie3、Kula Taaniela3篠原 雅尚1 (1.東京大学地震研究所、2.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、3.トンガ地質サービス)


キーワード:分散型音響センシング、火山性地震、フンガトンガ・フンガハアパイ火山

2022年1月に起きたフンガトンガ・フンガハアパイ火山(HTHH)の大規模噴火は,津波や降灰による被害を出した.海域火山は陸上火山に比べ観測点が少なく,噴火現象の理解や状況の監視が遅れている.海域火山の活動を観測する手段として,海底地震計が挙げられるが、海底地震計は非常にコストがかかり,特にリアルタイムでデータが得られるケーブル式海底地震計が整備されている地域は少ない.そこで,既存の海底光ファイバーケーブルを用いた分散型音響センシング(DAS)による観測が注目されている.
一般的な地震のアレイ観測では地震波の到来方向を精度よく推定するため十字形や丁字形などのアレイ形状が用いられる.DAS観測においてもケーブルが屈曲した部分があれば二次元的なアレイを構成できることになり,同様に到来方向の精密な推定が可能である.一方で通信用に敷設された海底ケーブルは通常陸上局を最短距離で接続するように直線を中心とした形状で構成されている.DAS観測の利点として既存の通信用ケーブルを転用し,機動的に観測が行えることがある.しかし,この場合はケーブルの形状がDAS観測に適しているとは限らず,前述の理由により主に直線状のアレイとなると考えられる.本研究では,短距離・直線状のケーブルによるDASデータから地震波の到来方向の推定を試みた.
本研究で解析するDAS観測データは,HTHH噴火による損傷の修復のため,トンガ・ヌクアロファにある陸上局から31km(HTHHから南南東約40km)の海底で切断されていたトンガ国内通信ケーブルを利用して2023年2月6日から13日にかけて実施された(Nakano et al., 2024, EPS).このケーブルは陸上局から約20kmにわたり水深の浅いサンゴ礁上に敷設されており,海洋波等による影響のためノイズレベルが非常に高い.また,水深が急激に深くなる地点ではケーブルが弛緩しフリースパンの状態となっていると考えられ,定常的にノイズレベルが高い区間が散在する.結果としてノイズレベルが低く微弱な地震を捉えられる区間はケーブル先端の3km程度に限られ,この区間のケーブルは直線状に敷設されている.
前報(Nakao et al., 2024, JpGU)では ,火山性微動に特徴的な低周波帯(2-4 Hz)に注目し,ノイズレベルの低い3km区間においてパワーの中央値をとり,継続時間の長いイベントを強調するアルゴリズムを開発して,P-Sの不明瞭なものも含めて全体(約7日間)で700個程度のイベントを検出した. そして,比較的大きい数個のイベントについては,相互相関解析や地上の観測点のデータも参照することにより,火山方向から来ているものや反対方向から来ているものがあることを示した.しかし,多くの小さなイベントについては,到来方向が不明であった.今回,これらのイベントについて,トリガーの前後のセンブランスを比較し,スローネスの大きさを仮定することにより,地震波の到来方向の推定を行った.
結果として,700個程度のイベントのうち,3割以上はHTHHおよびそれに連なる火山列の方向から到来している可能性が高いことが判明した.1日当たり数十回という火山性微動の数は国内の活動的な火山と比較しても大きい値で,火山から数十km離れた位置でこれらが観測されたことも踏まえると,同じ方向にある複数の活動的火山の中でも,HTHHが震源である可能性が高い.そして,その活動度は大規模噴火から1年を経た後でも相当に高かったものと考えられる.本研究は,短距離かつ直線状のDASアレイを用いた火山性微動の検出と到来方向推定が可能であることを示した.この結果は,既存の海底ケーブルを活用した機動的な火山監視の可能性を示唆するものである.

謝辞:
本研究で用いたデータは,トンガケーブル社,JICA,大湊隆雄氏・八木健夫氏(東大・地震研),小野重明氏(JAMSTEC),および,末次大輔氏・V. Tovi氏をはじめとするトンガ地質サービスのスタッフの協力によって得られたものです.本研究はJST/JICAによるSATREPS(No. JPMJSA2309)の支援を受けて実施しました.