17:15 〜 19:15
[STT42-P02] FEMを用いた深部孔内観測点で観測された間隙水圧と歪の潮汐応答の特性把握
キーワード:光ファイバ歪計、孔内観測点、潮汐応答、間隙水圧
潮汐応答は測地観測において最もよくみられる信号の一つである。傾斜や歪の観測では、潮汐応答はその定常性を利用して、センサのカップリング状態や観測所周辺の弾性特性の推定に使用される。そこで、本研究では有限要素法を用いて潮汐応答を計算することにより、長期孔内観測点C9038Bの測器応答や観測所周辺の地質構造の影響を推定した。
C9038Bは、南海トラフの紀伊水道沖の海底に掘削された深度500mの掘削孔内に設置されている。掘削孔は、深さ650m幅6kmのV字型の溝状の堆積層内に掘削された。観測項目は歪と間隙水圧で、海底下450m付近にセンサが埋設されている。歪センサは、設置に使用された構造物とともに堆積層にセメント固定されている。その区間の下部には、間隙水圧測定用の流体で満たされた密閉区間が作られている。
C9038Bの特徴の一つは一光ファイバセンシングの技術を歪計測に利用した点である。これにより正確で安定した歪計測が可能になると期待されており、分解能は0.1ナノ歪以下である。深部掘削孔の低ノイズな環境と併せて、この歪計は観測点周辺で将来のゆっくり地震の微小な信号を検出できると期待される。熊野海盆に設置されている既存の長期孔内観測点での間隙水圧観測は、スロースリップイベントを検出した実績がある(Araki et al., 2017; Ariyoshi et al., 2021)。
潮汐応答は、C9038B観測所の間隙水圧とひずみ記録では、最も明瞭な信号である。平均的には、間隙水圧とひずみ記録でそれぞれ約10 kPaと約300ナノ歪の振幅で見られる。間隙水圧の潮汐応答は海底水圧に対して 0.7倍で観測される。歪記録は海底水圧の変動とよく相関し、海底水圧の増加とともに伸長を示す。感度は -2.2× 10-11 [歪/Pa] であった。
間隙水圧と歪記録における潮汐応答のメカニズムを理解するために、海底の垂直荷重に対する応答を有限要素法 (FEM) を用いて計算した。計算は2段階に分けて行った。第一段階ではC9038B 観測所周辺の地質構造の応答を、第二段階では歪計センサの機器応答を求めた。間隙水圧と海底水圧の比は、第一段階の結果から求めることができる。歪計の感度は、第一段階の結果で得られた歪計センサの位置でのひずみ場を、歪計センサの測器応答を計算するためのモデルに入力することで求めた。観測所周辺の地質構造は、中央に幅 6 km深さ 650 m の V 字溝がある、 50 km 四方、深さ 20 km の直方体に簡略化してモデルを作成した。機器モデルは、中央に歪センサの簡略化された構造を含む 10 m 四方の直方体として作成した。弾性係数は、地震探査と掘削パラメータに基づいて与えた。FEMの計算には COMSOL Multiphysics 6.3 を使用した。
FEMの結果は、単純なモデルを用いたにもかかわらず、観測とよく一致した。海底とセンサ深度の圧力比は 0.7 で、これは海底水圧と間隙水圧の観測値の比と等しかった。歪の感度は -1.9× 10-11 [歪/Pa] で、これは観測の 80%に相当した。
地質モデルによって得られた歪場の分布は、センサ周辺の地質構造が歪測定の振幅に影響を与えることを示唆する。特に面ひずみでは、C9038Bのセンサ位置での歪の大きさは海底の1.8倍に増幅されていた。対照的に、圧力や鉛直の直歪は限定的な影響しか見られなかった。さらに、機器の構造も歪の計測振幅に影響を与えた。センサによって測定される歪は、周囲の媒質中の歪の1.1倍の大きさとなっていた。
C9038Bは、南海トラフの紀伊水道沖の海底に掘削された深度500mの掘削孔内に設置されている。掘削孔は、深さ650m幅6kmのV字型の溝状の堆積層内に掘削された。観測項目は歪と間隙水圧で、海底下450m付近にセンサが埋設されている。歪センサは、設置に使用された構造物とともに堆積層にセメント固定されている。その区間の下部には、間隙水圧測定用の流体で満たされた密閉区間が作られている。
C9038Bの特徴の一つは一光ファイバセンシングの技術を歪計測に利用した点である。これにより正確で安定した歪計測が可能になると期待されており、分解能は0.1ナノ歪以下である。深部掘削孔の低ノイズな環境と併せて、この歪計は観測点周辺で将来のゆっくり地震の微小な信号を検出できると期待される。熊野海盆に設置されている既存の長期孔内観測点での間隙水圧観測は、スロースリップイベントを検出した実績がある(Araki et al., 2017; Ariyoshi et al., 2021)。
潮汐応答は、C9038B観測所の間隙水圧とひずみ記録では、最も明瞭な信号である。平均的には、間隙水圧とひずみ記録でそれぞれ約10 kPaと約300ナノ歪の振幅で見られる。間隙水圧の潮汐応答は海底水圧に対して 0.7倍で観測される。歪記録は海底水圧の変動とよく相関し、海底水圧の増加とともに伸長を示す。感度は -2.2× 10-11 [歪/Pa] であった。
間隙水圧と歪記録における潮汐応答のメカニズムを理解するために、海底の垂直荷重に対する応答を有限要素法 (FEM) を用いて計算した。計算は2段階に分けて行った。第一段階ではC9038B 観測所周辺の地質構造の応答を、第二段階では歪計センサの機器応答を求めた。間隙水圧と海底水圧の比は、第一段階の結果から求めることができる。歪計の感度は、第一段階の結果で得られた歪計センサの位置でのひずみ場を、歪計センサの測器応答を計算するためのモデルに入力することで求めた。観測所周辺の地質構造は、中央に幅 6 km深さ 650 m の V 字溝がある、 50 km 四方、深さ 20 km の直方体に簡略化してモデルを作成した。機器モデルは、中央に歪センサの簡略化された構造を含む 10 m 四方の直方体として作成した。弾性係数は、地震探査と掘削パラメータに基づいて与えた。FEMの計算には COMSOL Multiphysics 6.3 を使用した。
FEMの結果は、単純なモデルを用いたにもかかわらず、観測とよく一致した。海底とセンサ深度の圧力比は 0.7 で、これは海底水圧と間隙水圧の観測値の比と等しかった。歪の感度は -1.9× 10-11 [歪/Pa] で、これは観測の 80%に相当した。
地質モデルによって得られた歪場の分布は、センサ周辺の地質構造が歪測定の振幅に影響を与えることを示唆する。特に面ひずみでは、C9038Bのセンサ位置での歪の大きさは海底の1.8倍に増幅されていた。対照的に、圧力や鉛直の直歪は限定的な影響しか見られなかった。さらに、機器の構造も歪の計測振幅に影響を与えた。センサによって測定される歪は、周囲の媒質中の歪の1.1倍の大きさとなっていた。