日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC30] International Volcanology

2025年5月28日(水) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:Conway Chris(Geological Survey of Japan, AIST)、松本 恵子(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、山田 大志(京都大学防災研究所 火山活動研究センター)、川口 允孝(東京大学地震研究所)、座長:松本 恵子(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、川口 允孝(東京大学地震研究所)、無盡 真弓(東北大学)、丸石 崇史(防災科学技術研究所)


11:00 〜 11:15

[SVC30-08] 振動観測による桜島南岳の火山灰噴出密度評価

*山田 大志1井口 正人2,1 (1.京都大学防災研究所、2.鹿児島市)

キーワード:火山灰、火山ガス、桜島火山

1.はじめに
火山噴火に伴い放出される軽石やレキ,火山灰などの火砕物の量や噴出率は,噴火や誘発される災害の規模の評価に直結する指標である.桜島火山の山頂噴火活動では,山腹に設置された観測坑道における高精度な地盤変動と地震動の観測によって,放出火山灰量を精度良く推定できることが示されている(Iguchi, 2016).しかし噴火現象では火砕物と同時に火山ガスも放出され,その量比は常に一定とは限らない.2017年以降の南岳火口での噴火活動では,それ以前の昭和火口活動期と比べて火山ガス放出が卓越する特徴が見出されている(Iguchi et al., 2022).この研究では,火砕物と火山ガスの混合流体の火口における噴出密度ρ(kg/m3)を物理観測によって評価することを試みる.噴出するマグマを模した気液二相流の状態方程式からは,ρは最大で10程度となることが予想される(小屋口, 2008).
火砕物の噴出率MER (kg/s)は火口の断面積S(m3),噴出流速v(m/s),ρの積で表現できる.vについては大気中を伝搬する圧力擾乱として空気振動観測から抽出することが期待される.ρの変化は,単位時間当たりの地震動と空気振動の振幅パワー比ηに反映される可能性がある(Johnson and Aster, 2005).ρが高いほど,火道内での流体と壁面の間の抵抗が増加することで地震動の励起がより卓越することが期待される.上記をまとめると,MER=ρvS, ρ=A/log(η)という関係性で表される.他火山での事例ではηは数桁の幅を持つことから,ここではlog(η)ρに対応するとした.この関係が実際の噴火現象で成立するとすれば,観測に基づいて定数Aが決定できることが期待される.これら一連の仮説について,桜島南岳の噴火活動を対象に検証を試みた.

2.振動観測と信号の検出
空気振動は励起源からの信号減衰や伝搬過程の影響を低減するため,南岳山頂火口域から西側に約2 km離れた権現観測点における観測記録(SI104)を用いる.権現での空振観測は2021年4月に開始したため,2021年4月から2024年11月までを解析対象とした.火山灰放出に伴う空振記録は1 Hz以下の帯域にも優位な信号を有することがある(山田・他, 2022).しかし,数10 m程度の規模と想定される火口での噴出に伴う信号を抽出する目的から,1-7 Hzの帯域の信号に着目する.地震記録については,放出火山灰量との対応が良い有村観測坑道の短周期上下動地震記録(3-4 Hz)を用いる(Iguchi, 2016).空振記録は風による影響が著しい場合もあるため,上記の地震記録の平均振幅に基づいて火山灰放出を反映する時間窓を探索した.ダイポールモデル(例えば,Delle Donne and Ripepe, 2012)に基づき火口半径を10 mと仮定すると,対象とした時間窓の空振観測振幅から期待される平均的なvは概ね50 m/s程度となる.また爆発に伴う衝撃波の影響を避けるため,vが100 m/s以上となる時間窓は対象から除外した.

3.結果
vSから換算される噴出体積と月別降下火山灰量(鹿児島県計測)を用いてρを検討すると,結果は1.5を平均として0.02から8.7の間に分布する.その時系列を検討すると,2023年1月以降はρが連続的に1以下で徐々に低下する傾向が認められる.低下のピークである2023年7月には0.02となるが,これは7月10日から13日における著しい微動状の空振励起を特に反映しており,一時的な揮発性成分放出の活発化を示唆している.その後ρは上昇する傾向にあるが,2024年7月には著しい空振パルスを伴う活動(7月14日)が発生し,ρは0.2に低下した.このような活動は2022年9月23日,2023年10月11日にも発生している.次に,上記で推定したρと月毎の全検出イベントのlog(η)の総和の関係を検討した.値はやや広い範囲に分布するものの,A=5-50程度を仮定することで両者の分布を概ね説明することができる.こうした特徴について,現在対象としている期間以前の南岳火口の活動やそれ以前の昭和火口活動期へ対象を拡張し,引き続き検証を行う.