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[SVC31-04] 火山防災・避難計画における避難シミュレーションの活用
キーワード:火山災害、防災計画、避難計画、避難シミュレーション、マルチエージェントシミュレーション、防災教育
1.はじめに
他の自然災害と比べて火山災害が有する特徴として,噴火現象に纏わるハザード条件が多様かつ不規則に変化することと,ハザードの危険がある対象に観光や登山目的として人が集まることである.そのため,防災計画・避難計画を準備する上で,ハザード種別,避難対象者,避難経路,避難場所,発災の時期・時間帯等の条件を考慮する必要がある.特にタイムラインの評価には定量的な判断が求められる.しかし,通常の机上演習や野外訓練等のみでは定量的な検証は難しい.検証の補佐手段として,避難シミュレーションの活用がある.本検討では,マルチエージェントシミュレーションを用いて避難行動のモデル検証を行い,避難計画準備・更新の支援ツールの可能性評価を目的とした.
2.マルチエージェントシミュレーション
避難シミュレーションの行動モデルには幾つか種類があるが,本検討ではマルチエージェントモデルを採用した.マルチエージェントモデルは,個々の判定アルゴリズムを持つエージェントを複数設定してそれらの相互作用を演算することによって,エージェントが形成する群衆の挙動を表現するものである.演算結果から,群衆密度,流動係数,特定地点の通過数,総経過時間等を表現できる.本検討では,エージェント条件として初期位置・速度,目的地等を与え,行動・環境条件として歩行領域,障害物,中継地点,速度変化領域等を設定し,群集挙動を再現した.応用として,噴火現象や規模に応じて危険範囲を動的に設定し,噴石や火山灰による通行不能区間の変動や路面状況等の影響を反映させることもでき,混雑や混乱等の状況を考慮した避難計画の評価も可能となる.本検討ではシミュレーターとしてSimTreadを使用した.本ソフトウェアは、CAD・BIMソフトウェア Vectorworksのエクステンションとして動作し,演算結果をCAD上で可視化し,また動画やログテキストが生成できる.
3.焼岳(上高地)をモデルとした検証
火山災害へのマルチエージェントシミュレーションの適用にあたり,プログラムが目的意図通りに適切に動作し,その結果が避難計画に反映可能な保証が必要である.ここでは,演算結果について評価しやすいケースとして焼岳火山(上高地)をモデルとした検討を行った.焼岳火山防災避難計画(令和6年1月)に基づき,噴火警戒レベル3ケース2にて噴石範囲が拡大した場合を条件とし,避難にかかる総所要時間等の確認や避難計画の課題整理・題解決方法の検討を目的とした登山客・観光客の避難行動を再現した.シミュレーションにより,エージェントの初期位置・エージェントの移動速度・避難経路などの条件が群衆の動きに及ぼす差異が現れた.結果をもとに,避難にかかる総経過時間に対して種々の要因がどの程度影響を与えているか確認ができた.検討結果を通じてその他の防災計画上の課題も抽出できる.例えば,効果的な避難誘導の方法,避難経路確保のための施設整備の検討,避難困難となる場合の対象地区の生存対策等が考えられる.
4.御嶽火山をモデルとした検証
上記の焼岳のモデルでは,基本的な環境条件を除き,ハザード発生時の諸条件はあくまで想定とした検討であった.マルチエージェントシミュレーションの演算結果が現実の避難行動を再現するか確認のため,実際の避難行動との対比による検証が必要である.ここでは,2014年の御嶽火山噴火を検証の題材として取り扱った.発災時に現地で行動した山岳ガイドや登山者,避難誘導や支援を行った各山小屋の支配人に発災当時の状況について情報収集を行い,得られた情報を基にエージェントの動作や行動制限の諸条件を設定した.環境条件として,登山道の線形・勾配・幅員・路面の状況・避難経路・立ち寄り及び合流地点の設定を付与した.集団の一時待機や複数集団の合流等の設定にはプログラムの特性に合わせた工夫調整が必要であったが,演算は概ね良好に稼働し,避難経路上の特定地点における通過数・通過時間,流動係数,総経過時間等は実際の災害時の状況を再現できた.この結果を基に,様々なif条件を与えて,防災計画・避難計画の細密な検討に用いることができる.
5.活用方法の展開
他の自然災害と同じく火山防災分野でも,防災計画・避難計画の準備において避難シミュレーションを活用した課題抽出・問題解決等の支援を行うことができる.避難行動に関する定量的な条件設定ができるため,種々の火山ハザード条件下の避難計画タイムラインや広域避難計画の客観化に有効である.また,避難シミュレーションは防災教育への適用も期待できる.防災教育の現場で「考える」「気づき」を与える学習において,シミュレーション結果を使ったツールの学習効果が期待できる.今後の展開として,プロジェクションマッピングを用いた演出方法についても検討を進める計画である.
他の自然災害と比べて火山災害が有する特徴として,噴火現象に纏わるハザード条件が多様かつ不規則に変化することと,ハザードの危険がある対象に観光や登山目的として人が集まることである.そのため,防災計画・避難計画を準備する上で,ハザード種別,避難対象者,避難経路,避難場所,発災の時期・時間帯等の条件を考慮する必要がある.特にタイムラインの評価には定量的な判断が求められる.しかし,通常の机上演習や野外訓練等のみでは定量的な検証は難しい.検証の補佐手段として,避難シミュレーションの活用がある.本検討では,マルチエージェントシミュレーションを用いて避難行動のモデル検証を行い,避難計画準備・更新の支援ツールの可能性評価を目的とした.
2.マルチエージェントシミュレーション
避難シミュレーションの行動モデルには幾つか種類があるが,本検討ではマルチエージェントモデルを採用した.マルチエージェントモデルは,個々の判定アルゴリズムを持つエージェントを複数設定してそれらの相互作用を演算することによって,エージェントが形成する群衆の挙動を表現するものである.演算結果から,群衆密度,流動係数,特定地点の通過数,総経過時間等を表現できる.本検討では,エージェント条件として初期位置・速度,目的地等を与え,行動・環境条件として歩行領域,障害物,中継地点,速度変化領域等を設定し,群集挙動を再現した.応用として,噴火現象や規模に応じて危険範囲を動的に設定し,噴石や火山灰による通行不能区間の変動や路面状況等の影響を反映させることもでき,混雑や混乱等の状況を考慮した避難計画の評価も可能となる.本検討ではシミュレーターとしてSimTreadを使用した.本ソフトウェアは、CAD・BIMソフトウェア Vectorworksのエクステンションとして動作し,演算結果をCAD上で可視化し,また動画やログテキストが生成できる.
3.焼岳(上高地)をモデルとした検証
火山災害へのマルチエージェントシミュレーションの適用にあたり,プログラムが目的意図通りに適切に動作し,その結果が避難計画に反映可能な保証が必要である.ここでは,演算結果について評価しやすいケースとして焼岳火山(上高地)をモデルとした検討を行った.焼岳火山防災避難計画(令和6年1月)に基づき,噴火警戒レベル3ケース2にて噴石範囲が拡大した場合を条件とし,避難にかかる総所要時間等の確認や避難計画の課題整理・題解決方法の検討を目的とした登山客・観光客の避難行動を再現した.シミュレーションにより,エージェントの初期位置・エージェントの移動速度・避難経路などの条件が群衆の動きに及ぼす差異が現れた.結果をもとに,避難にかかる総経過時間に対して種々の要因がどの程度影響を与えているか確認ができた.検討結果を通じてその他の防災計画上の課題も抽出できる.例えば,効果的な避難誘導の方法,避難経路確保のための施設整備の検討,避難困難となる場合の対象地区の生存対策等が考えられる.
4.御嶽火山をモデルとした検証
上記の焼岳のモデルでは,基本的な環境条件を除き,ハザード発生時の諸条件はあくまで想定とした検討であった.マルチエージェントシミュレーションの演算結果が現実の避難行動を再現するか確認のため,実際の避難行動との対比による検証が必要である.ここでは,2014年の御嶽火山噴火を検証の題材として取り扱った.発災時に現地で行動した山岳ガイドや登山者,避難誘導や支援を行った各山小屋の支配人に発災当時の状況について情報収集を行い,得られた情報を基にエージェントの動作や行動制限の諸条件を設定した.環境条件として,登山道の線形・勾配・幅員・路面の状況・避難経路・立ち寄り及び合流地点の設定を付与した.集団の一時待機や複数集団の合流等の設定にはプログラムの特性に合わせた工夫調整が必要であったが,演算は概ね良好に稼働し,避難経路上の特定地点における通過数・通過時間,流動係数,総経過時間等は実際の災害時の状況を再現できた.この結果を基に,様々なif条件を与えて,防災計画・避難計画の細密な検討に用いることができる.
5.活用方法の展開
他の自然災害と同じく火山防災分野でも,防災計画・避難計画の準備において避難シミュレーションを活用した課題抽出・問題解決等の支援を行うことができる.避難行動に関する定量的な条件設定ができるため,種々の火山ハザード条件下の避難計画タイムラインや広域避難計画の客観化に有効である.また,避難シミュレーションは防災教育への適用も期待できる.防災教育の現場で「考える」「気づき」を与える学習において,シミュレーション結果を使ったツールの学習効果が期待できる.今後の展開として,プロジェクションマッピングを用いた演出方法についても検討を進める計画である.