日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 火山防災の基礎と応用

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、森田 雅明(東京大学地震研究所)、座長:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

10:45 〜 11:00

[SVC31-07] 富士山における火山防災教育教材の開発 -授業実践とその効果, その2-

*吉本 充宏1久保 智弘1亀谷 伸子1本多 亮1、藤巻 桂吾2横山 光3、三ツ井 聡美4 (1.山梨県富士山科学研究所、2.忍野小学校、3.北翔大学、4.筑波大学)

キーワード:富士山、噴火、避難、教材、実験

富士山噴火時の避難経路やタイミングは、火口の出現場所や発生する火山現象によって異なる。そのため、的確な避難行動をとるためには、科学的知識に基づいた行動が重要である。本研究では、過去の富士山噴火で頻繁に発生する溶岩流からの避難を理解するための授業案を含む実験教材を開発し、その教育効果を検証した。開発した教材を用い、昨年に引き続き富士河口湖町の小立小学校2クラスおよび勝山小学校2クラスの小学校6年生、および新たに忍野村の忍野小学校6年生3クラスを対象に授業を実施した。小立小学校では、学級担任が授業案の細案の作成し、指導資料の修正を行った。授業前半の座学の部分を学級担任が担当し、町内の複数の教員が実験部分を担当した。勝山小学校では、理科担当の教員が小立小学校の授業実践を参考に、座学部分を担当するとともに、実験部分についても主体的に運営し、富士山科学研究所の職員が補助として参加した。忍野小学校での授業は富士河口湖町で改訂した授業案と指導資料を忍野小学校向けに再調整して活用した。授業を行う3名の学級担任は事前に富士山科学研究所の研究員から富士山の噴火や噴火時の避難についてと本火山防災教育教材について説明を受けた。授業案の細案や掲示資料が既に用意されていたので短時間で授業の概要を把握し、授業の座学部分を担当した。
富士河口湖町の教員を対象に実施したアンケートでは、教材の学習効果に関して肯定的な意見が多く寄せられた。一方で、学習細案作成の負担や、過密する現行カリキュラム内での位置づけに関する課題も指摘された。本年度新たに実施した忍野小学校の担任へのヒアリングでは、用意された教材は授業を行う上で必要十分であり、実験やシミュレーション動画の学習効果も高かったとの評価を得た。また、初めて本教材を使用したことについて、授業のカリキュラム上の位置づけも適切であったと判断された。火山に関する地域資料が少ない中、噴火現象だけでなく防災についても学べる単元構成は高く評価された。一方で、児童の考えを引き出す方法や、実験の時間配分には改善の余地があるとの指摘もあった。また、既に富士河口湖町で開発された教材を活用することで授業準備の負担が軽減された。さらに、富士山科学研究所がティームティーチング(TT)として加わることで、実験をより効果的に実施できた。
昨年度と同様に、主体的な行動を促す教育効果を評価するため、小学校学習指導要領の評価の3観点に即し、以下の軸に基づいたクイズ(2択または3択、計15問)を授業の前後で実施した。a)現象を理解する基礎知識(知識・技能)b)危機を予測し,避難行動を選択できる能力(思考・判断・表現)c)日常的な備えや防災活動への意欲を持つこと(学びに向かう力,人間性等)本年度の授業でも溶岩流に重点的に扱ったため、溶岩流に関する設問では学習効果が見られた一方で、火山灰に関する設問では変化が見られなかった。また、防災意識の評価では、富士山噴火に関する設問では意欲の向上が見られたが、一般的な災害に関する設問では向上が見られなかった。
授業実践の結果、学級担任の視点に立った授業案の改善が図られ、教員がより説明しやすい内容となった。また、授業案の最適化により、教員1人でも実験を運営できる可能性が見いだされた。さらに、授業案の細案が作成されたことで、これまで実施していなかった地域にも展開ができた。一方で、富士山噴火への具体的な対応についての学習効果は確認されたが、より広範な防災意識の向上にはさらなる工夫が必要であることが示唆された。