日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 火山防災の基礎と応用

2025年5月25日(日) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、森田 雅明(東京大学地震研究所)、座長:宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)

11:30 〜 11:45

[SVC31-10] 箱根大涌谷園地内でのラドン連続測定(続報)

*熊谷 英憲1,3萬年 一剛2 (1.学習院女子大学、2.神奈川県温泉地学研究所、3.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:連続測定、ラドン濃度

長期のヘリウムガス現場観測実現にむけた予備観測としてのラドン連続観測を箱根大涌谷にて継続中である。これは、水蒸気噴火の兆候把握をめざした科学研究費助成の一環である(課題番号:21K04602)。噴火準備過程が明瞭な現象として把握されず、突発的に噴火に襲われて人命が脅かされた例は今世紀に入っても複数を数え、噴火活動にあたって顕著なマグマ移動を伴わない、いわゆる水蒸気噴火であった。当観測はこのような水蒸気噴火の兆候把握をめざしたものである。計画では最終目標を周辺大気中のヘリウム濃度についての連続観測として、気体透過性の違いを利用してヘリウムガスを単離する機材の試作を行っている。これに並行した機材耐久性の試験がこのラドン観測で、腐食性火山ガスが充満する環境下での耐久性試験であると同時に火山ガス濃度変動のタイムスケール予備観測でもある。ドイツ連邦共和国Saphymo GmbH製の可搬型ラドン計Alpha GUARD2000にペーパーフィルターを介して環境大気を導入し、付属品の小型空気ポンプと共にプラスチックコンテナに密閉してある。おおよそ月1回のデータ回収時に密閉を解くが、21ヶ月目にシリアルケーブル変換器の金属部分がう蝕したほかは特段の腐食等は見られず、設置2年を経て良好に作動している。
ラドン濃度計測は2023年1月に開始し、データの連続記録は2023年7月から、本予稿の作成時点(2025年2月)まで続いており、なお継続中である。この間の1日を超える中断は2024年10月1日~9日のみである。ラドン濃度は放射能として計測しており単位はベクレル毎秒(Bq/s)、放射線計数と同時に、計測器温度、相対湿度、気圧を記録している。観測地点は千メートルを超える標高であるため、観測期間を通じて大気圧は900hPa内外であるが、これによる計数の標準大気圧への補正は行っていない。屋外ドライエリアということもありラドン濃度は国内平均(家屋内)より低く、観測期間を通じた平均は6Bq/m3の程度である。ここで、日本における屋内ラドンの平均濃度は16Bq/m3の程度となっている(Suzuki et al.,2010; 環境省, 2015)。昨年の報告同様、ラドン濃度変動はおおむね計数の平方根の程度となっている。
昨年の報告後のラドン計数記録を時系列で示す(図)。詳しく見ると、計数誤差の程度を超えてパルス的に増大することがあり、多くの場合、次の計測値となる10分後の値は減少するが、増大前水準には必ずしも戻らない。先の報告期間と同様、パルス状の瞬時値の増大が頻繁になることによる数-10日程度の周期が認められる。加えて、前後期間より平均的な計数が増大しているように見える期間が散見される。最も明瞭な時期は①の2024年7月28日~8月26日および②11月7日~24日であり、この期間のラドン濃度は平均でそれぞれ5.6 Bq/m3、6.6 Bq/m3である:ただし、それぞれの1SD(標本標準偏差)=4.7 Bq/m3、5.0 Bq/m3の程度なので統計的な有意差とまではいえない。一方、箱根大涌谷近傍では2024年4月30日に地震活動の顕著な高まりがあったが、その期間のラドン濃度には特段の変化は見られない(③)。これら周期や時折生じる計数増に変化がないか引き続き注視し、ヘリウム観測装置の完成までの間は同地で、ヘリウム観測装置設置後は当該装置と同じ場所に移設し、観測を継続する計画としている。