17:15 〜 19:15
[SVC31-P06] 近年発生した溶岩流を主体とする火山噴火に対する居住地の住民避難と防災対応
キーワード:噴火の時系列、早期警戒、噴火警戒レベル
富士山では歴史時代に延暦噴火(西暦800-802年)、貞観噴火(西暦864-866年)等の複数回の溶岩流噴火が発生している。将来の富士山での噴火対応を考える上で溶岩流噴火の想定は極めて重要である。富士山の溶岩流への想定は富士山ハザードマップ改訂(2021年)で、避難対応は富士山火山避難基本計画(2023年)を経て検討され、現在は市町村の個別の避難計画が進められている段階である。
本稿では、将来の富士山で起こりうる溶岩流に対する効果的な避難のために、近年発生した2018年キラウエア火山(米国、ハワイ島)、2021年クンブレ・ビエハ火山(スペイン、ラ・パルマ島)、2021年ニーラゴンゴ火山(コンゴ民主共和国)、2023年-現在のレイキャネス半島(アイスランド)等の居住地域に影響を与えた溶岩流噴火の事例を比較する。これら4つの事例をもとに、火山活動の推移、監視観測、防災対応機関の動きおよび居住地域からの住民避難のタイミング等について時系列で整理し、溶岩流噴火への防災対応や住民避難等への効果的な取り組みを考察した。
これらキラウエア、クンブレ・ビエハ及びレイキャネスの3つの火山地域では、本邦の噴火警戒レベルに相当する制度(米国: volcano alert-level system, スペイン: semáforo volcanic, アイスランド: Civil Protection Emergency Levels/Phases)が導入されており、当局は噴火前から自らのウェブサイトとSNSそして地元メディアを利用して、対象となる地域や地区を具体的に示して住民等への情報発信を行っていた。一方で、ニーラゴンゴ火山の事例では監視観測が十分に機能しておらず、噴火警戒レベルも未導入であり事前の警戒情報は出されていなかった。
今回比較した噴火事例はいずれも既存の噴火口ではなく火山の山麓ないし火山地域に新たな噴火口が出現し溶岩流を噴出する噴火であった。そのため、噴火前後の火口位置を特定することの困難さが共通する課題であった。住民避難のタイミングを比較すると、キラウエアでは噴火の数時間前に居住地に変状が発生し、噴火前に住民避難が開始された。クンブレ・ビエハは噴火当日に火山性地震の高まりは観測されたものの、噴火前の火口位置特定には至らず住民避難は行われなかった(警戒情報の発表のみ)が、避難行動要支援者の避難は実施された。レイキャネスでは噴火前の火口の特定には至らなかったが、地殻変動による亀裂へのリスクから全住民が避難していた。ニーラゴンゴでは噴火発生後に住民が自主的に避難を開始した。
噴火当日の避難者数を比較するとキラウエア(約3000人)、クンブレ・ビエハ(約5000人)、レイキャネス(約3700人)そしてニーラゴンゴ(約3万人)であった。キラウエア、クンブレ・ビエハ及びレイキャネスは、噴火当日に住民の死傷者は発生しなかった。一方、ニーラゴンゴでは、溶岩流により家屋への被害のほか死傷者約30名が発生するなどの人的被害が生じた(OCHA, 2021)。
これらの事例から、監視観測に基づいた火山活動の警戒レベルの運用と、噴火前の警戒段階で避難の対象となりうる地域、地区を示した事例(例:キラウエアではレイラニ・エステート、ラニプナ・ガーデン地区)もあるが、クンブレ・ビエハのように監視観測体制や噴火警戒レベルを運用下でも事前に火口位置の特定が難しく、噴火前の避難指示を出すことができなかった事例も見られた。ニーラゴンゴでは監視観測体制が充分に機能しておらず、地域住民に事前の情報提供が不足していたことが人的被害に繋がった要因の一つと考えられる。また溶岩流の及んだ地域の人口密度を比較すると、キラウエアが約150人/km2、クンブレビエハで約50人/km2に対比してニーラゴンゴでは、避難対象となったゴマ市が約6000人/km2と人口密度の高い地域であったことは、ニーラゴンゴの事例で避難行動を困難にした素因と考えられる。
今回比較した溶岩流を主体とした噴火事例からは、監視観測や噴火警戒レベルを運用していても火口位置の特定が困難なケースがあることが分かった。そのために地表面の変状等を素早く捉えて避難行動につなげる必要が指摘される。また富士山周辺地域には人口密度が数百人/km2となる地域もあり、噴火の際はキラウエアやクンブレ・ビエハよりも人口密度の高い地域での避難行動ミッションとなる可能性がある。
本稿では、将来の富士山で起こりうる溶岩流に対する効果的な避難のために、近年発生した2018年キラウエア火山(米国、ハワイ島)、2021年クンブレ・ビエハ火山(スペイン、ラ・パルマ島)、2021年ニーラゴンゴ火山(コンゴ民主共和国)、2023年-現在のレイキャネス半島(アイスランド)等の居住地域に影響を与えた溶岩流噴火の事例を比較する。これら4つの事例をもとに、火山活動の推移、監視観測、防災対応機関の動きおよび居住地域からの住民避難のタイミング等について時系列で整理し、溶岩流噴火への防災対応や住民避難等への効果的な取り組みを考察した。
これらキラウエア、クンブレ・ビエハ及びレイキャネスの3つの火山地域では、本邦の噴火警戒レベルに相当する制度(米国: volcano alert-level system, スペイン: semáforo volcanic, アイスランド: Civil Protection Emergency Levels/Phases)が導入されており、当局は噴火前から自らのウェブサイトとSNSそして地元メディアを利用して、対象となる地域や地区を具体的に示して住民等への情報発信を行っていた。一方で、ニーラゴンゴ火山の事例では監視観測が十分に機能しておらず、噴火警戒レベルも未導入であり事前の警戒情報は出されていなかった。
今回比較した噴火事例はいずれも既存の噴火口ではなく火山の山麓ないし火山地域に新たな噴火口が出現し溶岩流を噴出する噴火であった。そのため、噴火前後の火口位置を特定することの困難さが共通する課題であった。住民避難のタイミングを比較すると、キラウエアでは噴火の数時間前に居住地に変状が発生し、噴火前に住民避難が開始された。クンブレ・ビエハは噴火当日に火山性地震の高まりは観測されたものの、噴火前の火口位置特定には至らず住民避難は行われなかった(警戒情報の発表のみ)が、避難行動要支援者の避難は実施された。レイキャネスでは噴火前の火口の特定には至らなかったが、地殻変動による亀裂へのリスクから全住民が避難していた。ニーラゴンゴでは噴火発生後に住民が自主的に避難を開始した。
噴火当日の避難者数を比較するとキラウエア(約3000人)、クンブレ・ビエハ(約5000人)、レイキャネス(約3700人)そしてニーラゴンゴ(約3万人)であった。キラウエア、クンブレ・ビエハ及びレイキャネスは、噴火当日に住民の死傷者は発生しなかった。一方、ニーラゴンゴでは、溶岩流により家屋への被害のほか死傷者約30名が発生するなどの人的被害が生じた(OCHA, 2021)。
これらの事例から、監視観測に基づいた火山活動の警戒レベルの運用と、噴火前の警戒段階で避難の対象となりうる地域、地区を示した事例(例:キラウエアではレイラニ・エステート、ラニプナ・ガーデン地区)もあるが、クンブレ・ビエハのように監視観測体制や噴火警戒レベルを運用下でも事前に火口位置の特定が難しく、噴火前の避難指示を出すことができなかった事例も見られた。ニーラゴンゴでは監視観測体制が充分に機能しておらず、地域住民に事前の情報提供が不足していたことが人的被害に繋がった要因の一つと考えられる。また溶岩流の及んだ地域の人口密度を比較すると、キラウエアが約150人/km2、クンブレビエハで約50人/km2に対比してニーラゴンゴでは、避難対象となったゴマ市が約6000人/km2と人口密度の高い地域であったことは、ニーラゴンゴの事例で避難行動を困難にした素因と考えられる。
今回比較した溶岩流を主体とした噴火事例からは、監視観測や噴火警戒レベルを運用していても火口位置の特定が困難なケースがあることが分かった。そのために地表面の変状等を素早く捉えて避難行動につなげる必要が指摘される。また富士山周辺地域には人口密度が数百人/km2となる地域もあり、噴火の際はキラウエアやクンブレ・ビエハよりも人口密度の高い地域での避難行動ミッションとなる可能性がある。