日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC31] 火山防災の基礎と応用

2025年5月25日(日) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、宮城 洋介(国立研究開発法人 防災科学技術研究所)、及川 輝樹(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、森田 雅明(東京大学地震研究所)

17:15 〜 19:15

[SVC31-P08] 無人航空機(UAV)を用いた富士山噴火時の状況把握を想定した調査手法の検討

*江川 香1佐々木 寿1、加藤(成毛) 志乃1田中 利昌1、野口 克也2、眞壁 美穂2、伊村 光生2、加藤 駿2、高村 善英2、佐藤 康輔2、中島 夢月2、中戸 真一3、加藤 隼平3、前田 和祐3、山内 琳大郎3 (1.アジア航測株式会社、2.株式会社JDRONE 、3.国土交通省中部地方整備局富士砂防事務所)

キーワード:無人航空機、火山噴火、火山災害、緊急調査

火山噴火時には、迅速な住民避難や防災対策のために、火口形成位置や溶岩流の分布域を確認することが重要である。富士山周辺にはCCTVカメラが複数設置されており、噴火時にはこれを活用した状況確認が可能である。しかし、富士山麓には樹林帯が広がっているため、噴火発生箇所によっては確認が困難な場合もある。このような場合には、有人ヘリや無人航空機(UAV)を用いた上空からの調査が期待される。火山地域は標高差が大きく、広域の状況把握には高高度での飛行が必要である。また、低温かつ強風であり、気象条件が不安定であるため、UAVには飛行難易度の高い環境となる。このような背景を踏まえ、本検討では富士山5合目(標高2,300m付近)において、火山噴火時の状況把握を目的とした調査を想定した実証実験を行い、高標高域でのUAVの飛行能力や撮影方法を確かめるとともに、取得できるデータの精度について検証した。
 実証実験は2024年11月14日に実施し、YAMAHA FAZER R G2とDJI Mavic 3Tの2種類の機体を使用した。実施時の天候は晴れ~曇り、地上気温1~4℃、平均風速6~10m/sであった。FAZER R G2はガソリンエンジンを搭載した無人ヘリである。LTE通信および衛星回線による遠隔地からのオペレーションが可能であり、現地及び福島県南相馬市から操縦を行った。機体の運航のために標準搭載されているカメラに加えて、機体下部に設置したペイロードカメラ(GoProカメラ)を用いて動画を撮影した。標高約2,400mの等高線上を対地高度100mで飛行し、飛行距離は約5km、飛行時間は約30分となった。これにより、富士山の気温および高標高、強風下でも飛行が可能であることが確認できた。燃料消費を考慮すると、今回の条件下では最大60分程度の飛行が可能と考えられることから、一般的な電動式のUAVよりも長時間の調査が可能である。
Mavic 3Tは測量やインフラ点検に活用されている電動式の無人マルチコプターである。重量920g、プロペラ展開時の全長35cm程度の比較的小型の機体であり、可視カメラとサーマルカメラが搭載されている。Mavic 3Tを用いたフライトは夜間(日の出前)と日中に実施した。主に山頂域を対象として海抜約3,800mの高高度からの確認を行い、動画・静止画を取得した。ミッションでは最大で離着陸地点から距離約2km、高度は離着陸地点から対地約1,500mまで飛行させた。一般的に低温下ではUAVのバッテリー性能が低下するとされているが、地上気温1~3℃程度でも極端なバッテリーの性能低下はなく、平均風速10m/s程度の強風下でも飛行できることが確認された。夜間飛行では、サーマルカメラにより裸地と樹林帯の境界(Fig.1 (a))や、積雪域などの温度ギャップ(Fig.1 (c))が遠距離・高高度からでも明瞭に判別できた。また、対象物から1.5km程度離れた場所からでも5m以上の大きさの礫や急崖(Fig.1 (c), Fig. 2 A, B)を認識できた。日中の飛行においても、逆光や影部など可視カメラでの状況把握が困難な場合に、サーマルカメラの画像では斜面や谷部の地形などを確認できた。
 実証実験結果から、火山噴火時の状況把握を目的とした調査におけるUAVの適用性が確認された。無人ヘリは安全上の理由等により有人の防災ヘリを飛行できない場合の代替として活用が期待できる。FAZER R G2の標準搭載カメラの映像はweb会議システムを用いての配信も可能である。また、Mavic 3Tのようなズーム機能が優れた機体であれば、山頂からある程度離れた高高度からでも状況把握が可能であると考えられる。サーマルカメラをあわせて使用することで、夜間でも溶岩流や新たに形成した火口のような高温かつ地形変化を伴う現象を確認できると考えられる。