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[SVC32-11] 御嶽山の2024~2025年の地震活動
キーワード:御嶽山、地震活動
1. はじめに
御嶽山では2014年噴火以降、山頂域での地震活動が徐々に減少しながら長期間継続し、2022年2月下旬~3月上旬には地震活動が一時的に活発化した。名古屋大学では2017年11月から山頂域で稠密地震観測を開始し、周辺域や他機関の観測データと組み合わせて地震活動モニタリングを続けてきた。2024年7月には山頂域の地震活動の見落としを減らすためモニタリングシステムの改良を行った。そうした中、2024年12月から地震活動が急増し、2025年1月16日には噴火警戒レベルが2に引き上げられた。本講演では2024年12月以降の活発化を中心に名古屋大学の地震活動モニタリングで得られた知見を紹介する。
2. 手法
名古屋大学では御嶽山山頂域・周辺域の地震波形データを使用し、WINシステムによりイベント検出後、2名の非常勤職員により初動時刻を読み取り震源決定を行っている。従来はリアルタイムで到着する周辺域のデータ処理と山頂域のデータを加えた再処理の2本立てであったが、2024年7月以降は山頂域のデータの到着を待って処理する方式に一本化した。従来方式で自動震源が山頂域に求まった地震のみを再処理の対象にしたのに対し、新方式では全ての地震を処理することで山頂域の地震の検知数が増大した(2024年7~11月で従来方式:83個、新方式:243個)。
低周波地震活動の把握のため、暫定的であるが各地震のピーク周波数を以下の方法で求めた。まず山頂から水平距離5 km以内かつP波の手動検測値が存在する各観測点の上下動波形にMaeda et al. (2020GJI)の手法を適用し、バックグラウンドノイズを上回る振幅のデータサンプル割合を1秒毎に算出した。P波の手動検測値の1秒前以降でこの割合が連続して0.3以上となる時間帯をイベントと見なし、その時間窓で観測点毎のピーク周波数を求め、その中間値をイベントのピーク周波数とした。
3. 結果
御嶽山山頂域の震源は2つの深さにクラスタ状に分布する。Maeda and Watanabe (2023EPS)の地震波速度構造モデルを用いると浅部クラスタは標高1900 m付近、深部クラスタは標高900 m付近に求まり、それぞれ新期御嶽(Y)-古期御嶽(O)境界および古期御嶽-基盤岩(B)境界に近い。2014年噴火以降の地震活動全体で見ると浅部クラスタが多いのに対し、2022年と2024~2025年の活発化時は深部クラスタの活動が中心であった。2025年1月21日に発生した微動と傾斜変動を伴う最大地震(M2.3)を境に震源は浅部クラスタに移動した。2024年の活発化初期には低周波地震も多く見られた。震源決定済みの地震のみに基づく暫定値であるが、山頂域の地震に占める低周波地震(ピーク周波数<5 Hz)の個数割合は2024年7~11月には12%であったのに対し、活発化初期の12月には23%、2025年1月は14%であった。
4. 解釈
Kato et al. (2015EPS)は2014年噴火を挟んで震源が約1 km浅くなったと推定した。当時は山頂観測網が存在せず震源の絶対深度は精度良く求まらないが、噴火後の震源が2017年以降と同じY-O境界付近であると仮定すれば噴火前の震源はO-B境界付近であったと考えられる。低浸透率の古期御嶽による流体上昇の阻害や、O-B境界よりも深い海抜下0.3 kmを上端とする低温マグマだまりの存在が推定されること(Maeda and Watanabe, 2023EPS)を踏まえれば、マグマだまりからの流体フラックスが増加し低浸透率の古期御嶽の下に滞留することで2014年噴火前や2022年、2024~2025年の地震活動活発化が起きたと考えられる。2024年12月には低周波地震が多く発生したことから圧縮性を持つ気相に富んだ流体であったことが考えられる。2014年噴火直前の傾斜変動の力源や2022年、2025年の最大地震の震源はいずれも古期御嶽内に求まっており、流体が古期御嶽を破壊しながら上昇することでこれらのイベントが発生したと考えられる。その後は古期御嶽の浸透率増加により流体が浅部まで上昇してY-O境界付近の地震活動を起こしていると考えられる。
5. 謝辞
本研究では名古屋大学の住田順子氏、日比野恵里氏による手動検測データを用いた。気象庁、長野県、岐阜県、防災科学技術研究所の地震観測データを利用した。「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の補助を受けた。
御嶽山では2014年噴火以降、山頂域での地震活動が徐々に減少しながら長期間継続し、2022年2月下旬~3月上旬には地震活動が一時的に活発化した。名古屋大学では2017年11月から山頂域で稠密地震観測を開始し、周辺域や他機関の観測データと組み合わせて地震活動モニタリングを続けてきた。2024年7月には山頂域の地震活動の見落としを減らすためモニタリングシステムの改良を行った。そうした中、2024年12月から地震活動が急増し、2025年1月16日には噴火警戒レベルが2に引き上げられた。本講演では2024年12月以降の活発化を中心に名古屋大学の地震活動モニタリングで得られた知見を紹介する。
2. 手法
名古屋大学では御嶽山山頂域・周辺域の地震波形データを使用し、WINシステムによりイベント検出後、2名の非常勤職員により初動時刻を読み取り震源決定を行っている。従来はリアルタイムで到着する周辺域のデータ処理と山頂域のデータを加えた再処理の2本立てであったが、2024年7月以降は山頂域のデータの到着を待って処理する方式に一本化した。従来方式で自動震源が山頂域に求まった地震のみを再処理の対象にしたのに対し、新方式では全ての地震を処理することで山頂域の地震の検知数が増大した(2024年7~11月で従来方式:83個、新方式:243個)。
低周波地震活動の把握のため、暫定的であるが各地震のピーク周波数を以下の方法で求めた。まず山頂から水平距離5 km以内かつP波の手動検測値が存在する各観測点の上下動波形にMaeda et al. (2020GJI)の手法を適用し、バックグラウンドノイズを上回る振幅のデータサンプル割合を1秒毎に算出した。P波の手動検測値の1秒前以降でこの割合が連続して0.3以上となる時間帯をイベントと見なし、その時間窓で観測点毎のピーク周波数を求め、その中間値をイベントのピーク周波数とした。
3. 結果
御嶽山山頂域の震源は2つの深さにクラスタ状に分布する。Maeda and Watanabe (2023EPS)の地震波速度構造モデルを用いると浅部クラスタは標高1900 m付近、深部クラスタは標高900 m付近に求まり、それぞれ新期御嶽(Y)-古期御嶽(O)境界および古期御嶽-基盤岩(B)境界に近い。2014年噴火以降の地震活動全体で見ると浅部クラスタが多いのに対し、2022年と2024~2025年の活発化時は深部クラスタの活動が中心であった。2025年1月21日に発生した微動と傾斜変動を伴う最大地震(M2.3)を境に震源は浅部クラスタに移動した。2024年の活発化初期には低周波地震も多く見られた。震源決定済みの地震のみに基づく暫定値であるが、山頂域の地震に占める低周波地震(ピーク周波数<5 Hz)の個数割合は2024年7~11月には12%であったのに対し、活発化初期の12月には23%、2025年1月は14%であった。
4. 解釈
Kato et al. (2015EPS)は2014年噴火を挟んで震源が約1 km浅くなったと推定した。当時は山頂観測網が存在せず震源の絶対深度は精度良く求まらないが、噴火後の震源が2017年以降と同じY-O境界付近であると仮定すれば噴火前の震源はO-B境界付近であったと考えられる。低浸透率の古期御嶽による流体上昇の阻害や、O-B境界よりも深い海抜下0.3 kmを上端とする低温マグマだまりの存在が推定されること(Maeda and Watanabe, 2023EPS)を踏まえれば、マグマだまりからの流体フラックスが増加し低浸透率の古期御嶽の下に滞留することで2014年噴火前や2022年、2024~2025年の地震活動活発化が起きたと考えられる。2024年12月には低周波地震が多く発生したことから圧縮性を持つ気相に富んだ流体であったことが考えられる。2014年噴火直前の傾斜変動の力源や2022年、2025年の最大地震の震源はいずれも古期御嶽内に求まっており、流体が古期御嶽を破壊しながら上昇することでこれらのイベントが発生したと考えられる。その後は古期御嶽の浸透率増加により流体が浅部まで上昇してY-O境界付近の地震活動を起こしていると考えられる。
5. 謝辞
本研究では名古屋大学の住田順子氏、日比野恵里氏による手動検測データを用いた。気象庁、長野県、岐阜県、防災科学技術研究所の地震観測データを利用した。「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第3次)」の補助を受けた。