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[SVC32-15] 霧島火山新燃岳2011年噴火をもたらしたマグマ溜まりの膨張開始の物理プロセス
キーワード:霧島山新燃岳、マグマ溜り、火山性地殻変動、マグマの上昇と貫入
はじめに 霧島山新燃岳では, 2008年8月に1992年以来16年ぶりに噴火した後,2010年の6回の小噴火を経て,2011年に準プリニー式噴火を含む大きな噴火活動が起こった.その後,6年の休止期を経て2017年10月に噴火活動を再開し,2018年3月〜6月に噴火活動があり現在に至る.これらの火山活動は,新燃岳の北西約8km付近の深さ8〜9km程度にあるマグマ溜りからのマグマの供給によって引き起こされているが(例えば,S. Nakao, et. al., 2013),最初にマグマ溜りの膨張が始まったのは2009年12月である.その後,1ヶ月に1.3x106m3程度の割合で膨張を続け,2011年1月の噴火に至った(小沢・宗包,2023).本研究は,その膨張過程における最初の変動に着目し,マグマ溜りへのマグマの貫入過程をモデル化することにより,マグマ溜りの膨張開始過程を考察する.
地殻変動 Fig.1は,上図が2007年7月から2011年2月までに新燃岳直下で発生した火山性地震の日別頻度で,火山活動の指標と考えられる.横軸は年月日,縦軸が日別頻度である.下図は国土地理院のGNSS観測網のうち,霧島火山のマグマ溜りを挟んだ2観測点間の基線長(単位はm)だが,これはマグマ溜りの膨張・縮小の指標と考えられている.これらより,2009年12月からマグマ溜りが膨張し始めると同時に火山活動が活発化し,2011年1月の噴火によって縮小したことがわかる.Fig.2は,Fig.1の丸で囲んだ地殻変動開始の部分を拡大したものであるが,横軸は日付,縦軸は,基線長の変化を小沢・宗包(2023)によって推定されたマグマ溜りの体積の日変化と比較することで換算した体積変化(単位はx103m3)である.これより12月15日を基準に3日間で急激に膨張していることがわかる.
モデル化 本研究では,この現象を説明するマグマ供給系として,以下のモデルを考えた(Fig.3).
・マグマ溜りの圧力をPm,体積をVmとする.マグマ溜りを球と仮定し,周囲の岩石の剛性率をμ,マグマの体積弾性係数をKとすると,PmとVmの変化は次のように表される.
dVm = (πR3(3K+4μ)/3μK)・dPm = A・dPm
・マグマ溜りへは深部マグマ溜り(圧力はPdmで一定)からマグマが供給される.簡単のため円筒状の通路を仮定し,長さをL,半径をaとすると,層流を仮定して体積流速Jは以下になる.
J = (πa4/8η)x(Pdm-Pm)/L = B・(Pdm-Pm)
・通路の体積流速とマグマ溜りの体積変化には以下の関係がある.
J = dVm/dt
これらの方程式を,t=0でVm=0,t→∞でVm=Vmi(一定値)として解くと,Vmは以下になる.
Vm = Vmi(1-e-bt)
ここに
b = B/A
の関係がある.
観測データ(Fig.2)において,12月15日をt=0として最小二乗法でパラメータを求めると,
Vmi=2.5x106 [m3]
b = 0.4[1/day]
となる.観測値(▲)と理論値(●)をFig.4に示すが,よく合っており,理論は観測値をよく説明している.
議論 B=(πa4)/(8ηL),A=(πR3(3K+4μ))/(3μK)であったから,bは次式で表される.
b = (3a4μK )/(8ηLR3(3K+4μ))
ここで,比較的推定しやすい物性値をη≈102,μ≈K≈109とし,b=0.4[1/day]=4.8x10-6[1/s]を代入すると次式が得られる.
LR3/a4 = 1.1x1011
つまり,マグマ溜りの半径Rと深部マグマ溜りからのマグマ供給路の長さLと半径aを結びつける関係式が得られたことになる.これらのパラメータを独立に決めることはできないが,例えばL=1000m,a=1mとすると,R=460mとなり,もっともらしい値の組み合わせになる.同様に,仮にa=10mとすれば,R=10kmとなり,マグマ溜りの半径としては明らかに大きすぎる.したがって,少なくとも本モデルを適用した大きさの見積もりとしては,L=1000m,a=1m,R=460m程度がもっともらしいと推察できる.
謝辞 本研究では国土地理院のGNSS基線長データを使用させていただいた.国土地理院の小沢慎三郎博士および宗包浩志博士には,霧島におけるマグマ溜りの体積変動データをいただくとともに,有効な議論をしていただいた.東京大学地震研究所の青木陽介准教授には,火山帯周辺の物性値に関してアドバイスをいただき,また,モデルに関する議論をしていただいた.ここに感謝申し上げる.
参考文献
・S. Nakao, et. al., Volume change of the magma reservoir relating to the 2011 Kirishima Shinmoe-dake eruption—Charging, discharging and recharging process inferred from GPS measurements, EPS, 65, 505-515, 2013
・小沢慎三郎・宗包浩志,地殻変動データに基づく力源モデルによる火山活動の監視手法の開発に関する研究(第12年次), 国土地理院令和5年度調査研究年報, 142-144, 2023
地殻変動 Fig.1は,上図が2007年7月から2011年2月までに新燃岳直下で発生した火山性地震の日別頻度で,火山活動の指標と考えられる.横軸は年月日,縦軸が日別頻度である.下図は国土地理院のGNSS観測網のうち,霧島火山のマグマ溜りを挟んだ2観測点間の基線長(単位はm)だが,これはマグマ溜りの膨張・縮小の指標と考えられている.これらより,2009年12月からマグマ溜りが膨張し始めると同時に火山活動が活発化し,2011年1月の噴火によって縮小したことがわかる.Fig.2は,Fig.1の丸で囲んだ地殻変動開始の部分を拡大したものであるが,横軸は日付,縦軸は,基線長の変化を小沢・宗包(2023)によって推定されたマグマ溜りの体積の日変化と比較することで換算した体積変化(単位はx103m3)である.これより12月15日を基準に3日間で急激に膨張していることがわかる.
モデル化 本研究では,この現象を説明するマグマ供給系として,以下のモデルを考えた(Fig.3).
・マグマ溜りの圧力をPm,体積をVmとする.マグマ溜りを球と仮定し,周囲の岩石の剛性率をμ,マグマの体積弾性係数をKとすると,PmとVmの変化は次のように表される.
dVm = (πR3(3K+4μ)/3μK)・dPm = A・dPm
・マグマ溜りへは深部マグマ溜り(圧力はPdmで一定)からマグマが供給される.簡単のため円筒状の通路を仮定し,長さをL,半径をaとすると,層流を仮定して体積流速Jは以下になる.
J = (πa4/8η)x(Pdm-Pm)/L = B・(Pdm-Pm)
・通路の体積流速とマグマ溜りの体積変化には以下の関係がある.
J = dVm/dt
これらの方程式を,t=0でVm=0,t→∞でVm=Vmi(一定値)として解くと,Vmは以下になる.
Vm = Vmi(1-e-bt)
ここに
b = B/A
の関係がある.
観測データ(Fig.2)において,12月15日をt=0として最小二乗法でパラメータを求めると,
Vmi=2.5x106 [m3]
b = 0.4[1/day]
となる.観測値(▲)と理論値(●)をFig.4に示すが,よく合っており,理論は観測値をよく説明している.
議論 B=(πa4)/(8ηL),A=(πR3(3K+4μ))/(3μK)であったから,bは次式で表される.
b = (3a4μK )/(8ηLR3(3K+4μ))
ここで,比較的推定しやすい物性値をη≈102,μ≈K≈109とし,b=0.4[1/day]=4.8x10-6[1/s]を代入すると次式が得られる.
LR3/a4 = 1.1x1011
つまり,マグマ溜りの半径Rと深部マグマ溜りからのマグマ供給路の長さLと半径aを結びつける関係式が得られたことになる.これらのパラメータを独立に決めることはできないが,例えばL=1000m,a=1mとすると,R=460mとなり,もっともらしい値の組み合わせになる.同様に,仮にa=10mとすれば,R=10kmとなり,マグマ溜りの半径としては明らかに大きすぎる.したがって,少なくとも本モデルを適用した大きさの見積もりとしては,L=1000m,a=1m,R=460m程度がもっともらしいと推察できる.
謝辞 本研究では国土地理院のGNSS基線長データを使用させていただいた.国土地理院の小沢慎三郎博士および宗包浩志博士には,霧島におけるマグマ溜りの体積変動データをいただくとともに,有効な議論をしていただいた.東京大学地震研究所の青木陽介准教授には,火山帯周辺の物性値に関してアドバイスをいただき,また,モデルに関する議論をしていただいた.ここに感謝申し上げる.
参考文献
・S. Nakao, et. al., Volume change of the magma reservoir relating to the 2011 Kirishima Shinmoe-dake eruption—Charging, discharging and recharging process inferred from GPS measurements, EPS, 65, 505-515, 2013
・小沢慎三郎・宗包浩志,地殻変動データに基づく力源モデルによる火山活動の監視手法の開発に関する研究(第12年次), 国土地理院令和5年度調査研究年報, 142-144, 2023