日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 活動的火山

2025年5月27日(火) 10:45 〜 12:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)、座長:福島 菜奈絵(東京大学先端科学技術研究センター)、田島 靖久(日本工営(株)中央研究所)

11:15 〜 11:30

[SVC32-18] UAV搭載型鉛直センサーアレイシステム開発とこれを用いた硫化水素放出量の定量

*宮木 裕崇1角皆 潤1森田 雅明2風早 竜之介3中川 書子1 (1.名古屋大学環境学研究科、2.東京大学地震研究所、3.産業技術総合研究所)


キーワード:無人航空機、火山ガス、硫化水素、ガスセンサー

火山や地熱地帯の火山ガス放出量は,火山活動の現況や経時変化を把握する上で有用な指標となる.現在では,DOAS法 (Differential Optical Absorption Spectroscopy: 差分吸光分光法) を用いて火山噴煙中の二酸化硫黄 (SO2) カラム積算量からSO2の放出量を推定し,Multi-GAS (Shinohara et al., 2005) などにより求めたガス組成からその他のガス種の放出量を算出する方法が最も一般的である.しかしSO2をほとんど放出しない地熱地帯や,地下に熱水系が発達しているような火山ではSO2がDOAS法の定量下限を下回るため,放出量の推定が困難であった.一方,このような噴気ではSO2の代わりに硫化水素 (H2S) が主要硫黄化合物として含まれている.そこで,H2Sを用いた放出量の定量が試みられてきた (Aiuppa et al., 2013; Tamburello et al., 2019; Miyagi et al., 2024).特に Miyagi et al. (2024) では,H2Sセンサーを鉛直に配列した鉛直センサーアレイシステムを開発して,火山噴煙断面上のH2S濃度分布を測定し,これに観測中の風速 (噴煙の移動速度) を掛け合わせることでH2S放出量を定量化した.しかし,このような方法では,観測可能な火山は地形の制約を受ける.さらに大規模な噴煙ではその断面全体をカバーできないという問題があった.
そこで本研究では,UAV搭載型の鉛直センサーアレイを開発した.本装置ではUAVから吊るした長さ 15-30 m のワイヤー上に5 m 間隔でチューブの吸入口を設置し,それぞれの吸入口に対応したポンプを同一のH2Sセンサーに接続している.このポンプを20 秒ごとに切り替えながら稼働させることでそれぞれの吸入高度におけるH2S濃度を求めることができる.さらにこれを搭載したUAVを噴煙の流下する方向に対して垂直方向に動かすことで,噴煙断面上のH2S濃度分布を観測することができる.つまり,噴煙断面上のH2S量を求めることができるので,これに風速を掛け合わせることでH2S放出量が定量できる.
2024 年 12 月 11 日に霧島硫黄山噴気地帯で計4回の試験飛行を実施した.使用したUAVは東大地震研所有のMatrice 600 pro (DJI) である.それぞれの飛行時間は 10-15 分程度であり,飛行中のUAVの最高飛行高度は 24.1-74.8 m であった.また,各飛行は噴煙の垂直断面を横断する方向に実施し,観測中の最高H2S濃度は 15.7-35.3 ppm であった.観測結果を元に霧島硫黄山からのH2S放出量を算出したので結果を報告する.
本研究は,令和6年度 災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画 (第3次), および次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト(課題Bサブテーマ3) の支援を受けて行われたものである.