日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 活動的火山

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 19:15

[SVC32-P02] 十勝岳におけるドローンとMulti-GASを用いた火山ガス組成観測

*太西 敦哉1田中 良1森田 雅明2 (1.北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター、2.東京大学地震研究所)


キーワード:十勝岳、Multi-GAS

北海道中央部に位置する十勝岳は,20世紀において3度のマグマ噴火が確認されている活火山である.非噴火期の日本の火山の中でも活発な噴気放出が見られ,100-2000t/dayのSO2放出率(Yamaguchi et al., 2023) を維持する.そのため十勝岳におけるガス供給系のメカニズムを解明することは,十勝岳の火山活動メカニズムを把握する上で重要である.本研究では2023年と2024年に十勝岳においてドローンに搭載したマルチガスを用いて火山ガス組成観測を行い,H2O, SO2, CO2, H2Sの組成比を導出した.また火山ガス組成比の時空間変化から十勝岳浅部のガス供給系の考察を行った.
十勝岳の主な噴気放出源である62-2火口,大正火口,振子沢噴気孔群において火山ガス組成がそれぞれ異なっていた.2023年の観測ではモル濃度比でSO2/H2Sは,62-2火口において1.3-2.0, 大正火口で約0.6,振子沢噴気では約5.6-7.5であった.またCO2/SO2は62-2火口で0.5-0.9, 大正火口で1.9-7.9, 振子沢噴気で0.8-1.6,CO2/H2Oは62-2火口で12.7-39.3,大正火口で,9.7-14,振子沢噴気で22-180であった.これは噴気放出源ごとに火山ガスの上昇プロセスが異なっている可能性を示唆する.大正火口において観測された62-2火口と比較して高いCO2/SO2と低いSO2/H2Sは熱水系でのSO2の不均化反応による減少を反映したものと考えられる(Kusakabe et al., 2000). これは十勝岳山頂周辺でのAMT観測で,62-2火口地下から大正火口地下にかけての低比抵抗構造が見られ,熱水系を反映していると解釈されること (Tanaka et al., 2021) と整合的である.一方で振子沢噴気孔群は,他の噴気放出源と比べ,比較的に高いSO2/H2S比や,低いCO2/H2Oが推定されたことから,最も熱水系の影響を受けていないマグマ性のガスであると考えられる. 以上の結果から十勝岳の火山ガス供給系は,マグマ性ガスが振子沢噴気孔群,または62-2火口地下へと上昇し,振子沢噴気孔群では熱水系の影響をほとんど受けていない噴気が放出され,62-2火口と大正火口からは熱水系を経て放出されていると推察される.
また2024年に62-2火口と大正火口で観測したデータと2023年観測のデータを比較すると,両火口の火山ガス組成比においてH2Oの割合が増加しており,マグマからのガスの供給が減少し,熱水系の影響を強く受けた組成に変化した可能性が示唆される.