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[SVC32-P03] 有珠山における3次元速度構造の気象庁地震検測値による震源決定への適用
キーワード:有珠山、震源決定、3次元速度構造
はじめに
有珠火山では1663年以降2000年までに珪長質マグマによる9回の噴火が記録されている. 山頂噴火の場合,全方位に被害を及ぼす恐れのある爆発的マグマ噴火を発生させてきたこと,山麓であれば,居住地域や観光地域で噴火の可能性があることから,噴火前の適切な警報発表とそれに基づく避難が重要となる.噴火警報発表の観点からは,噴火前兆現象はマグマ貫入に伴う顕著な地震活動・地殻変動の力学現象で特徴づけられることから,これらの理解は重要である.また,2010年,2015年,2021年に群発地震が発生し,特に2021年の群発地震は震源の上昇や傾斜変動を伴うマグマ貫入を想起させるものであった.これら噴火未遂の事象も反映させながら噴火警戒レベル判定基準の改定も進められた(不破・宮村, 2024).
同火山では2001年に実施した人工地震探査により浅部の3次元P波速度構造が推定され,2000年噴火前兆地震の震源決定にも活用するなど,マグマ貫入過程の解明に寄与してきた(Onizawa et al., 2007).震源決定における3次元構造の導入は,位置精度向上や地下構造との関係性の面で地下で発生する現象の理解を深めるものであり,気象庁における火山活動監視・評価の観点でも寄与できると考えられる.ここでは,3次元速度構造の気象庁検測値を用いた震源決定への適用について発表する.
3次元速度構造
P波速度については2001年に実施した人工地震探査で得られた初動到達時刻データを用いて推定された.またS波速度については,2000年噴火前兆地震の震源決定の際に,人工地震探査から推定されたP波速度に対しVp=aVs+bの単純な関係性を仮定し,定数a,bをグリッドサーチ的に振った多数の震源計算によりこれらを決定した.採用した値はa=1.45,b=0.9である(Onizawa et al., 2007).なお,このような方法で推定できる速度構造は地表面から高々数kmの上部地殻再上面程度までの浅部領域であるが,定常的に生じている地震やマグマ貫入による地震の震源決定には寄与できる.
気象庁検測値による震源決定
ここでは2002年10月12日から2024年5月14日の期間の気象庁による検測値データに対する震源を対象とする.1次元構造を用いたルーチン解析からは,定常的には有珠山山体下浅部で地震が継続するとともに,昭和新山下においても散発的に地震が発生していることが認識される.このうち前者については1977-82年噴火の際に成長した大有珠潜在ドームの沈降に関連して発生していると考えられる(Aoyama et al., 2009).これに対し2010年,2015年,2021年に発生した群発地震は山体下深さ2 km以深に決定され,定常的に発生している地震とは明確に区別される.マグマ貫入時の警報発表においてこの深さの違いは1つの重要な指標となる(不破・宮村, 2024).
3次元構造に対する震源においてもこれらの基本的な位置関係は変わらない.ただし気象庁のルーチン震源と比較すると,3次元構造に対する震源は南方および浅部へずれるように決定される.これは3次元構造の導入により南方に向かい深くなる基盤構造と基盤以浅の大きなVp/Vsが反映されたためと考えられる.2000年噴火前兆地震は前期の先新第三系基盤内のマグマ上昇に起因し発生したと思われるものと後期の南方への拡大で特徴づけられる.2010年,2015年,2021年に発生した群発地震の震源をこの2000年噴火前兆地震の震源分布と重ね合わせると前期の先新第三系基盤内の領域とほぼ一致する.発生位置の観点からも,これらの群発地震がマグマ貫入に伴い生じたものとする考えを支持する.
有珠火山では1663年以降2000年までに珪長質マグマによる9回の噴火が記録されている. 山頂噴火の場合,全方位に被害を及ぼす恐れのある爆発的マグマ噴火を発生させてきたこと,山麓であれば,居住地域や観光地域で噴火の可能性があることから,噴火前の適切な警報発表とそれに基づく避難が重要となる.噴火警報発表の観点からは,噴火前兆現象はマグマ貫入に伴う顕著な地震活動・地殻変動の力学現象で特徴づけられることから,これらの理解は重要である.また,2010年,2015年,2021年に群発地震が発生し,特に2021年の群発地震は震源の上昇や傾斜変動を伴うマグマ貫入を想起させるものであった.これら噴火未遂の事象も反映させながら噴火警戒レベル判定基準の改定も進められた(不破・宮村, 2024).
同火山では2001年に実施した人工地震探査により浅部の3次元P波速度構造が推定され,2000年噴火前兆地震の震源決定にも活用するなど,マグマ貫入過程の解明に寄与してきた(Onizawa et al., 2007).震源決定における3次元構造の導入は,位置精度向上や地下構造との関係性の面で地下で発生する現象の理解を深めるものであり,気象庁における火山活動監視・評価の観点でも寄与できると考えられる.ここでは,3次元速度構造の気象庁検測値を用いた震源決定への適用について発表する.
3次元速度構造
P波速度については2001年に実施した人工地震探査で得られた初動到達時刻データを用いて推定された.またS波速度については,2000年噴火前兆地震の震源決定の際に,人工地震探査から推定されたP波速度に対しVp=aVs+bの単純な関係性を仮定し,定数a,bをグリッドサーチ的に振った多数の震源計算によりこれらを決定した.採用した値はa=1.45,b=0.9である(Onizawa et al., 2007).なお,このような方法で推定できる速度構造は地表面から高々数kmの上部地殻再上面程度までの浅部領域であるが,定常的に生じている地震やマグマ貫入による地震の震源決定には寄与できる.
気象庁検測値による震源決定
ここでは2002年10月12日から2024年5月14日の期間の気象庁による検測値データに対する震源を対象とする.1次元構造を用いたルーチン解析からは,定常的には有珠山山体下浅部で地震が継続するとともに,昭和新山下においても散発的に地震が発生していることが認識される.このうち前者については1977-82年噴火の際に成長した大有珠潜在ドームの沈降に関連して発生していると考えられる(Aoyama et al., 2009).これに対し2010年,2015年,2021年に発生した群発地震は山体下深さ2 km以深に決定され,定常的に発生している地震とは明確に区別される.マグマ貫入時の警報発表においてこの深さの違いは1つの重要な指標となる(不破・宮村, 2024).
3次元構造に対する震源においてもこれらの基本的な位置関係は変わらない.ただし気象庁のルーチン震源と比較すると,3次元構造に対する震源は南方および浅部へずれるように決定される.これは3次元構造の導入により南方に向かい深くなる基盤構造と基盤以浅の大きなVp/Vsが反映されたためと考えられる.2000年噴火前兆地震は前期の先新第三系基盤内のマグマ上昇に起因し発生したと思われるものと後期の南方への拡大で特徴づけられる.2010年,2015年,2021年に発生した群発地震の震源をこの2000年噴火前兆地震の震源分布と重ね合わせると前期の先新第三系基盤内の領域とほぼ一致する.発生位置の観点からも,これらの群発地震がマグマ貫入に伴い生じたものとする考えを支持する.