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[SVC32-P04] 水準測量による有珠山周辺の地盤変動観測

キーワード:有珠山、水準測量、噴火準備過程
有珠山は北海道南部の洞爺カルデラ南縁に位置する活火山である。有珠山での噴火は30-50年の周期で発生しており、1900年以降では4度の噴火を経験している。有珠山の地下には約4-6kmと8-10kmの深さにそれぞれマグマ溜まりが存在すると推察されているが(例えば、Tomiya et al., 2010)、物理観測からその位置や大きさを推定するのは難しいとされてきた。
水準測量は、測量路線に沿ってある水準点間の比高を計測する高精度な測量手法であり、繰り返し測量を行うことで、その期間における水準点ごとの上下変動を求めることができる。測量に時間や労力がかかるため、GNSSやInSARといった衛星測地観測に比べ時間分解能は悪いが、高い精度で上下変動を計測することが可能である(青木,2016)。
有珠山周辺には、洞爺湖町の一等水準点交6から西麓を通過する路線(西麓路線)、南麓を噴火湾沿いに通過する路線(噴火湾路線)、およびこの2つの路線を繋ぎ有珠山を囲むように北西麓から南東麓に壮瞥町を経由して延びる路線がある。これらの路線では、国土地理院により繰り返し水準測量が行われており、噴火湾路線での最初の測量は1905年、西麓路線では1919年に行われた。それ以降、両路線においてある期間ごとに測量が行われている。また1977-1978年噴火や2000年噴火のように活動が活発な時期には有珠山を囲むように繋いだ路線(1周路線)において集中的に短い期間での測量が行われている。2000年噴火の前に行われた測量では、噴火の準備過程を示唆するような深部マグマ溜まりの変動が捉えられた(村上,2003)。
北海道大学では、2006年に1周路線および洞爺湖西岸の一等水準点6601まで測量を行っている。本研究では2023年から2024年にかけて、次期噴火に備えて現時点での水準点間の比高を計測すること、および深部マグマ溜まりの長期的な変動を捉えることを目的に、2006年の路線に加え、噴火湾路線の豊浦町にある一等水準点7188まで測量を行った。本発表では、最新の測量結果だけでなく過去の測量結果も踏まえ、噴火活動期および静穏期における有珠山周辺での上下変動の空間パターンの把握を試みた。
使用するデータは、過去の国土地理院による測量結果および北海道大学による測量結果である。国土地理院による測量結果は各点での上下変動量のみ公開されており、そのデータを用いて交6を基準とした変動量を計算した。北海道大学による測量結果から求める上下変動は、それぞれの測量での交6を基準とした各点との比高を求め、それらの差から変動量を計算した。これに加え、測地成果2011(国土地理院,2011)による標高から水準点交6を基準とした比高を算出し、測量結果との差を求めることでも変動量を求めた。
まず1977-1978年および2000年噴火における活動期では、観測された上下変動に似た傾向が見られた。噴火活動期では、北西麓および北東麓では10cmほどの顕著な隆起が、北麓では極めて大規模な数10cmの沈降が観測されたが、西麓、東麓および南麓では北麓付近ほど大きな変動は観測されなかった。また、噴火活動が落ち着いてからは山麓の水準点で一様に沈降が観測された。
次に、静穏期では1年に数mm程度の変動しか観測されなかった。山麓では全体的に沈降が観測されたが、2006年から2011年には北東麓から東麓、南麓にかけて極めて小さな隆起のシグナルが捉えられた。西麓では、2000年噴火に伴う隆起域に近い水準点では沈降が観測され、隆起域の北西および南西に少し離れた水準点では隆起が観測されるといった変動のパターンが捉えられた。北西麓では、2000年噴火の後に沈降量が顕著に増加しており、これは定常的な沈降に加えて2000年隆起域の沈降が影響していると考えられる。南麓の噴火湾路線では、1985-1986年の測量と1991-1992年の測量の比高変化において、交6を基準に東では沈降、西では北西約5kmの一等水準点7189付近まで隆起を示したのち、それ以降、西に向かうほど隆起量が減少するようなパターンが捉えられており、この変動が2000年噴火の前の深部マグマ溜まりでのマグマの蓄積を示唆すると考えられる。2004年の測量と2009年の測量の比高変化においては、同様に東では沈降、西では水準点7189付近まで隆起が観測されたが、それより西側での隆起量はほとんど変化がなかった。原因として、この期間の直前および期間中に発生した釧路沖地震や十勝沖地震による余効変動の影響を受けている可能性がある。そこで、同時期におけるGEONET点の時系列より、Munekane(2021)の手法を用いて2次多項式による近似を行い、広域での変動場による影響を除去した。この際、火山性地殻変動を考慮し、有珠山近傍のGEONET点、虻田・壮瞥A・伊達のデータは用いていない。この補正を適用すると、西側の隆起量は減少したが、1985-1986年から1991-1992年の比高変化に比べJ6を基準に隆起を示す範囲が広くなった。
今後、噴火湾路線において観測されたこれらの変動にモデルのフィッティングを行い、深部マグマ溜まりの位置や形状の推定を進めていく。
水準測量は、測量路線に沿ってある水準点間の比高を計測する高精度な測量手法であり、繰り返し測量を行うことで、その期間における水準点ごとの上下変動を求めることができる。測量に時間や労力がかかるため、GNSSやInSARといった衛星測地観測に比べ時間分解能は悪いが、高い精度で上下変動を計測することが可能である(青木,2016)。
有珠山周辺には、洞爺湖町の一等水準点交6から西麓を通過する路線(西麓路線)、南麓を噴火湾沿いに通過する路線(噴火湾路線)、およびこの2つの路線を繋ぎ有珠山を囲むように北西麓から南東麓に壮瞥町を経由して延びる路線がある。これらの路線では、国土地理院により繰り返し水準測量が行われており、噴火湾路線での最初の測量は1905年、西麓路線では1919年に行われた。それ以降、両路線においてある期間ごとに測量が行われている。また1977-1978年噴火や2000年噴火のように活動が活発な時期には有珠山を囲むように繋いだ路線(1周路線)において集中的に短い期間での測量が行われている。2000年噴火の前に行われた測量では、噴火の準備過程を示唆するような深部マグマ溜まりの変動が捉えられた(村上,2003)。
北海道大学では、2006年に1周路線および洞爺湖西岸の一等水準点6601まで測量を行っている。本研究では2023年から2024年にかけて、次期噴火に備えて現時点での水準点間の比高を計測すること、および深部マグマ溜まりの長期的な変動を捉えることを目的に、2006年の路線に加え、噴火湾路線の豊浦町にある一等水準点7188まで測量を行った。本発表では、最新の測量結果だけでなく過去の測量結果も踏まえ、噴火活動期および静穏期における有珠山周辺での上下変動の空間パターンの把握を試みた。
使用するデータは、過去の国土地理院による測量結果および北海道大学による測量結果である。国土地理院による測量結果は各点での上下変動量のみ公開されており、そのデータを用いて交6を基準とした変動量を計算した。北海道大学による測量結果から求める上下変動は、それぞれの測量での交6を基準とした各点との比高を求め、それらの差から変動量を計算した。これに加え、測地成果2011(国土地理院,2011)による標高から水準点交6を基準とした比高を算出し、測量結果との差を求めることでも変動量を求めた。
まず1977-1978年および2000年噴火における活動期では、観測された上下変動に似た傾向が見られた。噴火活動期では、北西麓および北東麓では10cmほどの顕著な隆起が、北麓では極めて大規模な数10cmの沈降が観測されたが、西麓、東麓および南麓では北麓付近ほど大きな変動は観測されなかった。また、噴火活動が落ち着いてからは山麓の水準点で一様に沈降が観測された。
次に、静穏期では1年に数mm程度の変動しか観測されなかった。山麓では全体的に沈降が観測されたが、2006年から2011年には北東麓から東麓、南麓にかけて極めて小さな隆起のシグナルが捉えられた。西麓では、2000年噴火に伴う隆起域に近い水準点では沈降が観測され、隆起域の北西および南西に少し離れた水準点では隆起が観測されるといった変動のパターンが捉えられた。北西麓では、2000年噴火の後に沈降量が顕著に増加しており、これは定常的な沈降に加えて2000年隆起域の沈降が影響していると考えられる。南麓の噴火湾路線では、1985-1986年の測量と1991-1992年の測量の比高変化において、交6を基準に東では沈降、西では北西約5kmの一等水準点7189付近まで隆起を示したのち、それ以降、西に向かうほど隆起量が減少するようなパターンが捉えられており、この変動が2000年噴火の前の深部マグマ溜まりでのマグマの蓄積を示唆すると考えられる。2004年の測量と2009年の測量の比高変化においては、同様に東では沈降、西では水準点7189付近まで隆起が観測されたが、それより西側での隆起量はほとんど変化がなかった。原因として、この期間の直前および期間中に発生した釧路沖地震や十勝沖地震による余効変動の影響を受けている可能性がある。そこで、同時期におけるGEONET点の時系列より、Munekane(2021)の手法を用いて2次多項式による近似を行い、広域での変動場による影響を除去した。この際、火山性地殻変動を考慮し、有珠山近傍のGEONET点、虻田・壮瞥A・伊達のデータは用いていない。この補正を適用すると、西側の隆起量は減少したが、1985-1986年から1991-1992年の比高変化に比べJ6を基準に隆起を示す範囲が広くなった。
今後、噴火湾路線において観測されたこれらの変動にモデルのフィッティングを行い、深部マグマ溜まりの位置や形状の推定を進めていく。