日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 活動的火山

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 19:15

[SVC32-P16] 立山火山第2期・第3期活動における噴出物層序の再検討とマグマプロセス

*小久保 太凱1鈴木 毅彦1 (1.東京都立大学都市環境学部)


キーワード:立山火山、立山Dテフラ、称名滝火砕流堆積物

特定の火山の噴火イベントにおける噴出物層序や噴出物をもたらすまでのマグマプロセスについて検討することは,マグマの組成変化と噴火様式の変化の関連性を明らかにすることに繋がる.この関連性は爆発的な噴火を引き起こすマグマだまりにおける珪長質マグマの発生過程を検討する上でも重要な情報を与えるものである.飛騨山脈中心部,富山県・長野県の県境部に位置する立山火山は100 kaに第2期活動と呼ばれる爆発的な噴火活動が生じ,給源と推定されている現在の立山カルデラ西側に近傍相である火砕流堆積物,東側広範囲に遠方相である降下軽石堆積物をもたらした(原山ほか 2000, 町田・新井 2003).近傍相が2層に細分され,上位がよりマフィックな噴出物で構成されていること(Nogami et al. 2012)や,火砕流噴出時にマグマ混合が生じていたこと(濁川 2003)が明らかとなっているが,具体的なマグマ混合の開始時期や遠方相噴出時にも同様のマグマ混合が生じていたかなど,その詳細は明らかになっていない.また第2期活動噴出物についても以下の問題がある.すなわち近傍相火砕流の下部に位置する芦峅寺火砕流堆積物(Apfl)は,第2期活動時噴出物である立山Dテフラ(Tt-D)と対比されているが,上部に位置する称名滝火砕流堆積物(Spfl)は町田・新井(1979)などによりTt-Dと対比されているものの,野上・石崎 (2012)より65~70 kaの第3期活動時に噴出した降下軽石堆積物である立山Eテフラ(Tt-E)に対比した研究もあり,未だ厳密な層序が確定されていない.
本研究では,近傍火砕流堆積物上部であるSpflの対比をもとに溶岩流を除く第2期・第3期活動中での噴出物層位を再検討する.さらに層準ごとの本質物中斑晶鉱物の化学組成に基づきマグマ混合が生じた期間や,遠方相にも同様のマグマプロセスが確認できるかについて明らかにすることを目的とする.分析試料として用いるTt-DおよびTt-Eの本質物は長野県大町市北部旧大町スキー場付近,ApflおよびSpflの本質物は富山県立山町芦峅寺の常願寺川右岸,雷鳥平にて採取を行った.遠方相露頭では下位からユニットごとにTt-Dを6試料,Tt-Eを1試料採取し,近傍相露頭ではApflは明瞭な層理面がみられないことから最上部を含む4層準にて合計4試料,Spflは層相の異なる複数のユニットが確認できることから,下位より1層目のユニットより1試料,2層目のユニットより2試料採取を行った.対比には鉱物組成(個数比)および直方輝石・普通角閃石の屈折率を用い,またマグマ混合について評価する上では斜長石・直方輝石のコア・リムの化学組成変化を用いた.
Spflの鉱物組成は軽鉱物が70%を占め,その特徴は下位のApflおよび遠方相のTt-Dと類似した.また重鉱物は直方輝石,斜方輝石,普通角閃石がみられ,黒雲母はほぼ含まれない.このような鉱物種上の特徴はTt-Eと類似し,結果としてSpflはTt-DとTt-Eどちらの鉱物組成上の特徴も持つため,鉱物組成単一での判断は困難であった.屈折率に関しては,直方輝石の屈折率はTt-Eを除き1.710~1.720の領域に概ね収まるが,Tt-Eのみより1.723と高い上限値を示し,普通角閃石の場合他噴出物が1.681~1.692の領域値に収まる中でTt-Eのみ1.678とより低い下限値を示した.これらの結果から,Tt-DおよびApfl,SpflはTt-Eと異なり,どちらの鉱物においても互いに類似した領域値を示し,Spflは第2期噴出物であるTt-Dと対比することが妥当であると結論づけられる.
本質物中直方輝石・普通角閃石のコア・リム化学組成は,逆累帯の組成を示すものが第2期噴出物では遠方相Tt-D,近傍相Apfl,Spflのいずれに,第3期噴出物ではTt-Eの各層準いずれかの鉱物において確認された.このことから濁川(2003)において確認されたマグマ混合は第2期活動開始時には既に発生しており,第3期活動においても継続していたことが推定される.また,逆累帯を示す鉱物に関して,コアからリムにかけての組成変化量の大きさに注目すると,斜長石および直方輝石に関して, Tt-Dの下端および上端に近いユニットにて特に大きなAn#およびMg#の逆累帯を示す鉱物が確認された.近傍相においてはApflの下端および上端のユニット,斜長石についてはSpfl最下位のユニットにて特に大きなAn#およびMg#の逆累帯を示す鉱物が確認された.これらの結果から,マグマ温度に大きな変化をもたらすような深部からのマグマの供給が第2期活動開始時(Apfl噴出時),Spfl噴出時の2回もたらされていたことが示唆される.