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[SVC32-P20] 火山ガス放出率推定の高精度化に向けたUAVによる鉛直風向風速分布の測定
キーワード:無人航空機、マルチコプター、ホバリング、機体姿勢
1.背景及び研究目的
火山活動に伴って大気中に放出される火山ガスの代表的なものとして、水蒸気(H2O)や二酸化炭素(CO2)の他、二酸化硫黄(SO2)や硫化水素(H2S)などがあり、放出されるガスの種類や量は、火山ごとに、また活動状況によって大きく異なっている。
火山ガスの放出量の計測が実用化されている項目としては、DOAS法とよばれる小型紫外線スペクトロメータ[祐安1] を用いた二酸化硫黄放出量が代表的である。この方法では、太陽散乱紫外光を光源として、二酸化硫黄により特定波長域の光が吸収される性質を利用し、小型紫外線スペクトロメータ[祐安2] を用いて定点観測法(パンニング法)もしくはトラバース法により、ある面上の二酸化硫黄全量を算出後、一定時間内に計測した面を通過する大気の幅、すなわち風速を乗じて、放出量を求めるものである。
この方法において、計測精度を決定する大きな要因として、風速の計測が挙げられる。安部ほか(2025,印刷中)では、2017年以降、箱根山大涌谷北東側県道において定期的に実施したトラバース方式によるDOASシステムを用いた二酸化硫黄放出量の計測結果について報告されている。この観測おいては、放出量算定に気象庁メソ解析データ(気象庁予報部, 2009)から推定した大涌谷の風向風速や、箱根ロープウェイ大涌谷駅舎における風向風速実測データが用いられている。この観測においては、トラバースを行った経路は、噴気孔からおおむね水平距離で0.7~2.3km、高度差で200m程度離れており、噴気孔からトラバース経路までの複雑な地形によって、地点や高度により風向や風速が大きく異なることがあり得る。また、メソ解析の格子間隔は5kmであるため、メソ解析データによって大涌谷の複雑な地形の影響を考慮することはできず、また、実測データからは観測地点での局所的な値しか得られない。よって、現状では風向風速の複雑な空間変化を把握することができておらず、それにより火山ガス放出率の推定に大きな誤差が含まれる可能性がある。火山ガス放出率の推定精度向上のためには、DOASによるトラバース観測の経路近傍での風向風速の詳細な空間分布を把握することが重要である。
そこで本研究においては、火山周辺地域において、任意の地点・標高・時間における風向・風速を、簡易かつ安価で計測することで、火山ガス放出量の観測精度を向上させることを目的として、UAVを用いた鉛直多高度における風向風速の測定と、火山ガス放出量観測手法に関する検討を行った。
2.計測原理及び計測方法
UAVを用いた風向風速の計測は、マルチコプターが進行方向に傾斜して飛行する特性を利用し、ホバリング中の機体姿勢から風向・風速を計測する方法を用いた。本研究では、UAVシステム自体に計測と記録が組み込まれている機体姿勢データを用いることで、計測機器を追加する必要がなくなり、結果として、ペイロードの小さい小型のUAVにおいても計測が可能となった。
本研究では、機体重量が1kg未満の小型UAVであるdji社製mavic2 enterprese dual及びmavic3 Thermalを用いて、飛行記録データに保存された機体姿勢データから風向風速の計測を行った。
3.結果
機体姿勢と風速との関係式を得るため、下記の方法による飛行試験を行った。
無風環境下において飛行するUAVは、機体が静止状態にあるとみなした場合、飛行方向は風向と、飛行速度は風速と等しいとの仮定が成り立つ。無風環境での試験を行うため、屋内において、飛行速度と機体姿勢との関係についての試験を行った。なお、屋内においては、GNSS電波を取得することが出来ないことから、飛行速度は、一定距離(本試験においては50m)を飛行するのに要した時間を計測し、飛行速度を算出した。また、計測区間の前後15mを助走区間及び停止区間を設け、計測区間では飛行速度を一定にした。この試験により得られた、機体の傾斜度と飛行速度の関係もは、ほぼ一次回帰直線上に分布し、その関係は次式で示された。
Y = 0.563 X ( R2 =0.963)
上記により得られた風速と機体姿勢との関係式を用いて、UAVによる風速の計測を行った。計測は2025年2月12日14~15時に実施し、地表から5,15,25,35,45,55mの6高度において各5分間ホバリングして風向及び風速を計測し、隣接する2高度ごとに平均し、10,20,30,40,50mの5高度における10分間平均の風向・風速を算出した。
火山活動に伴って大気中に放出される火山ガスの代表的なものとして、水蒸気(H2O)や二酸化炭素(CO2)の他、二酸化硫黄(SO2)や硫化水素(H2S)などがあり、放出されるガスの種類や量は、火山ごとに、また活動状況によって大きく異なっている。
火山ガスの放出量の計測が実用化されている項目としては、DOAS法とよばれる小型紫外線スペクトロメータ[祐安1] を用いた二酸化硫黄放出量が代表的である。この方法では、太陽散乱紫外光を光源として、二酸化硫黄により特定波長域の光が吸収される性質を利用し、小型紫外線スペクトロメータ[祐安2] を用いて定点観測法(パンニング法)もしくはトラバース法により、ある面上の二酸化硫黄全量を算出後、一定時間内に計測した面を通過する大気の幅、すなわち風速を乗じて、放出量を求めるものである。
この方法において、計測精度を決定する大きな要因として、風速の計測が挙げられる。安部ほか(2025,印刷中)では、2017年以降、箱根山大涌谷北東側県道において定期的に実施したトラバース方式によるDOASシステムを用いた二酸化硫黄放出量の計測結果について報告されている。この観測おいては、放出量算定に気象庁メソ解析データ(気象庁予報部, 2009)から推定した大涌谷の風向風速や、箱根ロープウェイ大涌谷駅舎における風向風速実測データが用いられている。この観測においては、トラバースを行った経路は、噴気孔からおおむね水平距離で0.7~2.3km、高度差で200m程度離れており、噴気孔からトラバース経路までの複雑な地形によって、地点や高度により風向や風速が大きく異なることがあり得る。また、メソ解析の格子間隔は5kmであるため、メソ解析データによって大涌谷の複雑な地形の影響を考慮することはできず、また、実測データからは観測地点での局所的な値しか得られない。よって、現状では風向風速の複雑な空間変化を把握することができておらず、それにより火山ガス放出率の推定に大きな誤差が含まれる可能性がある。火山ガス放出率の推定精度向上のためには、DOASによるトラバース観測の経路近傍での風向風速の詳細な空間分布を把握することが重要である。
そこで本研究においては、火山周辺地域において、任意の地点・標高・時間における風向・風速を、簡易かつ安価で計測することで、火山ガス放出量の観測精度を向上させることを目的として、UAVを用いた鉛直多高度における風向風速の測定と、火山ガス放出量観測手法に関する検討を行った。
2.計測原理及び計測方法
UAVを用いた風向風速の計測は、マルチコプターが進行方向に傾斜して飛行する特性を利用し、ホバリング中の機体姿勢から風向・風速を計測する方法を用いた。本研究では、UAVシステム自体に計測と記録が組み込まれている機体姿勢データを用いることで、計測機器を追加する必要がなくなり、結果として、ペイロードの小さい小型のUAVにおいても計測が可能となった。
本研究では、機体重量が1kg未満の小型UAVであるdji社製mavic2 enterprese dual及びmavic3 Thermalを用いて、飛行記録データに保存された機体姿勢データから風向風速の計測を行った。
3.結果
機体姿勢と風速との関係式を得るため、下記の方法による飛行試験を行った。
無風環境下において飛行するUAVは、機体が静止状態にあるとみなした場合、飛行方向は風向と、飛行速度は風速と等しいとの仮定が成り立つ。無風環境での試験を行うため、屋内において、飛行速度と機体姿勢との関係についての試験を行った。なお、屋内においては、GNSS電波を取得することが出来ないことから、飛行速度は、一定距離(本試験においては50m)を飛行するのに要した時間を計測し、飛行速度を算出した。また、計測区間の前後15mを助走区間及び停止区間を設け、計測区間では飛行速度を一定にした。この試験により得られた、機体の傾斜度と飛行速度の関係もは、ほぼ一次回帰直線上に分布し、その関係は次式で示された。
Y = 0.563 X ( R2 =0.963)
上記により得られた風速と機体姿勢との関係式を用いて、UAVによる風速の計測を行った。計測は2025年2月12日14~15時に実施し、地表から5,15,25,35,45,55mの6高度において各5分間ホバリングして風向及び風速を計測し、隣接する2高度ごとに平均し、10,20,30,40,50mの5高度における10分間平均の風向・風速を算出した。