日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC32] 活動的火山

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、松島 健(九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター)

17:15 〜 19:15

[SVC32-P32] 伊豆諸島火山における光海底ケーブルを用いたDASによる活動の観測・監視:予備観測報告

*中野 優1中島 倫也1馬場 慧1荒木 英一郎1小野 重明1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:分布型音響センシング、伊豆大島、三宅島、火山活動

はじめに:
伊豆大島及び三宅島は周期的に噴火する活発な火山として知られ、伊豆大島は1986年の噴火から約40年が、三宅島は2000年に始まった噴火から約20年が経過している。火山性地震のモニタリングは火山の監視に重要であるが、伊豆大島や三宅島のような離島火山においては火山体の約7割が海底下に沈んでいるため、海面下での観測技術の開発やそのデータの充実化が課題となっている。
本研究では伊豆諸島海域に敷設された東京都の光海底ケーブルを用いた分布型音響センシング(DAS)観測によって、伊豆諸島火山および周辺海域での地殻活動監視強化を目指す。光海底ケーブルによる地震観測において、ケーブルの敷設状況など不明な点が多い事から、DASによる地震監視能力を評価するために本格的な観測の準備として予備的な観測を行った。本発表では2024年1月から3月に伊豆大島及び三宅島で実施した性能試験のための観測について報告する。

観測:
本観測では伊豆大島及び三宅島のNTT東日本局舎にそれぞれDAS測器を設置して観測を行った。DAS観測にはAP Sensing社製N5226B R120を使用した。今回は性能試験のため、2024年1月~3月にそれぞれ約2週間の短期的な観測を行った。ただし、三宅島の観測では測器の不調により約4日間しかデータが取得できなかった。また、どちらの観測においても局舎内で時刻校正のためのGNSSシグナルが十分な強度で取得できなかった。
まず、得られたデータから背景ノイズレベルを評価した。海底地震観測における背景ノイズレベルは一般に、水深が深くなるほど低下する。伊豆諸島DAS観測においても同様の傾向がみられ、特に100m以深では背景ノイズは大きく低下した。光海底ケーブルルートの殆どの区間は水深200mより深く、ケーブルの大部分で地震観測に十分な低いノイズレベルとなっている。
次に、伊豆大島の観測で得られたデータを用いて地震の検知を行った。本研究ではBaba et al. (2024AGU) の手法を用い、地震の検知及びP, S初動読み取りにはPhaseNet (Zhu and Beroza, 2019GJI) を用いた。得られたDAS記録は数千のチャンネルがあるが、処理負荷を軽減するために約1kmごとのチャンネルから波形を抽出し、初動の読み取りを行った。読み取りは2分のタイムウインドウに対し、半分を重複しながら時刻をずらして行った。読み取った初動時刻のリストを簡易的なアルゴリズムでグループ化し、Hirata and Matsuura (1987, hypomh) の手法によって震源を決定した。今回、PhaseNetのモデルはパッケージに付属の陸上観測で訓練したモデルを用いた。光海底ケーブルによるDAS記録は陸上の記録と性質が異なるため、初動の検知や読み取りの精度には低下が見られたが、簡易的な震源決定には十分であった。
本手法によって、2週間の観測期間中に600以上の震源が決定され、多くは伊豆大島周辺の海域で起きていた。ただし、初動読み取りのウインドウが半分重複するため、検知したイベントにも重複が多数ある。約110のイベントについては気象庁一元化カタログに対応する地震があった。それ以外の地震はDAS観測によって新たに検知可能となったものと考えられる。ただし、これらの中には震源決定精度が十分でないために気象庁一元化カタログと大きくずれたものや、人為的な起源のシグナルも含まれると思われる。

まとめと今後の課題:
今回の観測によって、伊豆諸島の光海底ケーブルを用いたDAS観測によって海底下で起きた地震の検知能力が向上し、離島火山の監視に活用可能であることが分かった。
観測においてはGNSS電波が受信できなかったために時刻精度が確保できない事が課題となった。地震の検知においては、初動読み取りと震源決定の精度が課題となった。今後はこれらの課題を解決し、試験的な観測をさらに行いつつリアルタイムでの地震監視能力向上のためのシステム構築を行っていく。

謝辞:
本研究では東京都の光海底ケーブルを使用させていただきました。東京都総務局及びデジタルサービス局、NTT東日本の皆様には、ケーブル利用の許諾と観測において多大なるご協力をいただきました。本研究はJSPS科研費 JP22H00251およびJP21H05205の助成を受けたものです。記して感謝いたします。