日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山噴火のメカニズム

2025年5月26日(月) 09:00 〜 10:30 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:無盡 真弓(北海道大学)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、丸石 崇史(防災科学技術研究所)、村松 弾(東京大学地震研究所)、座長:無盡 真弓(東北大学)、村松 弾(東京大学地震研究所)、川口 允孝(東京大学地震研究所)、松本 恵子(産業技術総合研究所地質調査総合センター)

09:30 〜 09:45

[SVC33-03] 浅間火山天明噴火における噴泉崩壊型火砕流発生時の浅部火道プロセス

*村木 琢磨1中村 美千彦1無盡 真弓1安井 真也2 (1.東北大学理学研究科地学専攻、2.日本大学文理学部地球科学科)

キーワード:浅間火山、溶結、火砕流、噴泉崩壊、爆発的–非爆発的噴火の遷移、ナノライト

火山噴火における多様な噴火様式の一因として、マグマの破砕後に直接噴火せず、Fall Backや火道内部での溶結などを経験する浅部火道内プロセスがあげられる。これらの過程によって、爆発的噴火においてみられる火砕成溶岩や火砕性黒曜石、緻密な本質岩片などが生成されると考えられている。浅間火山の1783年大規模噴火(天明噴火)では、これらの過程が噴火クライマックス期の噴泉崩壊型火砕流(吾妻火砕流)の前後に生じ、噴火の爆発性を支配していた可能性がある。本研究では、吾妻火砕流堆積物の上部からサンプルを採取し、光学顕微鏡、電解放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)およびX線CTによって分析した。吾妻火砕流堆積物は、表面を溶結した火山灰によって覆われた、弱く発泡した球状本質ブロック(数 cmから20 cm程度のジャガイモ状本質岩片)と、この本質ブロックが集塊岩様に凝集した岩塊(最大1 mにも達する)によって特徴づけられる。火山灰粒子と本質ブロックは溶結および石基の結晶化に関して多様な組織を示した。本研究では、これらの組織を既存の溶結実験と石基の結晶化実験の産物の組織と比較することで、破砕後の浅部火道内プロセスの圧力(P)-温度(T)-酸素フガシティ(fO2)-時間(t)条件を明らかにした。一般的に、表面張力による粒子の緩和やガラスの溶結は石基ガラスの結晶化に比べ1–2桁程度急速に進行することが知られ、本質ブロックの形成過程は石基の結晶化と、最終的な溶結プロセスに分けられる。本質ブロック表面の火山灰コーティングは破片状に角張ったガラス質の粒子からなる場合と、球形で多様な結晶量の粒子からなる場合があった。また、本質ブロック内部は複数個の溶結した岩片から構成される場合があり、一般的に石基は表面の火山灰よりも結晶質であった。火山灰および本質ブロック石基中のナノライトに占める斜長石と磁鉄鉱の量比は、一部の火山灰・本質ブロックが酸化的環境で結晶化したことを示した。各火山灰粒子・本質ブロックは、大気中での急冷ないし破砕深度付近での再加熱の多様なP-T-fO2-tパスを経たのちに溶結したと考えられ、これは噴火・火道へのFall Back・溶結・再破砕を繰り返す過程と対応すると解釈される。また、実験産物との比較によって噴火現象の時間経過を制約することが可能である;すなわち、浅部火道における滞留時間に相当する結晶化に要する最大の時間は、吾妻火砕流が生じたサブプリニー式噴火からクライマックス期のプリニー式噴火の時間間隔に相当し、溶結に要するタイムスケールはサブプリニー式噴火の時間間隔に相当する。これらの時間的制約に基づき、噴火クライマックス期の前に溶結した火山灰や本質ブロックが火道内部を埋めることによって、噴泉崩壊型火砕流が間歇的に生じたと提案する。