日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山噴火のメカニズム

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:無盡 真弓(北海道大学)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、丸石 崇史(防災科学技術研究所)、村松 弾(東京大学地震研究所)

17:15 〜 19:15

[SVC33-P01] 霧島火山群韓国岳のプリニー式噴火の推移とマグマ蓄積場の状態

*鈴木 慈苗1前野 深1川口 允孝1 (1.東京大学)


キーワード:霧島、プリニー式噴火、マグマ蓄積場、噴火の推移

プリニー式噴火とは最も爆発的な噴火様式の一つであり, 高度10 kmを超える持続的な噴煙が立ちのぼるという特徴を持つ. 短時間のうちに終息するタイプもあれば長期に渡り複数回の噴火を繰り返すタイプもあり,その推移は多様であるが,このようなプリニー式噴火の推移の多様性の原因の理解は十分に進んでいない. そのため,個々の事例について,噴火直前のマグマ蓄積場の組成, 温度, 深度(圧力), 粘性などのパラメータやその不均質を推定し,表面現象との関係を明らかにすることが重要である. 霧島火山群韓国岳で約16 kaに発生し,当該地域最大規模の噴火の一つである小林軽石噴火は, 噴火中幾度かプリニー式フェーズを繰り返したと考えられており,上記の問題を探る上で重要な対象と位置付けられる. 降下軽石は斑晶量が多いことが特徴だが, 噴火時のマグマ変遷の詳細やマグマ蓄積場の描像は明らかにされていない. そのため本研究では, 小林軽石噴火の推移とマグマ蓄積場の解明を目的とする.
韓国岳山頂火口の北側から東側の計9地点の露頭で堆積物の層序記載・区分および試料採取を行うとともに,プリニー式降下軽石と火砕流のスコリアの試料について, 鏡下での組織や斑晶鉱物の観察, モード測定,蛍光X線分析装置を用いた全岩化学組成分析, FE-EPMAを用いた斑晶鉱物, 石基ガラス, メルト包有物などの化学組成分析を行った.Unit毎の分析結果に対して,両輝石温度計・鉄チタン酸化物温度計・斜長石-メルト含水量計等を適用してマグマ蓄積場の温度・圧力条件を推定し,噴火推移との関係を調べた.
主な堆積物は降下軽石と火山灰の互層からなり,本研究ではこれをUnit A〜Kに区分した.このうちUnit Fは厚く,粒径も大きいことから最大規模のプリニー式フェーズを示す.火砕流堆積物の層順ははっきりしないが,プリニー式降下軽石に挟まれることから一連の噴出物と考えられる.斑晶鉱物は全Unitに共通して斜長石・単斜輝石・直方輝石・鉄チタン酸化物が認められ, 斜長石と両輝石の多くは累帯構造や融食形, sieve textureを示す. 降下軽石は高斑晶量(40-50 vol.%)かつ高発泡度で, マイクロライトに乏しい石基を持つ. スコリアは軽石と比較して斑晶量が少なく(32 vol.%), 低発泡度で, 石基にマイクロライトが析出していたことから, 降下軽石のマグマより浅部での結晶化や脱ガスの影響を受けた可能性がある. 風化の影響が少なかったスコリアの全岩化学組成と, 風化の影響が強いためにモード組成からmass balance計算で推定した軽石の全岩化学組成はSiO2 58-62 wt.%の安山岩で,スコリアの方がやや苦鉄質であった. 斑晶鉱物組成は, スコリアで斜長石An#55-85, 単斜輝石Mg#68-84, 直方輝石Mg#66-78, 軽石で斜長石An#55-92, 単斜輝石Mg#70-78, 直方輝石Mg#66-70を示し, スコリア中の両輝石が軽石と比較して幅広い組成を持つ. ガラス組成は, 降下軽石の中でもUnit B・IとUnit Fでは斑晶鉱物の付着ガラスやメルト包有物の組成(Total alkali)が系統的に異なっていた. この組成の違いを単一マグマ溜まり内での分別結晶化のみで説明するのは難しく, またUnit Fに含まれる単斜輝石の付着ガラスがメルト包有物と石基ガラスの中間の組成を示したことから, 2つの珪長質マグマが噴火の比較的直前に混合したことが考えられる. またスコリアの石基ガラスは軽石と比較してやや苦鉄質な組成であり, 軽石とは異なるマグマ溜まりの関与が示唆された. スコリアの石基ガラス組成は, 軽石の起源となったマグマと御鉢の苦鉄質マグマのような苦鉄質成分の混合により説明できそうである. 地質温度計・含水量計から推定した主要斑晶鉱物が晶出したマグマ蓄積場の温度・圧力条件は, スコリアで950±50℃, 3.5±0.3 km, 軽石で910±20℃, 3.9±0.6 kmとなった. 以上の結果および考察より,小林軽石噴火のマグマは, 単一のマグマ溜まりではなく,類似の条件で存在する複数のマグマポケットを持つマッシュ状のマグマ蓄積場に起源を持っていたと考えられる. また, 噴火の規模や様式の変化と噴出するマグマポケットの変化が密接に関係していた可能性がある.