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[SVC33-P04] 玄武岩質安山岩マグマの石基組織の減圧速度依存性:西之島Ep. 4噴火と伊豆大島1986B噴火の比較

キーワード:西之島、伊豆大島、玄武岩質安山岩、石基組織、減圧速度
苦鉄質マグマの爆発的噴火では,ストロンボリ式噴火からプリニー式噴火まで多様な噴火様式が観測される.こうした噴火様式の変化を制御する主な要素は,火道上昇時のマグマの減圧速度と考えられている.火道上昇時に形成する石基鉱物の組織はマグマの減圧速度の情報を記録すると期待できる (e.g., Toramaru et al., 2008).しかし,石基鉱物組織はマグマの化学組成・含水量・温度にも複雑に依存するため,どの組織パラメータが減圧速度の指標になるのか,またその定量的関係は明らかでない.この状況を打破するうえで,観測によってマグマ噴出率が既知の噴火のうち,化学組成・温度が同等で噴火様式の異なる噴出物を試料とし,その石基組織の特徴を比較することが有効と考えられる.この条件を満たす候補として,伊豆大島1986年B噴火 (以下,86B) と西之島2020年Ep. 4噴火 (以下,N4) が挙げられる.これら2噴火の噴出物は,その化学組成と温度がほぼ同等だが (宮下他, 2023火山学会; 森他, 2024火山学会),噴火様式は86Bでサブプリニー式,N4でバイオレントストロンボリ式と異なる.そこで本研究では,これら2噴火のスコリアについて行った石基組織解析の結果を比較し,石基組織と減圧速度・噴火様式の関係を検討した.
本研究で試料として用いた86Bスコリアは,B火口の東~3 kmのloc. 52 (Mannen, 2006) で採取されたTB2スコリアであり,神奈川県温泉地学研究所の萬年一剛博士に提供して頂いた.N4スコリアは,観測船「凌風丸」が2020年7月11日に西之島の北北西~18.5 kmで採取したものを気象庁から提供して頂いた.両試料とも,その大部分は石基結晶を含むガラス質粒子から構成されることから (宮下他, 2023火山学会; 森他, 2024火山学会),本研究ではガラス質粒子を分析対象とした.これらの試料について,東大地震研のFE-EPMA及び静大のFE-SEM-EDSでBSE像撮影と元素マッピングを行い,得られた画像データを用いて石基組織解析を行った.また,東大地震研のFE-EPMAを用いて,鉱物・ガラスの相化学分析を行った.
86B・N4スコリアの石基鉱物は主に斜長石,単斜輝石と少量のFe-Ti酸化物からなり,N4スコリアのみ少量のオリビンを含む.石基の斜長石と単斜輝石の量VPl,VCpxはそれぞれ,86Bスコリアでは12.1-32.9 vol%と0.9-21.4 vol%,N4では20.8-61.9 vol%と6.2-18.7 vol%であった.また,斜長石と単斜輝石の結晶数密度NPl,NCpxは,86Bで1.1-16.3×105 mm-2,0.6-11.7×105 mm-2,N4で1.3-6.0×105 mm-2,1.0-9.6×105 mm-2であった.斜長石と単斜輝石の平均結晶サイズSPl,SCpx (Si=√Vi /√Ni) は,86Bで0.01-0.08 mmと0.01-0.06 mm, N4で0.03-0.05 mmと0.01-0.03 mmであった.VPlとSPlは86B < N4,NPlはN4 < 86Bとなった.一方,VCpx,NCpx,SCpxは2噴火の間でほとんど差が見られなかった.
伊豆大島86B (TB-2) スコリアの噴出率~8.4×105 kg/s (~336 DRE m3/s; Mannen, 2006) は,西之島でN4スコリア試料を採取した期間の噴出率~6.06 DRE m3/s (Kaneko et al., 2022) より2桁程度大きい.このことから,N4スコリアは86Bスコリアと比べてマグマの減圧速度が低い条件で石基結晶作用したと考えられる.石基結晶核形成時のメルトの化学組成・含水量が同じ場合,マイクロライト数密度は減圧速度とともに増加する (Toramaru et al., 2008).従って,N4スコリアと86Bスコリアにみられる石基斜長石の組織の明瞭な差は,減圧速度の差を反映していると考えられる.これに対して,単斜輝石は結晶量・数密度ともにN4スコリアと86Bスコリアで大きく変化しない.このことは,石基単斜輝石の組織が減圧速度をあまり反映しないことを示す.これは,単斜輝石のリキダスの含水量に対する勾配が,斜長石のそれに比べて小さく (Toramaru et al., 2008),減圧速度に対して鈍感なためと考えられる.以上の結果は,減圧速度の指標として,石基斜長石の組織 (特に平均サイズ) が有用であることを示唆する.
本研究で試料として用いた86Bスコリアは,B火口の東~3 kmのloc. 52 (Mannen, 2006) で採取されたTB2スコリアであり,神奈川県温泉地学研究所の萬年一剛博士に提供して頂いた.N4スコリアは,観測船「凌風丸」が2020年7月11日に西之島の北北西~18.5 kmで採取したものを気象庁から提供して頂いた.両試料とも,その大部分は石基結晶を含むガラス質粒子から構成されることから (宮下他, 2023火山学会; 森他, 2024火山学会),本研究ではガラス質粒子を分析対象とした.これらの試料について,東大地震研のFE-EPMA及び静大のFE-SEM-EDSでBSE像撮影と元素マッピングを行い,得られた画像データを用いて石基組織解析を行った.また,東大地震研のFE-EPMAを用いて,鉱物・ガラスの相化学分析を行った.
86B・N4スコリアの石基鉱物は主に斜長石,単斜輝石と少量のFe-Ti酸化物からなり,N4スコリアのみ少量のオリビンを含む.石基の斜長石と単斜輝石の量VPl,VCpxはそれぞれ,86Bスコリアでは12.1-32.9 vol%と0.9-21.4 vol%,N4では20.8-61.9 vol%と6.2-18.7 vol%であった.また,斜長石と単斜輝石の結晶数密度NPl,NCpxは,86Bで1.1-16.3×105 mm-2,0.6-11.7×105 mm-2,N4で1.3-6.0×105 mm-2,1.0-9.6×105 mm-2であった.斜長石と単斜輝石の平均結晶サイズSPl,SCpx (Si=√Vi /√Ni) は,86Bで0.01-0.08 mmと0.01-0.06 mm, N4で0.03-0.05 mmと0.01-0.03 mmであった.VPlとSPlは86B < N4,NPlはN4 < 86Bとなった.一方,VCpx,NCpx,SCpxは2噴火の間でほとんど差が見られなかった.
伊豆大島86B (TB-2) スコリアの噴出率~8.4×105 kg/s (~336 DRE m3/s; Mannen, 2006) は,西之島でN4スコリア試料を採取した期間の噴出率~6.06 DRE m3/s (Kaneko et al., 2022) より2桁程度大きい.このことから,N4スコリアは86Bスコリアと比べてマグマの減圧速度が低い条件で石基結晶作用したと考えられる.石基結晶核形成時のメルトの化学組成・含水量が同じ場合,マイクロライト数密度は減圧速度とともに増加する (Toramaru et al., 2008).従って,N4スコリアと86Bスコリアにみられる石基斜長石の組織の明瞭な差は,減圧速度の差を反映していると考えられる.これに対して,単斜輝石は結晶量・数密度ともにN4スコリアと86Bスコリアで大きく変化しない.このことは,石基単斜輝石の組織が減圧速度をあまり反映しないことを示す.これは,単斜輝石のリキダスの含水量に対する勾配が,斜長石のそれに比べて小さく (Toramaru et al., 2008),減圧速度に対して鈍感なためと考えられる.以上の結果は,減圧速度の指標として,石基斜長石の組織 (特に平均サイズ) が有用であることを示唆する.