日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山噴火のメカニズム

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:無盡 真弓(北海道大学)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、丸石 崇史(防災科学技術研究所)、村松 弾(東京大学地震研究所)

17:15 〜 19:15

[SVC33-P13] 気泡破裂アナロジー実験により再現されたパルス状音波の波形・周波数的特徴

*村松 弾1市原 美恵1桑野 修2 (1.東京大学地震研究所、2.国立研究開発法人 海洋研究開発機構)

キーワード:火山、音波、レオロジー

マグマ噴火や水蒸気噴火において,流体表面での気泡破裂によりパルス状の空振が励起されることがあり,流体のレオロジーと音波励起メカニズムの関係が議論されている(Jolly et al., 2016; Muramatsu et al., 2022)。発生場のレオロジーが音波に与える影響を明らかにするため,本研究では水蒸気噴火の泥の模擬物質として合成スメクタイト(スメクトン-SA,クニミネ工業)の水分散液(3wt%)を用いた気泡破裂のアナロジー実験を行った。サンプルは降伏応力をもち,ひずみを加えた後にレスト(静置)させると構造回復に起因する粘性の時間変化(チキソトロピー性)を示す。エイジング試験により,サンプルの構造回復に要する時間は数十秒のオーダーと考えられる。実験ではガラス容器に入れたサンプルの底面からインジェクターで空気を一定流量で注入して気泡を生成し,表面での破裂を広帯域マイクロフォンとカメラで計測した。なお気泡の初期上昇を促すため,空気の注入直前にガラス棒を差し込んでノズル先端から水面までひずみを加えている。構造回復が音波に与える影響を検証するため,気泡の破裂開始後,空気の注入を中断してサンプルを一定時間レストさせた後に注入を再開する操作を繰り返した。レスト時間は10秒,30秒,100秒と徐々に長くした。以上の手順で,同一のサンプルを用いて2回試験を行った。計測された音波は1000–2000 Hz付近に明瞭なピークを持つが,これはガラス容器内のサンプル水面より上の部分における気柱共鳴の固有周波数を含んでいると考えられる。そこで,Snieder & Safak (2006)の手法を参考にリファレンスイベントのスペクトルで各パルスのスペクトルをデコンボリューションしたところ,2回目の試験では周波数が上昇するような傾向が見られた。カメラ映像と比較すると,サンプル水面の気泡の出口の下に形成された残留気泡が時間と共に縮んでいく様子が見られた。破裂音が残留気泡内での共鳴によると仮定すれば,周波数の上昇は気泡サイズの縮小によって説明できるが,議論のためには気泡サイズ・体積の推定が必要である。1回目の試験ではレスト時間前後の波形の明瞭な変化は確認できなかったが,2回目の試験ではわずかな違いがみられた。ただし,スメクタイト水分散液は構造回復以外にも,分子の膨潤・分散によって数日スケールでのレオロジー変化を示すことが報告されているため(Laribi et al., 2005),波形の違いがレストに起因するものかどうかはさらなる検証が必要である.今後は①装置の改良による固有振動の除去,②長時間のレストによるレオロジー変化の影響評価,③残留気泡サイズの推定,を行うことで上述の課題を解決する予定である。また,周囲の構造(火口や地形)による共鳴の影響は実際の火山の空振を解析する際にも考慮すべき課題であるため,発表ではその解決策についても議論したい。