日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC33] 火山噴火のメカニズム

2025年5月26日(月) 17:15 〜 19:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:無盡 真弓(北海道大学)、田中 良(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)、丸石 崇史(防災科学技術研究所)、村松 弾(東京大学地震研究所)

17:15 〜 19:15

[SVC33-P14] ストロンボリ式噴火のメカニズムに関する実験的考察

*谷澤 歩武1西村 太志1 (1.東北大学大学院理学研究科)

キーワード:ストロンボリ式噴火、室内実験、スラグ流

序論
間欠的に繰り返し発生するストロンボリ式噴火について、Jaupart & Vergniolle (1988)は、室内実験等を行うことで、上昇する小気泡がマグマだまり内上部で集積し、生じた大気泡が間欠的に火道内に侵入・上昇、その後地表出口で破裂して噴火するモデル(以下、JVモデル)で説明した。しかし、Ripepe et al. (2001)は、ストロンボリ火山で観測される地震波と空振波の時間差から推定される大気泡の上昇速度が、スラグ流の理論的な上昇速度に比べて2倍ほど速いことを示した。ストロンボリ式噴火はJVモデルに基づいていまでも議論されているが、この矛盾について説明がなされてきていない。本研究では、JVモデルを改良し、観測されるスラグ流の上昇速度が理論値に比べて早くなる可能性を検討したので報告する。

データ・手法
本研究では、J Vモデルと同様に、マグマだまりと火道を模した水槽とパイプからなる実験装置を用いた。マグマだまりに当たる水槽は、下部の内径29 cm、高さ20 cmで、水槽の中央上部に接続した火道に相当するパイプは、内径4 cm、高さは30 cmである。水槽内にマグマに相当する水を満たし、水槽側面から火山ガスとして空気を少しずつ供給する。圧力センサー(Kistler・Piezosmart 4045A2)は、パイプ内部およびその直下の水槽内部に設置した。センサーの信号はサンプリング周波数100 Hzでデータロガー(計測技研・HKS-9700)に記録した。実験では、パイプ上部を開いた場合(開管)と閉じた場合(閉管)の2通り行った。前者はJVモデルと同じである。後者は火道最上部に火砕物等が詰まり噴火前は火道が閉塞している状態を表す。閉管の場合は、パイプ最上部に薄いプラスチック板をフエキのりで接着した。開管は何も設置しない。

結果
開管の場合、センサーの圧力波形は、数分から数十分のゆっくりとした増加と1-3秒ほどの急激な減少を繰り返す、のこぎり歯状のシグナルとなる。振幅は2-10hPa程度である。このような特徴は、水槽内あるいはパイプ内に設置したセンサー共に共通して認められる。ゆっくりとした圧力増加は、供給した小気泡が水槽上部に集積した結果、水槽内の水が押し出されパイプ内の水位が上昇するためである。急激な圧力減少は、集積した小気泡により水槽上部に形成された大気泡がパイプ内をスラグ流となって上昇し、パイプ上部から流出した結果、パイプ内の水位が低下することに由来する。
 閉管の場合、パイプ内に設置されたセンサーは、小気泡の集積によるゆるやかな増圧を記録するが、大気泡がパイプ内に侵入を開始する際には、さらに振幅2-16hPa、パルス幅1秒程度の顕著な増圧を記録する。この増圧は、大気泡侵入による動圧や、蓋によって空気の流出量が制約されていることなどに起因すると考えられる。なお、水槽下部に設置したセンサーには、このような1秒の増圧信号は顕著に記録されなかった。

考察・まとめ
開管と違い、閉管時には1秒ほどの圧力上昇が起こる。これは大気泡がパイプ、つまり火道に侵入する時点で起こるため、この増圧によって火道を閉塞する蓋が破壊される可能性がある。蓋が破壊されることで噴火が開始することになるので、スラグ流が火道を上昇する時間は必要がなく、Ripepe et al. (2001)が測定した地震波と空振波の時間差が理論的なスラグ流の上昇速度からの予測よりも小さくなることも説明できる。
マグマ溜まりと火道を模した水槽を使用して、開管時と閉管時のスラグ流の挙動及び圧力変動を解析した。その結果、ストロンボリ式噴火において、火道を閉管と仮定することで、長年検討されていなかったスラグ流の見かけ速度の矛盾点を説明できることがわかった。