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[SVC34-01] 石質岩片から推察する,北海道東部,屈斜路カルデラ最大規模噴火(Kp Ⅳ)の給源情報

キーワード:屈斜路火山、カルデラ、カルデラサイクル、石質岩片
複数回の大規模珪長質マグマ噴火を経験した多輪廻カルデラ火山では,後続の噴火により当時の噴出物が覆われ,カルデラ構造が改変されるため,改変前のカルデラ発達過程に関する情報を得ることが困難である.しかし,噴火堆積物に含まれる石質岩片は,噴火当時の火口周辺~火道の地質に由来することから,これらの構成種を解析し,周辺地質と対比することで,カルデラ形成噴火時の給源情報(位置・地質)やカルデラの構造的な発達過程を復元できる[1].
北海道東部に位置する屈斜路カルデラは,1.84〜0.87 Maに先屈斜路火山岩類 (現在の外輪山)を噴出した後,400 ka〜40 kaの間に複数回の大規模噴火(FWTに始まり,Kp Ⅷ〜Kp Ⅰと続く)を発生した第四紀カルデラ火山である[2].このうち,120 kaに発生したKp Ⅳ噴火(175 km³[2])は最大規模であり,この噴火によって現在のカルデラの大枠が形成された.本研究では,Kp Ⅳ噴火の堆積物に含まれる石質岩片の構成種解析を行い,噴火当時のカルデラ周辺環境を推定した.
Kp Ⅳ噴火堆積物の大部分を占める軽石流ユニットを各露頭(n=9)でバルク採取し,室内で300個以上の石質岩片(32〜4 mm)について構成物分析を行った.その結果,Kp Ⅳ噴火堆積物には平均して35 wt.%の石質岩片が含まれ,これらは①火山岩,②緑色変質岩,③白色変質岩,④凝灰岩を含む硬質堆積岩,⑤褐色変質岩,⑥軟質堆積岩の6タイプに分類された.なお,黒曜岩は本質物質の可能性があるため本分析から除外した.採取地点ごとの構成比に顕著な差は認められず,①火山岩が構成比の半数を占めた.本地域は新第三系基盤岩類とその上位にある第四系(先屈斜路火山岩類)から構成され[3],②緑色変質岩・③白色変質岩・④硬質堆積岩は新第三系基盤岩類に対比される.一方,⑤褐色変質岩・⑥軟質堆積岩は,本地域に認められるいずれの地層にも対比できない.
①火山岩については,岩石記載および全岩化学組成分析を用いて,現在の外輪山を構成する先屈斜路火山岩類との対比を行った.①火山岩と先屈斜路火山岩類の斑晶鉱物組み合わせ(Pl, Opx, Cpz, Opq)は共通しており,斑晶量はいずれも1-33 vol.%程度であり,顕著な差異は認められない.全岩化学組成においては,①火山岩はデイサイトを主体として玄武岩質安山岩〜流紋岩まで連続的かつ幅広い組成を持つのに対し,先屈斜路火山岩類は玄武岩から安山岩を主体とする(Fig. 1).また,①火山岩はSr含有量が32-304 ppmの範囲にあり,REE組成はLREEが濃集する傾向を示すが,これらの特徴が全て一致する先屈斜路火山岩類は認められない.一方,①火山岩は多くの主成分・微量成分元素のハーカー図上で,Kp Ⅳの本質物質(スコリア・軽石)と類似した組成領域を示す.
Kp Ⅳ噴火堆積物に含まれる石質岩片中の①火山岩は先屈斜路火山岩類と明瞭に異なる化学組成を示すことから,現存する先屈斜路火山岩類には由来しない可能性が高い.①火山岩は,むしろKp Ⅳのマグマ組成に類似することから,先カルデラ期ではなくカルデラ形成期のマグマ活動に由来する可能性が指摘できる.屈斜路カルデラ内には400 ka〜40 kaの複数のカルデラ形成噴火に伴って形成された「当時の後カルデラ火山体」が報告されており[4],このうちFWT噴火後300±20 ka[4]に活動したビラオ山の組成は①火山岩のなす組成トレンドとよく一致する.①火山岩の詳細な起源については,現時点でこれ以上の議論は控えるが,今後年代測定などを行うことで明らかになると考える.
Kp Ⅳ噴火堆積物中の石質岩片には先屈斜路火山岩類が認められないことから,①火山岩は現在のカルデラ外輪山よりも内側に形成されていた山体に由来する可能性が高い.Kp Ⅳ噴火当時,カルデラ内部には複数の「当時の後カルデラ火山体」が存在していたと考えられ,これらが破壊されて噴火堆積物中に取り込まれたと考えられる.
このように,カルデラ形成噴⽕堆積物中の石質岩片の化学組成が,先カルデラ山体のそれよりも本質物質の化学組成に類似するような事例は,他の多輪廻のカルデラ火山(例えば,Santorini[5])でも報告されている.このようなカルデラ形成噴火間の非爆発的噴火活動の痕跡は,多輪廻カルデラ火山において普遍的に認められる可能性があり,今後のさらなる検証が必要である.
引用文献:[1]Cole et al. (1998), ESR. [2]Hasegawa et al. (2016), JVGR. [3]勝井 (1962), 北海道開発庁. [4]広瀬・中川 (1995), 地質雑.[5]Druitt (2014), BV.
北海道東部に位置する屈斜路カルデラは,1.84〜0.87 Maに先屈斜路火山岩類 (現在の外輪山)を噴出した後,400 ka〜40 kaの間に複数回の大規模噴火(FWTに始まり,Kp Ⅷ〜Kp Ⅰと続く)を発生した第四紀カルデラ火山である[2].このうち,120 kaに発生したKp Ⅳ噴火(175 km³[2])は最大規模であり,この噴火によって現在のカルデラの大枠が形成された.本研究では,Kp Ⅳ噴火の堆積物に含まれる石質岩片の構成種解析を行い,噴火当時のカルデラ周辺環境を推定した.
Kp Ⅳ噴火堆積物の大部分を占める軽石流ユニットを各露頭(n=9)でバルク採取し,室内で300個以上の石質岩片(32〜4 mm)について構成物分析を行った.その結果,Kp Ⅳ噴火堆積物には平均して35 wt.%の石質岩片が含まれ,これらは①火山岩,②緑色変質岩,③白色変質岩,④凝灰岩を含む硬質堆積岩,⑤褐色変質岩,⑥軟質堆積岩の6タイプに分類された.なお,黒曜岩は本質物質の可能性があるため本分析から除外した.採取地点ごとの構成比に顕著な差は認められず,①火山岩が構成比の半数を占めた.本地域は新第三系基盤岩類とその上位にある第四系(先屈斜路火山岩類)から構成され[3],②緑色変質岩・③白色変質岩・④硬質堆積岩は新第三系基盤岩類に対比される.一方,⑤褐色変質岩・⑥軟質堆積岩は,本地域に認められるいずれの地層にも対比できない.
①火山岩については,岩石記載および全岩化学組成分析を用いて,現在の外輪山を構成する先屈斜路火山岩類との対比を行った.①火山岩と先屈斜路火山岩類の斑晶鉱物組み合わせ(Pl, Opx, Cpz, Opq)は共通しており,斑晶量はいずれも1-33 vol.%程度であり,顕著な差異は認められない.全岩化学組成においては,①火山岩はデイサイトを主体として玄武岩質安山岩〜流紋岩まで連続的かつ幅広い組成を持つのに対し,先屈斜路火山岩類は玄武岩から安山岩を主体とする(Fig. 1).また,①火山岩はSr含有量が32-304 ppmの範囲にあり,REE組成はLREEが濃集する傾向を示すが,これらの特徴が全て一致する先屈斜路火山岩類は認められない.一方,①火山岩は多くの主成分・微量成分元素のハーカー図上で,Kp Ⅳの本質物質(スコリア・軽石)と類似した組成領域を示す.
Kp Ⅳ噴火堆積物に含まれる石質岩片中の①火山岩は先屈斜路火山岩類と明瞭に異なる化学組成を示すことから,現存する先屈斜路火山岩類には由来しない可能性が高い.①火山岩は,むしろKp Ⅳのマグマ組成に類似することから,先カルデラ期ではなくカルデラ形成期のマグマ活動に由来する可能性が指摘できる.屈斜路カルデラ内には400 ka〜40 kaの複数のカルデラ形成噴火に伴って形成された「当時の後カルデラ火山体」が報告されており[4],このうちFWT噴火後300±20 ka[4]に活動したビラオ山の組成は①火山岩のなす組成トレンドとよく一致する.①火山岩の詳細な起源については,現時点でこれ以上の議論は控えるが,今後年代測定などを行うことで明らかになると考える.
Kp Ⅳ噴火堆積物中の石質岩片には先屈斜路火山岩類が認められないことから,①火山岩は現在のカルデラ外輪山よりも内側に形成されていた山体に由来する可能性が高い.Kp Ⅳ噴火当時,カルデラ内部には複数の「当時の後カルデラ火山体」が存在していたと考えられ,これらが破壊されて噴火堆積物中に取り込まれたと考えられる.
このように,カルデラ形成噴⽕堆積物中の石質岩片の化学組成が,先カルデラ山体のそれよりも本質物質の化学組成に類似するような事例は,他の多輪廻のカルデラ火山(例えば,Santorini[5])でも報告されている.このようなカルデラ形成噴火間の非爆発的噴火活動の痕跡は,多輪廻カルデラ火山において普遍的に認められる可能性があり,今後のさらなる検証が必要である.
引用文献:[1]Cole et al. (1998), ESR. [2]Hasegawa et al. (2016), JVGR. [3]勝井 (1962), 北海道開発庁. [4]広瀬・中川 (1995), 地質雑.[5]Druitt (2014), BV.