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[SVC34-02] 東北日本、秋田駒ケ岳火山の構造と形成史:複合火山形成史解明のための火山地質学的手法の提案とその意義
キーワード:火山地質学、赤色立体地図、テフラと山体の対比、秋田駒ケ岳火山、Sr-Nd-Pb同位体比
火山の噴火履歴や火山体の構造・発達史は、マグマの発生や進化など、火山深部プロセスを理解するうえで不可欠な基礎情報である。しかし、長期間にわたる噴火履歴や、その間に成長した山体の構造を明らかにすることは、一般に容易ではない。本研究では、多様な手法を取り入れた火山地質学的研究手法を提案する。研究対象である秋田駒ケ岳火山は、東北日本に位置し、後期更新世から現在まで活動を続ける活火山である。その成層火山体の北斜面と南斜面にはカルデラが形成されており、それぞれ南部カルデラおよび北部カルデラと呼ばれている。両カルデラ内では、後カルデラ火山活動が認められる。本火山に関しては、これまでも噴火史や山体構造に関する多くの研究が行われてきた。しかし、カルデラ形成噴火の推移や、テフラと山体構成物の対比については、統一的な解釈が確立されておらず、混乱が見られた。
まず、1m解像度のレーザー測量データを用いて作成された赤色立体地図を利用し、カルデラや火口地形、噴出物の分布・被覆関係、微地形の保存状況などを解析した。その結果、山体の構造とその発達過程、および関連する噴出物の分布が明らかになった。次に地表踏査では、地形解析結果の確認に加え、露頭観察だけでなく、トレンチ調査やボーリング掘削調査を併用することで、被覆関係や噴火様式・推移を明らかにし、地質情報が揃ったサンプルを収集できた。一方、テフラ層序学は噴火様式や推移の解明に寄与するだけでなく、噴火履歴に時間軸を導入できる点でも重要である。秋田駒ケ岳の更新世末期以降のテフラ層序は、和知ほか(1997)により明らかにされており、上位からAK1~AK13までの13ユニットが識別されている。我々は、テフラ層序の確認を行うとともに、系統的にテフラ試料を収集した。そして、山体構成物とテフラ層序の対比を行った。この対比は、これまでも岩相や全岩組成、あるいはガラスの主成分化学組成を用いて行われてきた。本研究では、それに加えて、希土類を含む微量成分やSr-Nd-Pb同位体比など、多項目の地球化学データを用いた。本火山の噴出物は玄武岩から安山岩組成まで広がり、特に玄武岩質安山岩に卓越する。特にSr同位体比に着目すると、87Sr/86Sr比の違いにより、0.70395–0.70406(低Srタイプ)と0.70409–0.70433(高Srタイプ)の2つに区別できることが分かった。これに基づき、AK13–12は高Srタイプ、AK11–8は低Srタイプ、AK7–1は再び高Srタイプに分類された。さらにNd同位体比に注目すると、同じ高Srタイプであっても、AK13–12は低Nd同位体比を示すことで、AK7–1と区別できることが明らかになった。また、それぞれのタイプ内でも、主成分・微量成分の組成の違いにより、テフラユニット間の識別が可能である。このように、マグマタイプの多様性とその時間変化に着目することで、テフラと山体構成物のより精度の高い対比が可能となった。
本研究によって明らかになった秋田駒ケ岳の形成史は、以下のとおりである。まず、14–13kaに2回にわたる大規模な爆発的噴火により、南部カルデラが形成された(AK13-12)。その直後、山体崩壊によって北部カルデラも形成された。後カルデラ活動は、北部カルデラ内で始まった。AK11–9の時期(12–9.5ka)には片倉岳火砕丘が形成され、9kaには爆発的噴火が発生し、火砕流が生じた(AK8)。8ka以降は、男女岳を代表とする複数の火砕丘が形成され、溶岩の流出が続いた。そして、7kaには男女岳で爆発的噴火が発生し、火口が形成されるとともに火砕流が発生した(AK6)。その後、約3.5kaからは水蒸気噴火が頻発し(AK5)、最末期には小火砕丘(北部第4火砕丘)が形成された(AK4)。約2.5kaには、北部カルデラ内の活動が終了し、その後は南部カルデラ内へ移行した。2kaにはマグマ水蒸気爆発が発生し、火砕丘(古小岳火砕丘)が形成されたと考えられる(AK3)。その後1.5ka頃には女岳が活動し(AK2)、引き続いて小岳が活動した(AK1)。それぞれの活動では火砕丘が形成され、溶岩も流出した。そして、約1000年前までには主要な活動は停止した。しかし、19世紀頃から活動が再開し、1932年にはマグマ水蒸気噴火、1970–71年にはマグマ噴火が発生した。本研究により、秋田駒ケ岳の山体発達史に時間軸を導入することに成功した。この成果は、火山活動とマグマの時間変遷の関係など、火山深部プロセスの理解を進展させるだけでなく、例えばマグマ噴出量階段図の形状をより正確にすることで、火山活動の予測や防災面での貢献も期待される。今後、本研究と同様の手法を用いた他火山での研究の展開が望まれる。
まず、1m解像度のレーザー測量データを用いて作成された赤色立体地図を利用し、カルデラや火口地形、噴出物の分布・被覆関係、微地形の保存状況などを解析した。その結果、山体の構造とその発達過程、および関連する噴出物の分布が明らかになった。次に地表踏査では、地形解析結果の確認に加え、露頭観察だけでなく、トレンチ調査やボーリング掘削調査を併用することで、被覆関係や噴火様式・推移を明らかにし、地質情報が揃ったサンプルを収集できた。一方、テフラ層序学は噴火様式や推移の解明に寄与するだけでなく、噴火履歴に時間軸を導入できる点でも重要である。秋田駒ケ岳の更新世末期以降のテフラ層序は、和知ほか(1997)により明らかにされており、上位からAK1~AK13までの13ユニットが識別されている。我々は、テフラ層序の確認を行うとともに、系統的にテフラ試料を収集した。そして、山体構成物とテフラ層序の対比を行った。この対比は、これまでも岩相や全岩組成、あるいはガラスの主成分化学組成を用いて行われてきた。本研究では、それに加えて、希土類を含む微量成分やSr-Nd-Pb同位体比など、多項目の地球化学データを用いた。本火山の噴出物は玄武岩から安山岩組成まで広がり、特に玄武岩質安山岩に卓越する。特にSr同位体比に着目すると、87Sr/86Sr比の違いにより、0.70395–0.70406(低Srタイプ)と0.70409–0.70433(高Srタイプ)の2つに区別できることが分かった。これに基づき、AK13–12は高Srタイプ、AK11–8は低Srタイプ、AK7–1は再び高Srタイプに分類された。さらにNd同位体比に注目すると、同じ高Srタイプであっても、AK13–12は低Nd同位体比を示すことで、AK7–1と区別できることが明らかになった。また、それぞれのタイプ内でも、主成分・微量成分の組成の違いにより、テフラユニット間の識別が可能である。このように、マグマタイプの多様性とその時間変化に着目することで、テフラと山体構成物のより精度の高い対比が可能となった。
本研究によって明らかになった秋田駒ケ岳の形成史は、以下のとおりである。まず、14–13kaに2回にわたる大規模な爆発的噴火により、南部カルデラが形成された(AK13-12)。その直後、山体崩壊によって北部カルデラも形成された。後カルデラ活動は、北部カルデラ内で始まった。AK11–9の時期(12–9.5ka)には片倉岳火砕丘が形成され、9kaには爆発的噴火が発生し、火砕流が生じた(AK8)。8ka以降は、男女岳を代表とする複数の火砕丘が形成され、溶岩の流出が続いた。そして、7kaには男女岳で爆発的噴火が発生し、火口が形成されるとともに火砕流が発生した(AK6)。その後、約3.5kaからは水蒸気噴火が頻発し(AK5)、最末期には小火砕丘(北部第4火砕丘)が形成された(AK4)。約2.5kaには、北部カルデラ内の活動が終了し、その後は南部カルデラ内へ移行した。2kaにはマグマ水蒸気爆発が発生し、火砕丘(古小岳火砕丘)が形成されたと考えられる(AK3)。その後1.5ka頃には女岳が活動し(AK2)、引き続いて小岳が活動した(AK1)。それぞれの活動では火砕丘が形成され、溶岩も流出した。そして、約1000年前までには主要な活動は停止した。しかし、19世紀頃から活動が再開し、1932年にはマグマ水蒸気噴火、1970–71年にはマグマ噴火が発生した。本研究により、秋田駒ケ岳の山体発達史に時間軸を導入することに成功した。この成果は、火山活動とマグマの時間変遷の関係など、火山深部プロセスの理解を進展させるだけでなく、例えばマグマ噴出量階段図の形状をより正確にすることで、火山活動の予測や防災面での貢献も期待される。今後、本研究と同様の手法を用いた他火山での研究の展開が望まれる。