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[SVC34-09] 硫黄島の2700年前のマグマ噴火に伴う急激な沈降とその後の隆起過程
キーワード:硫黄島、伊豆小笠原弧、噴火、隆起、再生ドーム、サンゴ化石
伊豆小笠原弧に属する硫黄島は、東京から1200 km南方に離れた火山島である。この島は、直径約600 mの小さな富士山型の形状をした摺鉢山(標高172 m)と直径5㎞ほどの広く平坦な山頂をもつ台地状の元山(最高点(東山):139 m)が接続した形をしている.この硫黄島は19世紀末に人が入植してから、顕著な隆起を伴いながら度々小さな噴火を繰り返していることが記録されている。しかし、人が入植する前の噴火と隆起運動の関係はよくわかっていない。
硫黄島の最高点をなす元山を形成する火山噴出物,2.7 cal kaに発生した,噴出物量が1.3 km3以上にも及ぶ大規模な噴火で形成されたことが知られている(長井・小林,2015)。この噴火は、最近約3千年間に硫黄島で発生した最も大きな噴火であり,すべて水中(海中)で発生した噴火であるうえ,元山の地表面からはサンゴ化石が見つかることから一度海中に没した元山が再び隆起して陸上になったことが知れれている(長井・小林,2015など).本発表は,この元山形成噴火堆積物直下の年代と堆積構造と元山上に形成された海成段丘の年代から,元山を形成した噴火の沈降隆起過程を復元する.
今までの元山の陸化年代は,既研究で得られた元山上の最高位の海成段丘面上に残されたサンゴ化石の14C年代値を基に推定されている(例えば,大木・熊谷,1977).しかし,これらの年代値はいずれもΔ13C補正などが行われていない値であるため,今日的には14C年代値(Conventional Radiocarbon age :Stuiver & Polach, 1977)とは言えないものである.サンゴ化石の14C年代値は,Δ13C補正を行っていない場合,真の14C年代値より数百年以上値がずれてしまう。そのため、既研究で報告された値は隆起時期を特定するものとしては使えない.また,サンゴ化石の年代値は,サンゴが死亡した時などで炭素が固定された時の値であるため,正しい値が得られたとしても,その値そのものが単純に段丘の離水年代を示すわけではない.その点でも,既研究で報告された年代値をそのまま使用することは問題がある.そのため本研究では、複数の段丘面上から採集したサンゴ化石に対して,新たにΔ13C補正を行った正しい14C年代値を求めるとともに,採取された段丘面との関係から最上位の段丘の離水年代を求めた.さらに,求めた年代値と噴火堆積物直下の堆積物の堆積環境から、元山噴火前の環境を復元した.それらをまとめると,元山噴火の前後の隆起沈降は次のように復元される。
1.2700年前の元山形成噴火直前には、現在の硫黄島の東側の海岸付近は、現在と同様に海浜(後浜)環境下であった.その上に重なる元山形成噴火の噴出物は,すべて水底環境で定置しているため,噴火開始直前ないし噴火と同時に噴出物の厚さ以上(>140 m)沈降したことになる.
2.その後、最上位の段丘面上のサンゴ化石のもっとも古い年代値から,遅くとも1300年前までには造礁サンゴが生息できる浅さ(>20 m)まで,元山の山頂部は達した.
3.最上部の段丘面の離水年代から,13~15世紀(約700~400年前)には,再び海面上に頭を出して陸地になった.なお,1543年に硫黄島が初めて発見されたが,16世紀中の記録では島は二つあったと記録されていることから,当時は摺鉢山と元山は独立した島であったと考えられる(貝塚,1987).
4.明治に人が初めて入植した時には,元山は標高100 mほどの山となっていた.2023年の元山の最高点の標高は139 mである.
つまり、硫黄島は2700年前の元山噴火の前後で140 m以上沈降し海面下に没したが,その後すみやかに隆起し700~400年前には再び陸上に頭を出すようになった.最近2700年間の平均隆起速度は,0.05 m/yr.以上で,700~400年前以降の平均隆起速度は,約0.35~0.2 m/yr.である.なお,最近25年間の平均隆起速度(Ueda et al, 2018)は,700~400年前以降から現在までの平均隆起速度と同程度である.今回の隆起沈降史の結果から,硫黄島は,最近の数百年間には急速に隆起しているが,元山噴火クラスの噴火が発生すると急激に沈降する可能性のあることが指摘できる.
文献: 貝塚(1987)小笠原研究年報, no.11, 80-87. 長井・小林(2015)地学雑誌, vol.124, 65-99. 大八木・熊谷(1977)国立防災科学技術センター研究速報, no.25, 5-17. Stuiver, M. & Polach, H. A. (1977) Radiocarbon, vol.19, 355-363. Ueda et al.(2018) Earth, Planets and Space, vol.70, 38.
硫黄島の最高点をなす元山を形成する火山噴出物,2.7 cal kaに発生した,噴出物量が1.3 km3以上にも及ぶ大規模な噴火で形成されたことが知られている(長井・小林,2015)。この噴火は、最近約3千年間に硫黄島で発生した最も大きな噴火であり,すべて水中(海中)で発生した噴火であるうえ,元山の地表面からはサンゴ化石が見つかることから一度海中に没した元山が再び隆起して陸上になったことが知れれている(長井・小林,2015など).本発表は,この元山形成噴火堆積物直下の年代と堆積構造と元山上に形成された海成段丘の年代から,元山を形成した噴火の沈降隆起過程を復元する.
今までの元山の陸化年代は,既研究で得られた元山上の最高位の海成段丘面上に残されたサンゴ化石の14C年代値を基に推定されている(例えば,大木・熊谷,1977).しかし,これらの年代値はいずれもΔ13C補正などが行われていない値であるため,今日的には14C年代値(Conventional Radiocarbon age :Stuiver & Polach, 1977)とは言えないものである.サンゴ化石の14C年代値は,Δ13C補正を行っていない場合,真の14C年代値より数百年以上値がずれてしまう。そのため、既研究で報告された値は隆起時期を特定するものとしては使えない.また,サンゴ化石の年代値は,サンゴが死亡した時などで炭素が固定された時の値であるため,正しい値が得られたとしても,その値そのものが単純に段丘の離水年代を示すわけではない.その点でも,既研究で報告された年代値をそのまま使用することは問題がある.そのため本研究では、複数の段丘面上から採集したサンゴ化石に対して,新たにΔ13C補正を行った正しい14C年代値を求めるとともに,採取された段丘面との関係から最上位の段丘の離水年代を求めた.さらに,求めた年代値と噴火堆積物直下の堆積物の堆積環境から、元山噴火前の環境を復元した.それらをまとめると,元山噴火の前後の隆起沈降は次のように復元される。
1.2700年前の元山形成噴火直前には、現在の硫黄島の東側の海岸付近は、現在と同様に海浜(後浜)環境下であった.その上に重なる元山形成噴火の噴出物は,すべて水底環境で定置しているため,噴火開始直前ないし噴火と同時に噴出物の厚さ以上(>140 m)沈降したことになる.
2.その後、最上位の段丘面上のサンゴ化石のもっとも古い年代値から,遅くとも1300年前までには造礁サンゴが生息できる浅さ(>20 m)まで,元山の山頂部は達した.
3.最上部の段丘面の離水年代から,13~15世紀(約700~400年前)には,再び海面上に頭を出して陸地になった.なお,1543年に硫黄島が初めて発見されたが,16世紀中の記録では島は二つあったと記録されていることから,当時は摺鉢山と元山は独立した島であったと考えられる(貝塚,1987).
4.明治に人が初めて入植した時には,元山は標高100 mほどの山となっていた.2023年の元山の最高点の標高は139 mである.
つまり、硫黄島は2700年前の元山噴火の前後で140 m以上沈降し海面下に没したが,その後すみやかに隆起し700~400年前には再び陸上に頭を出すようになった.最近2700年間の平均隆起速度は,0.05 m/yr.以上で,700~400年前以降の平均隆起速度は,約0.35~0.2 m/yr.である.なお,最近25年間の平均隆起速度(Ueda et al, 2018)は,700~400年前以降から現在までの平均隆起速度と同程度である.今回の隆起沈降史の結果から,硫黄島は,最近の数百年間には急速に隆起しているが,元山噴火クラスの噴火が発生すると急激に沈降する可能性のあることが指摘できる.
文献: 貝塚(1987)小笠原研究年報, no.11, 80-87. 長井・小林(2015)地学雑誌, vol.124, 65-99. 大八木・熊谷(1977)国立防災科学技術センター研究速報, no.25, 5-17. Stuiver, M. & Polach, H. A. (1977) Radiocarbon, vol.19, 355-363. Ueda et al.(2018) Earth, Planets and Space, vol.70, 38.