日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC35] 火山の熱水系

2025年5月25日(日) 15:30 〜 17:00 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京科学大学総合研究院多元レジリエンス研究センター)、谷口 無我(気象庁気象研究所)、座長:神田 径(東京科学大学総合研究院多元レジリエンス研究センター)、谷口 無我(気象庁気象研究所)

16:00 〜 16:15

[SVC35-08] 噴気地帯周辺での硫化水素の土壌拡散放出率測定法の検討

*森 俊哉1 (1.東京大学大学院理学系研究科)

キーワード:火山ガス、土壌拡散放出、硫化水素

火山ガス放出は噴煙や噴気が主体であると考えられているが、近年、火山の山体土壌からの拡散放出の重要性も注目されている。特に二酸化炭素の土壌拡散放出は、過去30年間の精力的な調査により、噴煙や噴気に匹敵する量が放出されていることが明らかになってきた(Burton et al., 2013)。通常の土壌拡散放出調査では二酸化炭素が対象となるが、噴気地帯近傍では硫化水素も放出している。本研究では、硫化水素の土壌拡散放出率の測定方法について検討した。
火山での二酸化炭素土壌拡散放出フラックス測定にはチャンバー法(Parkinson, 1981; Chiodini et al., 1998)が広く用いられる。これは、たらい状の容器を土壌にかぶせ、その中の二酸化炭素濃度変化率から土壌拡散放出量を求める方法である。チャンバー法で使用する二酸化炭素濃度計には早い応答(90%応答が数秒)が求められ、応答が遅い二酸化炭素計を使用すると拡散放出量を過小評価する恐れがある。そのため、二酸化炭素土壌拡散放出量測定では、外部からガスセルにガスを導入するタイプのNDIR方式の二酸化炭素計が用いられる(Chiodini et al., 1998)。一方で、応答の遅い二酸化炭素計でも、その応答特性を考慮して処理をすることで正確な拡散放出率を算出する方法が提案されている(溝口・大谷、2005)。一般的な硫化水素センサーは定電位電解式で、90%応答に20~30秒かかる。このようなセンサーで正確な硫化水素土壌拡散放出量を測定するには、応答特性を考慮した処理(溝口・大谷、2005)が必要となる。しかし、火山噴気地帯での拡散放出測定では、放出率が高いだけでなく、短時間での測定が求められるため、このような処理では困難な場合も考えられる。本研究では、二酸化炭素と硫化水素を同時に測定し、応答速度の速い二酸化炭素計で二酸化炭素拡散放出量を求め、二酸化炭素計と硫化水素計の出力から正確な二CO2/H2Sを求め、この値を組み合わせて硫化水素土壌拡散放出率を求める方法を評価した。
噴気地帯周辺での土壌拡散放出測定では、数百ppmを超える硫化水素濃度に達する場合があるため、1000ppmまで測定可能な硫化水素センサー(EC4-1000-H2S, SGX Sensortech社)をCO2 fluxmeter(Westsystems社、CO2計はLICOR社LI-820)に組み込んで使用した。短時間測定でも正確なCO2/H2S比を求めるため、硫化水素センサーの応答特性を加味した解析を行った。従来のチャンバー法で求めたCO2フラックスとCO2/H2S比を元に、硫化水素土壌拡散放出率を算出した。草津白根山殺生河原噴気地帯周辺でのテスト観測では、過小評価していると考えられる従来手法での硫化水素フラックス値に比べ、0~40%大きな値が得られた。発表では、硫化水素の土壌拡散放出測定についてまとめるとともに、草津白根山での試験観測データを複数の方法で解析し、比較することで、火山の噴気地帯周辺での硫化水素拡散放出率測定に適した手法について検討する。