日本地球惑星科学連合2025年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC36] 海域火山

2025年5月28日(水) 13:45 〜 15:15 104 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、藤田 英輔(防災科学技術研究所 火山防災研究部門)、前野 深(東京大学地震研究所)、小野 重明(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:田村 芳彦(海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、前野 深(東京大学地震研究所)

14:15 〜 14:30

[SVC36-03] 近年の伊豆・小笠原諸島の海底火山活動を起因とする津波のレビュー

★招待講演

*三反畑 修1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:火山性津波、非地震性津波、海底火山、津波、スミスカルデラ、孀婦海山

近年,海域での火山活動に起因する津波のリスクへの注目が高まっている.日本南方の伊豆・小笠原島弧には多数の海底火山が存在し,近年観測された特異な火山性津波の発生源となってきた.本講演では,この海域における近年の火山性津波の最新の研究成果を紹介し,今後の展望について述べる.

スミスカルデラでは,約10年ごとに最大波高60 cm程度の津波(「鳥島近海津波」と知られてきた)が,非ダブルカップル地震 (M < 6) を伴って観測されてきた (Satake & Kanamori, 1991; Fukao et al., 2018).Sandanbata et al. (2022) は2015年の津波と地震データを分析した結果,この津波が「トラップドア隆起」あるいは「トラップドア断層破壊」と呼ばれる海底カルデラの急速な非対称的な隆起現象により発生したと結論付けた.同様のメカニズムによるとみられる津波は,同島弧上の北硫黄島カルデラ (Sandanbata & Saito, 2024a, 2024b) やニュージーランド北方ケルマディック島弧のカーティスカルデラ (Sandanbata et al., 2023) でも報告事例があり,火山活動の一形態としての普遍性が示唆されてきた.さらに,津波データを用いた力学モデル解析により,カルデラ下のマグマ過圧を定量化する試みがなされ,遠隔での海底カルデラのマグマ蓄積評価に活用できる可能性が示されている (Sandanbata & Saito, 2024a).

2023年10月には,伊豆・小笠原諸島および日本南西部で海底火山活動に起因すると考えられる津波が観測された.津波が観測される前に,孀婦(そうふ)海山付近で小中規模の群発地震 (mb 4–5) が発生したが,それに伴って最大波高70 cmの津波が観測された.津波データ解析の結果,14回の繰り返し震源イベントが約1.5時間にわたり連続的に津波を発生させ,通常の地震規模に比べて異常に大きな津波が生じたことが判明した (Sandanbata et al., 2024).その後の海底地形調査により,孀婦海山付近の海底カルデラが発見されるとともに,その周辺でごく最近に発生したと見られる海底噴火の痕跡が確認された (Fujiwara et al., 2024; Minami & Tani, 2024).また,更なる津波データの解析により,その発生源が海底カルデラ付近に集中していることが示された (Kubota et al., 2024).これらの繰り返し津波生成イベントは,mb 4–5の群発地震とともに強い海洋音響波(T波)を伴っており,震源が極めて浅い現象であったと考えられる (Takemura et al., 2024).これらの結果を総合すると,海底噴火,カルデラ変形,斜面崩壊などを伴うような繰り返し火山活動が津波を引き起こした可能性が高い.

上記の事例ように,火山性津波は大規模地震を伴わずに発生することが多く,従来の地震情報に基づく津波予測・予報システムの適用が困難である.一方で,2024年9月にスミスカルデラで過去のイベントに類似するMw 5.7の地震が発生し,最大70 cmの津波が観測されたケースでは,気象庁が過去の類似事例に基づき,地震発生6分後に津波注意報を発表することに成功している.地震規模は通常津波注意報・警報を出す規模ではなかったが,過去事例に基づく知見と備えが迅速かつ適切な対応につながったと言えるであろう.今後,過去の観測事例や理論,数値計算を通して火山性津波の特徴や発生メカニズムを調べることで,火山性津波の理解を進める必要がある.また,海底火山活動の監視体制の拡張・検知技術の開発を進めることも,海底火山学の科学的知見を広げるとともに,火山性津波のリスク評価精度の向上につながるであろう.

参考文献
Satake & Kanamori (1991). DOI:10.1029/91jb01903
Fukao et al. (2018). DOI:10.1126/sciadv.aao0219
Sandanbata et al. (2022). DOI:10.1029/2022jb024213
Sandanbata et al. (2023). DOI:10.1029/2022gl101086
Sandanbata & Saito (2024a). DOI:10.1029/2023jb027917
Sandanbata & Saito (2024b). DOI:10.1029/2024JB029755
Sandanbata et al. (2024). DOI:10.1029/2023gl106949
Fujiwara et al. (2024). DOI:10.1029/2024GL109766
Kubota et al. (2024). DOI:10.1029/2024gl108415
Minami & Tani (2024). DOI:10.1016/j.margeo.2024.107405
Takemura et al. (2024). DOI:10.1029/2024jb029746