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[SVC36-06] 2023年10月以降に鳥島近海,鳥島および南西諸島で発見された伊豆小笠原弧背弧リフト帯由来の漂流軽石の報告
キーワード:漂流軽石、伊豆小笠原弧、モニタリング
伊豆小笠原弧の海底火山の噴火により発生した軽石が給源から離れた南西諸島及び本島の太平洋沿岸で発見される事例が,近年多く報告されている(及川ほか,2023).これらの軽石の岩石学的特徴は,それらを噴出した海底火山の噴火についての情報を得る上で,重要な手がかりとなる.これらの軽石は,漂流軽石として海面上を漂い,しばしば噴出源から離れた地域の海岸で数か月後に発見されることがある.例えば,2021年に福徳岡ノ場噴火によって噴出した軽石は,南西諸島, タイ沿岸部に,それぞれ噴火から数か月後に到達していた(e.g., 及川ほか, 2023; Yoshida et al., 2022).このことは,伊豆小笠原弧の火山活動で噴出した漂流軽石が海流に乗って給源から離れた地域に,数か月程度の時間をかけて到達できることを示す.
本発表では,遠方からの伊豆小笠原弧の活動のモニタリングの例として,2023年10月以降に新たに発見された鳥島近海,鳥島,南西諸島に漂着した軽石および鳥島で発見された軽石の岩石学的解析による給源特定を実施した例を示す.2023年10月2〜8日に孀婦(そうふ)岩の西方約20kmの海底に位置する孀婦海山の周辺でM6を超える地震が4回発生した後,10月9日に顕著な地震を伴わない津波が発生した.その津波は孀婦海山の火山活動に関連されると推定された(Mizutani and Melgar, 2023;Sandanbata et al., 2024).実際,地震を挟む前後の海底地形の比較から,孀婦海山上に幅1.6km,深さ400メートルのカルデラ状の地形が形成されたことが明らかになっており,この地形は10月9日に形成されたと推定されている(Minami and Tani, 2024).しかしながらこの時期に,孀婦海山上および周辺の海面上では,噴煙活動や衛星などで確認できるようなサイズの軽石ラフトなど,噴火活動の痕跡は確認されていない.一方,2023年10月27日に孀婦海山の南南西およそ50㎞の海上で気象庁啓風丸によって,海面上に浮遊する軽石が採取され,その軽石は化学組成の特徴から,孀婦海山が位置する伊豆マリアナ弧の背弧側の火山活動によって生産されたことが明らかとなっている.
その後,2023年11月に鳥島西側の初寝崎近くの港の海面上(11月11日採取)とアホウドリの巣の中(11月25日)から,啓風丸が採取したものと類似した軽石が本発表者の一人である富田によって採取された.鳥島の港には,長径5cm以下のサイズの軽石が,ラフトをつくるほどの密度ではないが,目に付くほどの量で浮遊していた.一方,南西諸島でも本発表者の一人である丸谷によって,類似の軽石の漂着が確認された.沖縄本島で継続的に観察しているため,本島の記録が中心となるが,2024年6月2日に中城村吉の浦海岸で確認された後,9月まで国頭村,北中城村,中城村などの沖縄本島東側の海岸で漂着が確認された.漂着は,6月初旬に確認された後,7月には確認されず,8月以降たくさん確認できるようになり,9月まで新たな漂着が続いた.軽石の漂着密度は浜の200 mほどの区間内に5つ程,最大のものは長径約20 cmで表面に冷却クラックと解釈される細かいクラックが入ったものも採取された.また,同様の軽石は沖縄県内の南西諸島に広く漂着したようで,2024年9月に西表島および石垣島でも確認された.
鳥島と南西諸島で今回採取されたこれらの軽石について,国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センターにて,XRFとICP質量分析(ICP-MS)により全岩主要元素組成および微量元素組成分析を実施した.その結果,全岩主要元素組成は,SiO2 62–74 wt.%, K2O+Na2Oが5.8–6.6 wt.%の範囲を示す,デイサイトから流紋岩の化学組成範囲を示した.一方で,全岩微量元素組成は,Ba/Laが19程度,La/Smが1.6–1.9程度であり,2023年10月に気象庁啓風丸が採取した軽石と類似した伊豆小笠原弧背弧リフト帯由来の軽石と同様の特徴を示した.したがって,鳥島と南西諸島で採取された軽石は,いずれも背弧リフト帯に由来すると考えられる.軽石が採取されたそれぞれの場所では,今回採取された軽石と同じ特徴をもつ軽石は,以前は確認されていない.そのため,今回採取された軽石は新たに伊豆小笠原弧背弧リフト帯で発生した噴火活動によって生産された軽石と考えられ,2023年10月の孀婦海山周辺を起源とする津波発生と地形変化に関連したイベントによってこれらの軽石がもたらされた可能性が高い.
今回の例は,先行研究で海上の軽石が観測された例とは異なり,海面上に顕著な火山活動の痕跡が表れなかったにも関わらず,沖縄県内の南西諸島の海岸に漂着が確認できた.すなわち,沖縄県内の海岸で通常と異なる記載岩石学的特徴をもつ軽石の漂着をモニタリングすることで,海面上に顕著な火山活動が確認できないような伊豆小笠原弧の海底噴火が捉えられる可能性が示されたといえよう.
本発表では,遠方からの伊豆小笠原弧の活動のモニタリングの例として,2023年10月以降に新たに発見された鳥島近海,鳥島,南西諸島に漂着した軽石および鳥島で発見された軽石の岩石学的解析による給源特定を実施した例を示す.2023年10月2〜8日に孀婦(そうふ)岩の西方約20kmの海底に位置する孀婦海山の周辺でM6を超える地震が4回発生した後,10月9日に顕著な地震を伴わない津波が発生した.その津波は孀婦海山の火山活動に関連されると推定された(Mizutani and Melgar, 2023;Sandanbata et al., 2024).実際,地震を挟む前後の海底地形の比較から,孀婦海山上に幅1.6km,深さ400メートルのカルデラ状の地形が形成されたことが明らかになっており,この地形は10月9日に形成されたと推定されている(Minami and Tani, 2024).しかしながらこの時期に,孀婦海山上および周辺の海面上では,噴煙活動や衛星などで確認できるようなサイズの軽石ラフトなど,噴火活動の痕跡は確認されていない.一方,2023年10月27日に孀婦海山の南南西およそ50㎞の海上で気象庁啓風丸によって,海面上に浮遊する軽石が採取され,その軽石は化学組成の特徴から,孀婦海山が位置する伊豆マリアナ弧の背弧側の火山活動によって生産されたことが明らかとなっている.
その後,2023年11月に鳥島西側の初寝崎近くの港の海面上(11月11日採取)とアホウドリの巣の中(11月25日)から,啓風丸が採取したものと類似した軽石が本発表者の一人である富田によって採取された.鳥島の港には,長径5cm以下のサイズの軽石が,ラフトをつくるほどの密度ではないが,目に付くほどの量で浮遊していた.一方,南西諸島でも本発表者の一人である丸谷によって,類似の軽石の漂着が確認された.沖縄本島で継続的に観察しているため,本島の記録が中心となるが,2024年6月2日に中城村吉の浦海岸で確認された後,9月まで国頭村,北中城村,中城村などの沖縄本島東側の海岸で漂着が確認された.漂着は,6月初旬に確認された後,7月には確認されず,8月以降たくさん確認できるようになり,9月まで新たな漂着が続いた.軽石の漂着密度は浜の200 mほどの区間内に5つ程,最大のものは長径約20 cmで表面に冷却クラックと解釈される細かいクラックが入ったものも採取された.また,同様の軽石は沖縄県内の南西諸島に広く漂着したようで,2024年9月に西表島および石垣島でも確認された.
鳥島と南西諸島で今回採取されたこれらの軽石について,国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センターにて,XRFとICP質量分析(ICP-MS)により全岩主要元素組成および微量元素組成分析を実施した.その結果,全岩主要元素組成は,SiO2 62–74 wt.%, K2O+Na2Oが5.8–6.6 wt.%の範囲を示す,デイサイトから流紋岩の化学組成範囲を示した.一方で,全岩微量元素組成は,Ba/Laが19程度,La/Smが1.6–1.9程度であり,2023年10月に気象庁啓風丸が採取した軽石と類似した伊豆小笠原弧背弧リフト帯由来の軽石と同様の特徴を示した.したがって,鳥島と南西諸島で採取された軽石は,いずれも背弧リフト帯に由来すると考えられる.軽石が採取されたそれぞれの場所では,今回採取された軽石と同じ特徴をもつ軽石は,以前は確認されていない.そのため,今回採取された軽石は新たに伊豆小笠原弧背弧リフト帯で発生した噴火活動によって生産された軽石と考えられ,2023年10月の孀婦海山周辺を起源とする津波発生と地形変化に関連したイベントによってこれらの軽石がもたらされた可能性が高い.
今回の例は,先行研究で海上の軽石が観測された例とは異なり,海面上に顕著な火山活動の痕跡が表れなかったにも関わらず,沖縄県内の南西諸島の海岸に漂着が確認できた.すなわち,沖縄県内の海岸で通常と異なる記載岩石学的特徴をもつ軽石の漂着をモニタリングすることで,海面上に顕著な火山活動が確認できないような伊豆小笠原弧の海底噴火が捉えられる可能性が示されたといえよう.