15:45 〜 16:00
[SVC36-08] 伊豆小笠原弧の地殻構造の新たな解釈
★招待講演
キーワード:伊豆小笠原弧、小笠原諸島、地震波速度構造、大陸形成
小笠原諸島を含む伊豆小笠原弧は、プレート沈み込みの開始から大陸地殻の成長・集積を経て大陸が形成される過程を包括的に観察できる、世界で唯一の地域である。本発表では、地形・地質の観点から小笠原諸島の世界遺産としての価値を再評価するため、科学的根拠を提示することを目的とした環境研究総合推進費によるプロジェクト「小笠原諸島西之島における大陸地殻の形成過程:プレート沈み込みの開始から衝突帯における大陸生成までのシナリオ」(研究代表者:田村芳彦)を紹介し、主に地震学的構造の観点から伊豆小笠原弧の地殻構造に関するレビューを行う。
海洋研究開発機構では、1990年代から2000年代にかけて、海底地震計を用いた地殻構造探査を伊豆小笠原弧の火山フロントおよび小笠原海嶺で実施し、総延長1,000 kmを超える測線において海底下の地震波速度(P波速度)構造を明らかにした。その結果、火山フロント全体にわたって安山岩質の中部地殻が分布し、特に玄武岩マグマを噴出する活火山(三宅島や八丈島など)の直下で中部地殻が厚くなる傾向が示された(IBr1測線:Kodaira et al., 2007a, JGR; IBr3測線:Kodaira et al., 2007b, Geology)。さらに、伊豆弧では玄武岩質火山島の間に流紋岩質の海底カルデラが存在し(黒瀬海穴や明神海丘など)、海底カルデラ直下では中部地殻が薄くなっている。これは、玄武岩マグマの潜熱により中部地殻が部分融解して流紋岩マグマを生成していると結論された (Tamura et al., 2009, J Petrology)。
2013年以降、西之島において火山活動が活発化した。Tamura et al. (2016, Sci Rep)は、噴出されたマグマの組成に基づき、安山岩質の中部地殻はマントルが浅部で溶融した場合に生成されるという仮説を提示した。この岩石学的研究を背景に、Kodaira et al. (2007a, 2007b)の地震波速度構造を再解析したところ、火山フロント下の中部地殻と下部地殻の関係について、以下の2点が明らかとなった(図)。下部地殻(P波速度6.8-7.6km/sの領域)の厚さは、地殻全体の厚さとともに増大するが、中部地殻(P波速度6.0-6.8km/sの領域)は厚さ18kmを上限として、それ以上は成長しない。下部地殻が薄い場合、中部地殻と下部地殻の厚さは正の相関を示すが、下部地殻が13kmを超えると下部地殻の成長に伴い中部地殻の厚さが減少する。 1の結果は、下部地殻を構成する玄武岩質マグマは、マントルが溶融する領域が深く、すでに存在する地殻の厚さに関わらず安定的に供給される一方、安山岩質マグマは溶融するマントルの深度(圧力)がある閾値を超えると生成されなくなることを示しており、Tamura et al. (2016)の仮説を支持する。2の結果は、玄武岩質マグマの潜熱によって中部地殻が溶融・分化することを示唆している(Tamura et al., 2009)。
本発表では、これらの成果をもとに、伊豆小笠原弧における大陸地殻の成長過程を再評価するとともに、小笠原諸島の地質学的価値についても議論する。
海洋研究開発機構では、1990年代から2000年代にかけて、海底地震計を用いた地殻構造探査を伊豆小笠原弧の火山フロントおよび小笠原海嶺で実施し、総延長1,000 kmを超える測線において海底下の地震波速度(P波速度)構造を明らかにした。その結果、火山フロント全体にわたって安山岩質の中部地殻が分布し、特に玄武岩マグマを噴出する活火山(三宅島や八丈島など)の直下で中部地殻が厚くなる傾向が示された(IBr1測線:Kodaira et al., 2007a, JGR; IBr3測線:Kodaira et al., 2007b, Geology)。さらに、伊豆弧では玄武岩質火山島の間に流紋岩質の海底カルデラが存在し(黒瀬海穴や明神海丘など)、海底カルデラ直下では中部地殻が薄くなっている。これは、玄武岩マグマの潜熱により中部地殻が部分融解して流紋岩マグマを生成していると結論された (Tamura et al., 2009, J Petrology)。
2013年以降、西之島において火山活動が活発化した。Tamura et al. (2016, Sci Rep)は、噴出されたマグマの組成に基づき、安山岩質の中部地殻はマントルが浅部で溶融した場合に生成されるという仮説を提示した。この岩石学的研究を背景に、Kodaira et al. (2007a, 2007b)の地震波速度構造を再解析したところ、火山フロント下の中部地殻と下部地殻の関係について、以下の2点が明らかとなった(図)。下部地殻(P波速度6.8-7.6km/sの領域)の厚さは、地殻全体の厚さとともに増大するが、中部地殻(P波速度6.0-6.8km/sの領域)は厚さ18kmを上限として、それ以上は成長しない。下部地殻が薄い場合、中部地殻と下部地殻の厚さは正の相関を示すが、下部地殻が13kmを超えると下部地殻の成長に伴い中部地殻の厚さが減少する。 1の結果は、下部地殻を構成する玄武岩質マグマは、マントルが溶融する領域が深く、すでに存在する地殻の厚さに関わらず安定的に供給される一方、安山岩質マグマは溶融するマントルの深度(圧力)がある閾値を超えると生成されなくなることを示しており、Tamura et al. (2016)の仮説を支持する。2の結果は、玄武岩質マグマの潜熱によって中部地殻が溶融・分化することを示唆している(Tamura et al., 2009)。
本発表では、これらの成果をもとに、伊豆小笠原弧における大陸地殻の成長過程を再評価するとともに、小笠原諸島の地質学的価値についても議論する。