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[SVC36-P02] 福徳岡ノ場火山の深部マグマ供給系:メルト包有物からの制約
★招待講演

キーワード:福徳岡ノ場、メルト包有物、マグマ供給系、アルカリ岩
福徳岡ノ場 (FOB) は, 伊豆-小笠原-マリアナ弧の海底火山のひとつである. この火山は, 2021年8月13日の最新の爆発的噴火で~0.1 km³ (Maeno et al., 2022) のマグマを噴出した. 主な噴出物は, 斑晶をほとんど含まない灰色のトラカイト質軽石であり, 斑晶に富むダークエンクレーブを含む. ダークエンクレーブ中の斑晶は2つのグループに分類される. Group-Aの鉱物は化学組成が均質で, より分化の進んだ組成を示すが, Group-Bの鉱物は組成ゾーニングしており, コアでより未分化な組成を示す. 主要なトラカイト質マグマとGroup-Aの鉱物が貯蔵されていたマグマだまりAの深さは, 3±1 kmであることが先行研究で見積もられた. 一方で Group-Bの鉱物の起源や深度については不明な点が多く, これらの鉱物からFOB地下の深部マグマ供給系に関する情報を得られる可能性がある. 本研究では, FOBの深部マグマ供給系について検討するため, FOB2021年軽石に含まれるGroup-B鉱物とそのメルト包有物 (MI) の組織観察と化学分析を行った.
本研究では, 三宅島の沖原海岸で採取された漂着軽石を研究試料に用いた. 軽石を砕いて集めたダークエンクレーブから岩石薄片を作成し, 静岡大学のFE-SEMで後方散乱電子像 (BSE) 像の撮影と元素濃度マッピングを, 東京大学地震研究所のEPMAで鉱物, MIの化学分析をそれぞれ行った.
Group-B鉱物は主にMg# [=100Mg/ (Mg+Fe) ] ~63-93の単斜輝石 (CPX) から構成され, 少量のMg#~82-90のオリビン, ごく少量の斜長石からなる. これらの鉱物には, リムに組成ゾーニングが見られる. CPX, オリビンのMIは, その化学組成から3つのグループに分けられる. Group-B1のMIはCPXに包有され, SiO2~50-65wt%, CaO~7-2wt%のアルカリ岩組成を示す. Group-B2のMIもCPXに包有されるが, SiO2~50-61wt%, CaO~10-6wt%の非アルカリ岩組成を示す. Group-B3のMIはオリビンに包有され, SiO2~49-50wt%, CaO~15-19wt% の非アルカリ岩組成を示す. これにGroup-Aのトラカイトマグマを加えると, FOBの地下にはアルカリ岩マグマ (A, B1) と非アルカリ岩マグマ (B2, B3) の4つの独立したマグマだまりが存在すると考えられる. Group-B1とB3のメルトの平衡温度と含水量を見積もった結果, それぞれ~1010°C, ~7.2 wt% および~982°C, ~7.1 wt%であった. 地殻密度を2750 kg/m³と仮定すると, 見積もられた含水量から求めたH2O飽和圧力と深度はそれぞれ, B1で~168 MPa (~6.2 km)、B3で~488 MPa (~18 km) に相当する. B2マグマ溜まりの深さは, MIの産状と硫黄含有量, ホスト鉱物の組成を考慮すると, B1とB3の中間に位置すると推定される. B1およびB3のマグマ溜まりの深さは, それぞれ上部地殻-中部地殻境界 (~6-10 km) および中部地殻-下部地殻境界 (~18 km) と一致しており, マグマ溜まりの深さが地殻の密度構造によってコントロールされていることを示唆する.
Group-Bマグマの成因関係を検討するため, Group-B3のメルトまたは隣接した南硫黄島で噴出したベイサナイト質メルトを親マグマと仮定して, MELTSを用いた分別結晶作用のシミュレーションを行った. その結果, Group-B3メルトからB1およびB2メルトを形成することは困難である一方で, 南硫黄島のベイサナイトの結晶分化によってB1メルトの化学組成を概ね再現できた. この結果は, グループB1メルトは南硫黄島のベイサナイトマグマと成因的に関連することを示唆する.
2021年FOB噴火の噴火準備過程は, 以下のように考えられる. 1904年の噴火以前に, 南硫黄島火山からベイサナイトマグマが供給され, B1, Aマグマ溜まりが形成された. 2021年の噴火直前には, 4つのマグマ溜まりを通じてマグマや流体の供給が行われたと考えられるが, B2およびB3のマグマ溜まりが形成された時期は不明である. このマグマまたは流体の侵入が, Aマグマ溜まりの部分的な酸化 (Yoshida et al., 2023) と過剰圧を引き起こし, 2021年の噴火のトリガーとなった可能性がある.
本研究では, 三宅島の沖原海岸で採取された漂着軽石を研究試料に用いた. 軽石を砕いて集めたダークエンクレーブから岩石薄片を作成し, 静岡大学のFE-SEMで後方散乱電子像 (BSE) 像の撮影と元素濃度マッピングを, 東京大学地震研究所のEPMAで鉱物, MIの化学分析をそれぞれ行った.
Group-B鉱物は主にMg# [=100Mg/ (Mg+Fe) ] ~63-93の単斜輝石 (CPX) から構成され, 少量のMg#~82-90のオリビン, ごく少量の斜長石からなる. これらの鉱物には, リムに組成ゾーニングが見られる. CPX, オリビンのMIは, その化学組成から3つのグループに分けられる. Group-B1のMIはCPXに包有され, SiO2~50-65wt%, CaO~7-2wt%のアルカリ岩組成を示す. Group-B2のMIもCPXに包有されるが, SiO2~50-61wt%, CaO~10-6wt%の非アルカリ岩組成を示す. Group-B3のMIはオリビンに包有され, SiO2~49-50wt%, CaO~15-19wt% の非アルカリ岩組成を示す. これにGroup-Aのトラカイトマグマを加えると, FOBの地下にはアルカリ岩マグマ (A, B1) と非アルカリ岩マグマ (B2, B3) の4つの独立したマグマだまりが存在すると考えられる. Group-B1とB3のメルトの平衡温度と含水量を見積もった結果, それぞれ~1010°C, ~7.2 wt% および~982°C, ~7.1 wt%であった. 地殻密度を2750 kg/m³と仮定すると, 見積もられた含水量から求めたH2O飽和圧力と深度はそれぞれ, B1で~168 MPa (~6.2 km)、B3で~488 MPa (~18 km) に相当する. B2マグマ溜まりの深さは, MIの産状と硫黄含有量, ホスト鉱物の組成を考慮すると, B1とB3の中間に位置すると推定される. B1およびB3のマグマ溜まりの深さは, それぞれ上部地殻-中部地殻境界 (~6-10 km) および中部地殻-下部地殻境界 (~18 km) と一致しており, マグマ溜まりの深さが地殻の密度構造によってコントロールされていることを示唆する.
Group-Bマグマの成因関係を検討するため, Group-B3のメルトまたは隣接した南硫黄島で噴出したベイサナイト質メルトを親マグマと仮定して, MELTSを用いた分別結晶作用のシミュレーションを行った. その結果, Group-B3メルトからB1およびB2メルトを形成することは困難である一方で, 南硫黄島のベイサナイトの結晶分化によってB1メルトの化学組成を概ね再現できた. この結果は, グループB1メルトは南硫黄島のベイサナイトマグマと成因的に関連することを示唆する.
2021年FOB噴火の噴火準備過程は, 以下のように考えられる. 1904年の噴火以前に, 南硫黄島火山からベイサナイトマグマが供給され, B1, Aマグマ溜まりが形成された. 2021年の噴火直前には, 4つのマグマ溜まりを通じてマグマや流体の供給が行われたと考えられるが, B2およびB3のマグマ溜まりが形成された時期は不明である. このマグマまたは流体の侵入が, Aマグマ溜まりの部分的な酸化 (Yoshida et al., 2023) と過剰圧を引き起こし, 2021年の噴火のトリガーとなった可能性がある.