日本地球惑星科学連合2025年大会

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[U-05] 気候変動と再生可能エネルギー利用の課題

2025年5月28日(水) 09:00 〜 10:30 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柳澤 教雄(産業技術総合研究所 地質情報基盤センター アーカイブ室)、卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、塩竈 秀夫(国立環境研究所地球システム領域)、座長:卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、小口 千明(埼玉大学大学院理工学研究科)

10:10 〜 10:30

[U05-04] 地熱利用の現状と課題

★招待講演

*柳澤 教雄1 (1.産業技術総合研究所 地質情報基盤センター アーカイブ室)

キーワード:地熱発電、ニュージーランド、火山、温泉

1.はじめに
 再生可能エネルギーとして地熱エネルギーの利用する場合、特に発電に利用する場合、日照や風力などの気象条件に左右されず、年間通して安定した出力が期待できる。また、温室効果ガスの排出が極めて少ない。そのため、ベースロード電源として火山国を中心に開発が進められている。
2.地熱発電開発のこれまでの経緯
日本では1970年代のオイルショックを契機に急速に調査・開発が進められ、1990年代には5年間で発電量が倍増した。しかし、それ以後発電量は増加してこなかった。国の予算の減少、国立公園内での開発規制、温泉との共生が困難、多大な開発投資を要するなどの課題により新規の開発が停滞していた。
2011年の東日本大震災に伴う原発事故以後、地熱発電促進のための政策がとられてきた。例えば、FIT(固定価格買い取り制度)の導入とともに、阻害要因となっていた国立公園内での調査・開発の規制緩和、環境アセスメント期間の短縮などである。同時に、将来技術としてのEGSや超臨界地熱の研究も実施されている。
3.震災以後の地熱発電の進捗と課題
さて、2011年以後の日本の地熱発電の進捗であるが、45MW程度の地熱発電所は秋田県山葵沢地域のみで、4.5MW以上の地熱発電所の開設は6か所である。地熱発電設備の新設は100か所以上あるが、多くは温泉排熱を利用した小規模バイナリー発電所である。
小規模バイナリー発電の開発のメリットとして、温泉排熱の利用で温泉の生産に影響を与えないので温泉所有者の理解が得やすい、リードタイムが短い、FIT価格が高いといったことである。しかしながらバイナリー発電による設備容量の増加は50MW程度である。さらに、1990年代までに運転開始した地熱発電所においても東北地方の発電所を中心に出力が減衰しており、今後再エネとしての地熱発電量の増加のためには、大規模な発電所の新規建設や、既存の地熱発電所の出力回復が必要である。
4.日本とニュージーランドの比較
 日本の地熱資源ポテンシャルは活火山の数を基にして、約23,500MWと評価されており、アメリカ、インドネシアについで世界第3位である。しかしながら、現在の日本の地熱発電の設備容量は約550MWで10位となっている。2000~2011年ごろの地熱開発投資の停滞の影響を受けている形になり、また先述の国立公園内の開発規制、温泉との共生の問題の影響もあるが、テクトニクスの問題も考えられる。そこで、日本と同様に火山国の島国であり、面積も緯度も近いニュージーランドと比較してみたい。
 ニュージーランドの地熱発電ポテンシャルは約3,650MWで世界8位であるが、現在の地熱発電所の設備容量は約1,064MWで日本の2倍程度で世界6位である。また、ニュージーランドの地熱発電所のタービンのサイズは大きく、例えばナ・アワ・プルア地熱発電所では約139MWと世界最大の地熱タービンがあり、カエラウにも約96MWのタービンがある。日本では、八丁原地熱発電所の55MWが最大である。1地点当たりの地熱発電量もニュージーランドの方が相対的に大きくなっており、生産も安定している。その理由としては、ニュージーランドの多くの地熱発電所があるタウポ火山帯がタウポリフトにあたるため、約1km付近の比較的浅い深度に約300℃の地熱流体が中生界の上位に重なる第四紀火山岩-堆積岩よりなる多孔質帯水層に賦存している。そのことにより、大規模な地熱発電所が開発しやすい状況にあると考えられる。また、現地の地形が比較的平坦であることも開発を促進しており、主要な地熱発電所が山間部にあり、降雪などで開発期間が限られる日本とは対象的である。
 そのほか社会的にも日本より地熱開発がしやすい状況にある。例えばカエラウで約100MWの発電プラントが計画から5年程度と日本の半分くらいの期間で運転開始できるような規制の緩和、地方自治体による環境モニタリングの徹底、先住民であるマオリ文化との共生、地熱発電を実施する主要な2社の電力会社の開発地域が入り組んでいること、さらに電力会社など地熱開発の関連企業と、学術・研究組織であるオークランド大学やGNSサイエンスとの連携がうまくいってることなどがあげられる。
5.おわりに
 日本は地熱ポテンシャルに比較して地熱発電量が少なく、開発に向けて課題は多く、また諸外国に比べ開発に不利な状況はある。しかしながら有望地域のポテンシャル調査は急速に進んでおり、発電タービンなど世界のトップシェアを占める技術を有しており、今後の地熱発電利用の促進が期待される。