日本地球惑星科学連合2025年大会

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[U-05] 気候変動と再生可能エネルギー利用の課題

2025年5月28日(水) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 7・8ホール)

コンビーナ:柳澤 教雄(産業技術総合研究所 地質情報基盤センター アーカイブ室)、卜部 厚志(新潟大学災害・復興科学研究所)、石峯 康浩(山梨県富士山科学研究所)、塩竈 秀夫(国立環境研究所地球システム領域)、座長:塩竈 秀夫(国立環境研究所地球システム領域)、柳澤 教雄(産業技術総合研究所 地質情報基盤センター アーカイブ室)、宮地 良典(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

10:45 〜 11:10

[U05-05] ダーク・ドルドラムズ(エネルギー干ばつ):日本における変動性再エネの低出力事象の影響とその将来変化

★招待講演

*大庭 雅道1 (1.電力中央研究所)

キーワード:気候変動、変動性再生可能エネルギー、ダーク・ドルドラムズ、エネルギー干ばつ、機械学習

風力発電や太陽光発電などの変動性再生可能エネルギー(VRE)は、発電時に二酸化炭素を排出しないため、地球温暖化対策に大きく貢献する。一方、「無光・無風」の期間が数日続く、いわゆる「ダーク・ドルドラムズ(Dunkelfaute)=エネルギー干ばつ」は、VREの普及率が高い場合、電力需要と供給がアンバランスになることでエネルギー供給が長期間途絶えるリスクにつながる。わが国においては、現状ダーク・ドルドラムズから問題が生じるほどVREの導入量は多くないものの、2050年カーボンニュートラル達成と電力安定供給の両立に向けて、ダーク・ドルドラムズの詳細な発生時期や要因について明らかにする必要がある。そこで本研究では、歴史的に再構築された長期のVRE発電出力量と電力需要を用いて、日本におけるダーク・ドルドラムズや極端高残余需要事象(ExRL; 需要からVRE出力を差し引いた量)の気候学的・気象学的な発生の特徴とその要因を明らかにする。また、大規模アンサンブル気候予測データd4PDFを活用し、気候変動が日本におけるこれらの現象の発生に与える影響を評価した。
ダーク・ドルドラムズとは,曇天日と弱風日が数日にわたり継続する事象のことで,その間のPVや風力発電量が十分に得られない。東北地方を対象とした解析結果から,例えば3日間継続する無光無風は年に数回程度は発生し,初夏から秋にかけて頻出する傾向が見られた。この地域でのダーク・ドルドラムズが引き起こされる要因は,梅雨・秋雨前線の停滞である。前線の影響により東北地方広域が雲に覆われてPV発電量が現象するだけでなく,風力発電所が日本海側に偏在している影響のため,前線に向かって吹く北東気流を効果的に発電することができない。将来変化に関しては、ダーク・ドルドラムズの発生頻度が気候変動影響下において、増加する傾向が見られた。また、電力需要に関しても、気温上昇とともに増加していく傾向が見られ、未曾有の長期のExRLが発生する可能性が示唆された。再エネが主力電源化した際,無光無風期間の電力需要を賄う電源が必要となるが,本事象は数日に渡ることを考えると,電力需給の週間計画の重要性が増すであろう。
加えて、簡易なVRE導入量の将来目標シナリオ3つを用いて、VRE設備容量の変化が気象・気候との関係性に与え得る影響も調査した。その結果、現在のVRE導入レベルでは、ExRLは冬季に見られるが、VREの導入量増加により、冬季と夏季の差は縮まることがわかった。一方で、日・週スケールでのExRLの変動性は増加する。ExRLに関連した冬の気象パターン(WP)を分析するために、大気再解析データから得られた過去の大気循環場に自己組織化マップを適用した。VREの導入レベルが低い(現在)条件下では、ExRLは、西高東低によるコールドサージ型のWPと関連していることがわかった。しかし、VRE導入レベルの高い将来条件下では、ExRLの発生要因が南岸低気圧型のWPへと変化していく結果を示した。一方、ExRLの発生頻度には大きな年々変動があり、現在は冬季モンスーンに関連した気候変動と強く関連しているが、この関係はVRE導入量の増加とともに大きく弱まる。これは、VRE発電出力量と電力需要の関係に対するWP依存性に起因するものであることが示された。将来の条件下で電力の安定供給を維持するためには、電力需給の気象・気候条件への依存性を理解・考慮して電力システム設計・VRE配置を行うことが重要である。

参考文献
Ohba, M., Y. Kanno, S. Bando, 2023: Effects of meteorological and climatological factors on extremely high residual load and possible future changes, Renewable and Sustainable Energy Reviews, 175, 113188. doi:10.1016/j.rser.2023.113188.
Ohba, M., Y. Kanno, and D. Nohara, 2022: Climatology of Dark Doldrums in Japan, Renewable and Sustainable Energy Reviews, 155, 111927. doi:10.1016/j.rser.2021.111927.