14:15 〜 14:35
[U11-02] 地震およびそれに続く豪雨により能登半島の異なる地質条件下で発生した斜面変動の要因
★招待講演
キーワード:斜面変動、地震後豪雨、連鎖複合災害、岩盤風化、地質構造免震
本発表では,能登半島における2024年の地震およびそれに続く豪雨による斜面変動の応用地質学的な分析の結果を報告する.それぞれの誘因による斜面変動の発生形態や空間密度は,地形および地質条件に依存して明瞭な差異をもち,斜面地盤の構造およびそれに制御された斜面水文特性が,斜面変動における多様性発現の要因となっているものと推察された.能登半島において主たる斜面変動の場となった代表的な地質条件は,火砕岩,珪質泥岩,砂質・泥質岩互層である.これらの岩石を基盤とする地域を対象とした地形・地質踏査と水文観測,斜面構成物の物理化学的な分析,および地理空間情報解析に基づき,斜面変動発生の機構と過程を考察した.
火砕岩の分布域では,地震時に起伏の大きな山塊の高標高部で,土層と強風化岩が山稜付近から浅く滑落する崩壊が多数生じ,崩土は土石流化して河谷を長距離流下した.その8か月後の豪雨時には,新たな表層崩壊の発生と既存崩壊地の拡大および河道に堆積した土砂の再移動により,多量の土砂と流木が低地に流出した.この火砕岩は,未風化部が緻密で硬質である一方,基質ガラス部の水和と粘土化により,風化に伴って湿潤強度が著しく低下するという特性を持つ.風化帯内での地震動に対する挙動のコントラストや水理的性質の鉛直分布が,地震時および地震後豪雨での斜面変動の様相に強く影響したものと推察される.
珪質泥岩分布域の地震時斜面変動は,層理に対して急勾配の受け盤斜面では,ごく浅い表土層の崩落が大多数であったのに対し,相対的に緩勾配な流れ盤斜面では,深い地すべり性の崩壊が多発するという対照的な様相となった.崩落した強風化部は,無数の開口亀裂を有し,溶脱と酸化により黄白色ないし赤褐色を呈するのに対し,その下位には,黄鉄鉱を含有する暗灰色の堅牢な弱風化岩が存在し,それがしばしば深い崩壊地のすべり面に露出している.こうした状況から,水岩石反応に伴う硫酸生成による鉱物溶解と元素溶脱および膨潤・乾縮と鉄酸化物の沈着が相互作用して,岩石の破砕と強度低下がもたらされ,斜面変動の要因となったことが示唆される.地震と豪雨による崩壊インベントリの比較では,地震動に伴う風化帯構造の破壊による岩盤強度の低下や排水性向上といった素因条件の変化が,斜面の崩壊感受性に正負の影響をもたらしたように推察される.
砂質・泥質岩互層の分布域では,地震時斜面崩壊は少なかったものの,地震後の豪雨による崩壊発生の空間密度が相対的に高くなるという現象がみられた.この地質では,風化時に砂質岩が塑性的な性質を持つようになるのに対し,泥質部は弾性をある程度保ち全体として脆性度の高い状態となる.このことから,それらの積層が一種の免震機能を発揮し,地表面での震動が抑制されるという地質構造免震仮説が考案された.地震動のエネルギーは,斜面崩壊を発生させるに至らなかった場合であっても風化帯の構造を破壊し,新たな亀裂形成を通して,降水浸透による間隙水圧上昇の余地を増大させたものとみられ,それが地震後豪雨による斜面崩壊の多発に作用した可能性が推察された.
火砕岩の分布域では,地震時に起伏の大きな山塊の高標高部で,土層と強風化岩が山稜付近から浅く滑落する崩壊が多数生じ,崩土は土石流化して河谷を長距離流下した.その8か月後の豪雨時には,新たな表層崩壊の発生と既存崩壊地の拡大および河道に堆積した土砂の再移動により,多量の土砂と流木が低地に流出した.この火砕岩は,未風化部が緻密で硬質である一方,基質ガラス部の水和と粘土化により,風化に伴って湿潤強度が著しく低下するという特性を持つ.風化帯内での地震動に対する挙動のコントラストや水理的性質の鉛直分布が,地震時および地震後豪雨での斜面変動の様相に強く影響したものと推察される.
珪質泥岩分布域の地震時斜面変動は,層理に対して急勾配の受け盤斜面では,ごく浅い表土層の崩落が大多数であったのに対し,相対的に緩勾配な流れ盤斜面では,深い地すべり性の崩壊が多発するという対照的な様相となった.崩落した強風化部は,無数の開口亀裂を有し,溶脱と酸化により黄白色ないし赤褐色を呈するのに対し,その下位には,黄鉄鉱を含有する暗灰色の堅牢な弱風化岩が存在し,それがしばしば深い崩壊地のすべり面に露出している.こうした状況から,水岩石反応に伴う硫酸生成による鉱物溶解と元素溶脱および膨潤・乾縮と鉄酸化物の沈着が相互作用して,岩石の破砕と強度低下がもたらされ,斜面変動の要因となったことが示唆される.地震と豪雨による崩壊インベントリの比較では,地震動に伴う風化帯構造の破壊による岩盤強度の低下や排水性向上といった素因条件の変化が,斜面の崩壊感受性に正負の影響をもたらしたように推察される.
砂質・泥質岩互層の分布域では,地震時斜面崩壊は少なかったものの,地震後の豪雨による崩壊発生の空間密度が相対的に高くなるという現象がみられた.この地質では,風化時に砂質岩が塑性的な性質を持つようになるのに対し,泥質部は弾性をある程度保ち全体として脆性度の高い状態となる.このことから,それらの積層が一種の免震機能を発揮し,地表面での震動が抑制されるという地質構造免震仮説が考案された.地震動のエネルギーは,斜面崩壊を発生させるに至らなかった場合であっても風化帯の構造を破壊し,新たな亀裂形成を通して,降水浸透による間隙水圧上昇の余地を増大させたものとみられ,それが地震後豪雨による斜面崩壊の多発に作用した可能性が推察された.