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[U12-P04] 初期地球・火星大気への太陽高エネルギー粒子照射によるペプチド形成過程における含硫アミノ酸の影響評価

キーワード:初期地球、初期火星、生命の起源、アミノ酸
大気や海洋を有する惑星において、生命が発生する際に必要なアミノ酸やタンパク質の起源は未解明である。特に、タンパク質がアミノ酸から非生物的に合成される過程を理解するうえで、タンパク質の前駆体であるペプチドの起源を解明することは重要な課題である。1950年代より、室内実験で様々なエネルギー源を入射することにより、初期の惑星大気を模擬したガスサンプルからアミノ酸やその他の生命に重要な有機物が生成されると報告されてきた[例:Miller & Urey, 1959; Kobayashi et al., 1998; Chyba & Sagan, 1991]。Sakurai et al. [JpGU, 2024]では、火星の原始大気の火山起源SO2の濃度が高い可能性を考慮し、初期火星大気中で非生物合成されうるアミノ酸組成[Kobayashi et al., 1989]を模した粉体サンプル(グリシン、アラニン、セリン)に、火山ガスを模擬した含硫アミノ酸(システイン)を新たに加え、太陽高エネルギー粒子(Solar Energetic Particle; SEP)を模擬した水素分子イオンを照射した。その結果、硫黄を含むアミノ酸の照射サンプルのみ、ペプチド形成が確認された。これは、照射により含硫アミノ酸が他のアミノ酸の結合を促進させ、ペプチドを生成したと解釈する事ができる。しかし、ペプチド生成に効果的な材料アミノ酸の組み合わせ等の必要条件については未解明な点が多い。そこで本研究では、ペプチド生成の必要条件を探索するため、初期火星・地球大気から合成されるアミノ酸について簡単化した組み合わせのサンプルに、水素分子イオン(10.0 keVまたは8.50 keV、7μA)を照射した。実験には、含硫アミノ酸とその他のタンパク質構成アミノ酸を混合した粉体サンプル3種(グリシン98.23%、システイン1.77%)(アラニン98.23%、システイン1.77%)(セリン98.23%、システイン1.77%)と、含硫アミノ酸のみの粉体サンプル(システイン100%)を用いた。照射したサンプルの水溶液を高速液体クロマトグラフィー分析した結果、含硫アミノ酸のみのサンプルでは、照射の影響が見られなかった。各アミノ酸に含硫アミノ酸を加えたサンプルでは、照射したサンプルのみ検出できる照射生成物を4種類検出した。特にアラニンとセリンなど側鎖に炭素原子を有するアミノ酸とシステインを混合したサンプルにおいて、照射生成物の量が多い傾向が見られた。これらをN末端アミノ酸配列解析した結果、エドマン分解後の2サイクル目以降にもピークが見られたことから、照射生成物がペプチドである事が示唆された。これらの結果から、初期火星・地球大気においてSEP照射によりペプチドを生成する為には、火山ガスから含硫アミノ酸(システイン)が生成され、他のアミノ酸が組み合わさって照射されることが必要条件である可能性がある。特に、側鎖のあるアミノ酸とシステインの両者が存在する場合、アミノ酸同士の結合を効率よく促進させ、ペプチドを生成する可能性が高まると考えられる。今後は、照射で生成されたペプチドのアミノ酸配列を解析し構造決定する予定である。本発表では、研究の現状を報告する。
