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[U12-P06] 深海熱水噴出孔を模擬するフローリアクターを用いた持続的な有機合成反応の再現

キーワード:熱水噴出孔、化学進化、生命起源、原始代謝、流体反応装置、無機触媒
生命の誕生を考えるにあたっては、原始代謝による生体分子の非生物的合成過程を想定する必要がある。深海熱水噴出孔はそのような原始代謝が発生した可能性のある自然環境として研究が行われてきた。古代の深海で熱水と海水の反応により生じた金属硫化物は原始酵素の役割を担い、前生物的な代謝反応における無機触媒として作用したと考えられる。加えて近年の研究により、深海熱水噴出孔では熱水発電現象が発生していることが明らかになった。熱水中に含まれる還元剤(H2、H2S)は導電性鉱物チムニーの内壁へ電子を放出し、海水に接するチムニー壁外面へと強い還元力を供給する。この還元力は金属硫化物による連続した有機合成反応へ利用される。この仮説は、硫化鉱物の沈殿、硫化鉱物の電気還元、有機合成反応の促進といった反応過程についての個別の実証実験により支持されている(Kitadai et al., 2018, 2019)。この仮説を裏付けるための鍵となる疑問は、果たしてこれら三段階の反応が熱水噴出孔の同じ地点で連続的に発生し得たかということである。本研究では古代熱水環境を模擬することのできるフローリアクターを作製し、その内部で連続的かつ持続的な反応を観察することで、原始代謝による生体分子の合成過程を明らかにすることを目的とした。
実験では硫化物イオンに富んだアルカリ性熱水と鉄イオンに富んだ酸性海水をそれぞれ作成した。二種類の溶液を流速、圧力、温度の制御下で送液し、二つの流路が接続されたミキシングユニットに設置した多孔質ガラスチューブを介して混合させた。その結果、多孔質ガラスの表面に黒色の沈殿が生じた。X線回折解析(XRD)で試料中の鉱物組成を明らかにすることはできなかったが、走査型電子顕微鏡による元素組成分析(SEM-EDS)から硫化鉄の生成が示唆された。硫化物沈殿の発生後にグリオキシル酸と塩化アンモニウムを含む海水を送液したところ、グリオキシル酸の還元的アミノ化により生じたと考えられるグリシンの生成が確認された。また、熱水中に水素ガスを注入したところ、注入を行わなかった場合と比較してグリシンの生成量が多かったことから、水素ガスによる還元力の供給が示唆された。これらの結果は、深海熱水噴出孔における電気化学的反応が原始代謝を駆動するという仮説を支持するものである。
実験では硫化物イオンに富んだアルカリ性熱水と鉄イオンに富んだ酸性海水をそれぞれ作成した。二種類の溶液を流速、圧力、温度の制御下で送液し、二つの流路が接続されたミキシングユニットに設置した多孔質ガラスチューブを介して混合させた。その結果、多孔質ガラスの表面に黒色の沈殿が生じた。X線回折解析(XRD)で試料中の鉱物組成を明らかにすることはできなかったが、走査型電子顕微鏡による元素組成分析(SEM-EDS)から硫化鉄の生成が示唆された。硫化物沈殿の発生後にグリオキシル酸と塩化アンモニウムを含む海水を送液したところ、グリオキシル酸の還元的アミノ化により生じたと考えられるグリシンの生成が確認された。また、熱水中に水素ガスを注入したところ、注入を行わなかった場合と比較してグリシンの生成量が多かったことから、水素ガスによる還元力の供給が示唆された。これらの結果は、深海熱水噴出孔における電気化学的反応が原始代謝を駆動するという仮説を支持するものである。
