JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

15:30 〜 15:45

[AAS11-07] 衛星からの対流圏NO2カラム濃度に対するMAX-DOAS観測からの検証と融合解析

*金谷 有剛1宮崎 和幸1野津 雅人1入江 仁士2高島 久洋3 (1.海洋研究開発機構地球表層物質循環研究分野、2.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、3.福岡大学)

キーワード:remote sensing、vertical profile、aerosol

自動車・発電所などの人為発生源や、森林火災・雷放電から大気中へ放出される窒素酸化物(NOx)の主要な成分であるNO2は、現在もっとも感度よく宇宙から観測できる大気汚染マーカー分子として位置付けられ、最近では、衛星からNO2濃度の空間分布や10年スケールの変動がとらえられるようになってきた。しかしながら、その対流圏鉛直カラム濃度の報告値は、都市周辺部では真値の約半分にとどまるなど、大きな負のバイアスを持っていることが指摘され(Kanaya et al., ACP 2014)、その値が持つ意味を正確に理解することが難しかった。本研究では、OMI衛星センサ観測に対しDOMINOv2アルゴリズムで導出されたNO2カラム濃度に関し、以前よりも詳細な検証を行い、またそれを通じて、高度分布の仮定やエアロゾルがもたらす影響を評価した。具体的には、横須賀(35.32°N, 139.65°E)で2007-2014年に実施された地上MAX-DOAS観測を真値として用い、衛星観測からのアベレージングカーネルを適用してから衛星データと比較することにより、バイアスの大部分が改善することがわかった。このことは、高度分布の仮定がもたらすバイアスが大きいことを意味する。DOMINOv2では、全球スケールの粗い解像度の数値モデルTM4から高度分布形状を借用している。この場合、都市部での導出の際には地表付近の濃度の高まりを十分に考慮できず、エアマスファクター決定の際に重みが過小評価されることによって、低バイアスが起こることがわかった。MAX-DOASから得られた、真値に近い高度分布形状に置き換えると、衛星からの対流圏カラム濃度は約2.2倍にも増大し、MAX-DOASから得られた対流圏カラム濃度とも一致度が向上した。地表付近濃度も同様に増加し、行政モニタリングでの値に近づくことがわかった。以上の解析から、高度分布を適切に考慮することで、衛星データからより信頼度の高いカラム濃度が導出可能で、またあわせて、地表付近濃度も適切に推定しうることがわかった。一方で、エアロゾルによるシールド効果については、cloud fractionが0.03以下のデータを抽出したときに顕著に表れること、その傾向は、エアロゾルの効果を陽に取り入れたアルゴリズムPOMINOによるOMIの解析結果と整合的であることがわかった。