JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月23日(火) 15:30 〜 17:00 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:齋藤 尚子(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

16:30 〜 16:45

[AAS11-11] 2007, 2011, 2016年の南極昭和基地におけるFTIR観測による大気微量成分の変動

*中島 英彰1村田 功2長浜 芳寛1武田 真憲2冨川 喜弘3秋吉 英治1 (1.国立環境研究所、2.東北大学、3.国立極地研究所)

キーワード:フーリエ変換赤外分光器、昭和基地、塩素化合物、オゾン、オゾンホール

南極昭和基地において、2007年よりBruker社製IFS-120M型FTIRを観測棟に設置し、太陽赤外線を光源に用いた大気微量成分の観測を行っている。観測は毎年ではなく、FTIR観測専門の隊員が現地で越冬している年にのみ行っている。これまで、2007年(第48次越冬隊)、2011年(第52次越冬隊)、2016年(第57次越冬隊)の3年間の観測を行ってきた。FTIRによる観測は、越冬開始後昭和基地に太陽光が出ている3月~5月、及び8月~12月に行うことが可能である。FTIRによって観測が可能な主な大気微量成分は、O3, HNO3, HCl, ClONO2などである。今回は、これらFTIRで観測された大気微量成分の他に、昭和基地におけるオゾンゾンデ観測、及び人工衛星MLSによるClO, HCl、同じく人工衛星MIPASによるClONO2の観測結果も併せて解析を行った。解析は高度別に混合比を導出することが可能であり、今回はそのうち18 kmと22 kmに注目して結果を解析した。その結果、昭和基地における冬季にあたる6月初めごろからHCl濃度が減少を始めることが判った。これは、昭和基地上空におけるPSCの出現によるものである。昭和基地上空に太陽光が戻ってくる8月初めからClO濃度が上昇を初め、9月前半にピークになる。そのころまだHCl濃度はほとんどゼロのままである。9月中旬から10月にかけて、ClO濃度の減少とともに、ClONO2濃度の増加とHCl濃度の増加がみられる。これらどちらのリザーバーにより多くのClyが回復するかは、冬によって、また硬度によって異なっていることが判った。また、O3濃度は8月末から減少を始め、10月に最低となりオゾンホールが形成される。これら、南極基地上空において、地上観測によってCly濃度のパーティショニングの様子が観測されたのは世界初である。さらに、Clyパーティショニングの変動の様子が、北極におけるそれとは異なる変動を示すことが確認された。これらは、南極上空成層圏のオゾン濃度が、オゾンホールのため北極上空より低いためであると考えられる。FTIRと衛星によるClyパーティショニングの様子は、3次元化学気候モデルMIROC3.2の結果と比較された。いくつかの化学種では絶対値に系統的な差が見られたが、相対的な変動は化学気候モデルで比較的良く再現されることが判った。講演では、2016年の成層圏水蒸気観測の結果についても報告する予定である。