JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:板橋 秀一(電力中央研究所)

09:45 〜 10:00

[AAS11-16] 2016年春季の韓国で観測されたエアロゾル混合状態の変動

*小澤 優哉1大泉 智隆2Lee KwangYul3Cho Hee-Joo3Park Kihong3竹川 暢之2 (1.東京大学大学院理学系研究科、2.首都大学東京大学院理工学研究科、3.光州科学技術院 環境工学部)

キーワード:エアロゾル、化学組成、ブラックカーボン混合状態

エアロゾルは直接・間接効果により地球の放射収支に影響を与える(IPCC 2013)。これらの効果はエアロゾルの化学組成や混合状態に強く依存する。特に硫酸塩、硝酸塩、有機物がブラックカーボン(BC)とどのような混合状態(内部混合、外部混合)にあるかがエアロゾルの直接・間接効果を推定する上で重要なパラメーターとなる(Bond and Bergstrom 2006, Adachi et al. 2010)。しかし、実大気中でBCと混合している化学組成をリアルタイムで定量した研究例はほとんどなかった。この研究の目的は、アジア下流域でのBC混合状態別の化学組成を明らかにすることである。
 本研究では、韓国において2016年3月1日から4月7日の期間に実大気観測を行った。観測ではレーザー誘起白熱光-質量分析計(LII-MS, Miyakawa et al. 2014)が用いられた。LII-MSはレーザー誘起白熱光分析計(LII)と質量分析計(MS)をタンデムに組み合わせた分析手法である。LII部では1024nmのレーザー共振器を用いることにより、BCを内部に含む粒子が効率的に揮発され、白熱光信号が検出される。その後サンプル空気はMS部に連続的に導入され、エアロゾルの化学組成が定量される。LIIレーザーのONとOFFを切り替えることで、BCを内部に含む粒子(内部混合)と含まない粒子(外部混合)の化学組成を分けて定量することができる。
 観測期間においてPM1粒子の主要な成分は硝酸塩、硫酸塩、有機物であった。質量濃度の平均では硝酸塩が卓越しており、内部混合の割合では硫酸塩が他の物質に比べて高かった。また、硝酸塩と硫酸塩の外部・内部混合の比較においては実験誤差以上の系統的な差異は見られなかった。発表では化学組成の時間変動とその考察について詳細を述べる。

参考文献
Adachi, K. et al. (2010), JGR, Vol.115, D15206, doi: 10.1029/2009JD012868
Bond, T. C. and Bergstrom R. W. (2006), AST, 40: 27-67, doi: 10.1080/02786820500421521
IPCC (2013), Intergovernmental Panel on Climate Change, Stockholm, Sweden
Miyakawa, T. et al. (2014), AST, 48: 853-863, doi: 10.1080/02786826.2014.937477