JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 10:45 〜 12:15 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:大島 長(気象研究所)、座長:奈良 英樹(国立環境研究所 地域環境研究センター 炭素循環研究室)

11:30 〜 11:45

[AAS11-22] 八方尾根における春季対流圏オゾンの1998年から2016年にかけての長期変動

*岡本 祥子1池田 恒平1谷本 浩志1 (1.国立環境研究所)

キーワード:オゾン

対流圏オゾンは、地球温暖化、対流圏酸化能および大気質を考える上で、最も重要な微量気体のひとつである。過去数十年の間、東アジアからの大気汚染物質の排出は急激に増加しており、特に中国はその中でも最大の排出国であると考えられている。最近の衛星による対流圏二酸化窒素カラム濃度データの解析に基づく最近の研究では、中国からの窒素酸化物の排出量が高止まりしている可能性が示唆されている。また、前駆物質の排出量だけでなく、気候の変動も対流圏オゾンの濃度変動を決める重要な要素の一つであり、数年から十年規模の気候振動が大気輸送に影響を与え、汚染源からの流入を変化させるという結果も報告されている。本発表では、1998年から2016年の連続観測データから、長野県白馬村の八方尾根での春季対流圏オゾンの長期変動について述べる。
八方尾根における春季オゾン濃度は、1998年から2007年にかけて急激に増加し続けた。これは経済成長に伴う中国東部からのオゾン前駆体排出の増加によるものと考えられる。その後、八方尾根におけるオゾン濃度は横ばいの傾向が続いており、2008年と2012年には二度大きく減少していた。排出量及び気象データの解析から、この二度の大きなオゾン濃度減少は、それぞれ異なる要因によって生じたと考えられた。一つ目の要因は、気象場の変動による中国中東部からの寄与の減少である。日本の東の太平洋上の気圧偏差が減少し、チベット高原周辺の気圧偏差が増加した時に、西向きの風が強まることで、中国中東部からの汚染気塊が八方尾根へ輸送されやすくなり、観測されるオゾン濃度も高くなっていたことが推察された。もう一つの要因は、中国東部からのオゾン前駆体排出量の減少であることが示唆された。