JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 301B (国際会議場 3F)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)、座長:岡本 祥子(国立環境研究所)、座長:金谷 有剛(国立研究開発法人海洋研究開発機構地球表層物質循環研究分野)

14:45 〜 15:00

[AAS11-29] 高分解能光学顕微鏡によって可視化された氷の表面融解現象

*長嶋 剣1佐崎 元1羽馬 哲也1村田 憲一郎1古川 義純1 (1.北海道大学低温科学研究所)

キーワード:氷、表面融解、疑似液体層、塩化水素ガス、高分解能光学顕微法

氷は地球上に存在する結晶の中で最も多いものの1つであるため、その相転移現象は自然界に大きな影響を及ぼす。相転移現象の1つである表面融解が起こると、氷融点の0℃以下であっても氷表面は疑似液体層と呼ばれる薄い液体で濡れている状態となる。疑似液体層の有無は氷表面での化学反応に影響を及ぼすため、大気化学分野にとっても重要である。
近年、我々はオリンパス(株)と共同でレーザー共焦点微分干渉顕微鏡を開発し、高さ0.37 nmの氷の単位ステップ [1]や疑似液体層 [2]を可視化することに成功した。疑似液体層の直接観察によると、従来の薄膜液層が氷全体を覆う描像ではなく、2種類の形態を持った疑似液体層が部分的に氷表面を覆う様子であることがわかった [2,3]。また、疑似液体層の出現条件は温度だけではなく、周辺大気の水蒸気量 [4,5]とガス成分 [6] に依存することもわかった。
例えば塩化水素ガスの存在は疑似液体層の出現を非常に促進させるため、塩化水素ガス無しでは疑似液体層が出現しない-15 ~ -1.5℃の温度条件でも疑似液体層を観察することができた(ただし-15℃以下の実験は未だ行ってないため下限は不明) [6]。また、この液滴は蒸発によって消えることはないことと液滴挙動の水蒸気量依存性から、塩化水素ガスが液滴に溶け塩酸液滴となっていることが予測された。
加えて、過飽和条件ではこの塩酸液滴は氷の中に埋没してしまい、氷を蒸発させると同場所から再度液滴が出現することがわかった。これらの結果は、氷結晶がガス成分を流体包有物として多量に保持できる可能性を示唆している。

[1] Sazaki et al. (2010) PNAS 107, 19702.
[2] Sazaki et al. (2012) PNAS 109, 1052.
[3] Asakawa et al. (2015) Cryst. Growth Des. 15, 3339.
[4] Asakawa et al. (2015) PNAS 113, 1749.
[5] Murata et al. (2016) PNAS 113, E6741.
[6] Nagashima et al. (2016) Cryst. Growth Des. 16, 2225.