JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)

[AAS11-P01] イソプレンと一酸化窒素の混合気体試料に対するオゾン反応性全量計の応答特性

*松本 淳1Sommariva Roberto2 (1.早稲田大学人間科学学術院、2.バーミンガム大学)

キーワード:生物起源揮発性有機化合物、窒素酸化物、標準添加法

生物起源揮発性有機化合物 BVOCs は、対流圏オゾン O3 や二次有機エアロゾル SOA の前駆体として注目されている。多くの BVOCs は分子内に C=C 二重結合を持つため、O3 に対する反応性を有する。発表者はこれまでに、BVOCs 包括把握のためのオゾン反応性全量 RO3ki[VOCi]の総和)の測定装置を構築してきた[1-4]。BVOCs 試料の RO3 は、BVOCs のオゾン反応に伴うオゾン減少量を高精度に測定することで決定できる。これまでの研究の結果、RO3 全量計の検出下限 6.3x10-5 s-1 を実現した (S/N=3, 60-s 平均値, 反応時間 50 s) [4]。本測定装置を実大気などの多成分混合試料の測定に用いるには、装置特性を詳細に検証する必要がある。たとえば、一酸化窒素 NO はさまざまな大気試料中に有意に含まれるうえ、オゾン反応が速いため、オゾン反応性測定に対する NO の寄与は無視できない。Mogensen ら [5] は、森林大気に関するモデル計算研究において、オゾン反応性に対する NO の寄与の重大性を示している。一般には、大気試料中の NO 濃度は化学発光法 NO 計により容易に測定可能である。したがって、NO 濃度に対する RO3 全量計の応答特性を十分に把握しておくことで、NO 濃度の測定結果を用いて RO3 測定結果に占める NO+O3 反応の寄与を決定し、RO3 に占める BVOCs+O3 の寄与を正しく定量できるようになる。本研究では、イソプレン標準試料と NO 標準試料の混合ガス試料を用意して、これに対する RO3 計の応答特性を調べる実験を試みて、BVOCs 試料に対する NO の標準添加法による RO3 への NO 寄与分の決定の可能性について検証した。実験の結果、イソプレン標準試料 (A) および NO を添加した試料 (B, C, D) について NO 濃度に対するオゾン反応性 RO3 の実測値をプロットしたところ、Fig.1 を得た。図に示すように、NO 添加イソプレン試料(B, C, D) に関する回帰直線の y 切片は、NO 添加前のイソプレン標準試料 (A) と完全に一致した。NO 標準添加法による RO3 測定値に占める NO と BVOCs の寄与の切り分けが十分に妥当であることを、実験的に確認した。すなわち、BVOCs 試料の RO3 を測定するとき、実大気など共存 NO が無視できない場合には、NO 濃度も測りつつ、濃度既知 NO 試料を混合する標準添加 RO3 測定も実施すればよいことがわかった。今後は、実際の森林大気や植物放出試料の RO3 測定に NO 標準添加法を用いる試みが重要となろう。
[1] Matsumoto, J., AGU Fall Meeting 2011, USA, A51A-0232 (2011).
[2] Matsumoto, J., Aerosol Air Qual. Res., 14, 197-206 (2014).
[3] Matsumoto, J., 1st OH Reactivity Specialists Uniting Meeting, Germany (2014).
[4] Matsumoto, J., Chem. Lett., 45, 1102-1104 (2016).
[5] Mogensen et al., Atmos. Chem. Phys., 15, 3909-3932 (2015).