JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)

[AAS11-P12] FTIRで観測されたつくばにおけるエタンの近年の増加およびその後の減少

*村田 功1中島 英彰2森野 勇2 (1.東北大学大学院環境科学研究科、2.国立環境研究所)

キーワード:フーリエ変換型分光計、温室効果気体、エタン

東北大学と国立環境研究所では、国立環境研究所所有の高分解能フーリエ変換型赤外分光計(FTIR)を用いて、つくばにおいて1998年12月より大気微量成分の地上観測を行っている。今回は昨年に引き続いてC2H6カラム全量の経年変化を報告する。C2H6はCH4に次いで多く存在する炭化水素類であり、化学反応過程も類似した部分が多い。そのため、C2H6がCH4の濃度に影響することによる間接的な温室効果がある。また、汚染大気中のオゾン生成に寄与する他、C2H6の酸化過程で生成するアセトアルデヒド(CH3CHO)とNO2からPeroxyacetyl nitrate(PAN)が生成され、これが窒素酸化物の長距離輸送に寄与することから、越境大気汚染にも寄与する。発生源は天然ガス、バイオ燃料、バイオマス燃焼等人為起源が主であり、そのため地表付近の濃度は北半球では数ppbv程度である一方、南半球では数百pptvといった値が報告されている。
FTIR観測の国際的グループであるNDACC/IRWGではこのようなC2H6の変動要因を解明するため、世界各地のFTIR観測の結果を総合して解析することになり、我々もつくばの観測結果を提供している。解析にはロジャーズ法を用いたスペクトルフィッティングプログラムSFIT4を使用し、Franco et al., [2015]と同様のパラメータで行っている。ただし、解析に用いる波数領域は3μm付近の①2976.66 - 2977.059 cm-1と②2983.20 - 2983.50 cm-1のふたつで、Franco et al. [2015]で用いているもう一つの領域③2986.45 - 2986.85 cm-1は用いない。これは③の領域にはH2Oの強い吸収線があり、日本のような高湿度地域では解析に適さないためである。
解析は2001年5月-2016年12月について行い、日平均したカラム全量の経年変化を調べたところ、2001-2008年の期間では若干の減少傾向(-0.4%/year程度)であったものが2009-2013年にかけて増加(2.2%/year程度)し、2014-2016年に再び減少(-0.6%/year程度)する様子が見られた。原因に関してはまだ調査中であるが、2014年以降の減少については原油価格の下落に伴う原油生産量の増加がC2H6の発生源である天然ガスやバイオ燃料の生産量の減少を招き、その結果C2H6の発生量が減少した、といったことが影響しているようである。