JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)

[AAS11-P15] GOSAT/TANSO-FTS TIR スペクトルを用いた地表面温度及び地表面射出率の同時推定

*板津 智之1齋藤 尚子3今須 良一2塩見 慶4久世 暁彦4 (1.千葉大学 大学院 融合科学研究科、2.東京大学大気海洋研究所、3.千葉大学環境リモートセンシング研究センター、4.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:GOSAT、熱赤外バンド、地表面温度、地表面射出率

温室効果ガス観測技術衛星GOSAT(Greenhouse gases Observing SATellite)に搭載されているTANSO-FTS(Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation – Fourier Transform Spectrometer)は、短波長赤外バンド及び熱赤外(TIR)バンドで二酸化炭素とメタンのカラム量と鉛直濃度分布を観測することができる[Yoshida et al., 2011; Saitoh et al., 2009]。TIRバンドのスペクトルから気体濃度を導出する際、地表面パラメータの誤差は気体濃度の導出精度を悪化させることがわかっている[Saitoh et al., 2009]。そこで、本研究では、TANSO-FTSのTIRスペクトルから地表面射出率及び地表面温度の同時推定を試みた。まず初めに、地表面射出率の波長依存性が相対的に小さいことを利用してAIRS (Atmospheric Infrared Sounder)の高波長分解能観測スペクトルから地表面パラメータの同時推定を試みた先行研究[松井・森山, 2008]に従って、TANSO-FTSのTIRスペクトルから地表面パラメータを同時推定する手法を検討した。さらに、TANSO-FTSのTIRバンドの実観測スペクトルに開発した手法を適用した。本研究では、地表面射出率の特徴が比較的わかっている海面に注目し、推定手法の有効性を調査した。
800 cm-1から1000 cm-1の理論スペクトルから、連続吸収を考慮していない場合の大気の透過率が0.95以上となる波数チャンネルを「スムースパート」とし、このチャンネルセットをもとに地表面パラメータの推定を行った。初めに、中緯度の海上のTANSO-FTSのTIRバンドの観測スペクトルについて、地表面温度幅を286 Kから310 Kとし、その範囲内で1 K刻みで地表面温度を変えていき、最も地表面射出率が波長方向に滑らかになる地表面温度を算出した。その結果、地表面温度は294 Kとなり、観測地点の海面温度(293.4 K)と近い値を示した。また、同時推定された900 cm-1における地表面射出率は0.97となり、Aster Spectral Libraryの海水射出率0.99と近い値となった。
さらに、開発した手法を2013年1月1−3日の海上(10−20°N, 160−170°E)の複数のTIRバンドの観測スペクトルに適用した。我々の手法で導出した地表面温度と近傍のMODISの海面温度を比較したところ、両者の差が小さい観測地点では同時導出された地表面射出率はAster Spectral Libraryの海水射出率と概ね近い値になった。しかし、地表面温度と海面温度に大きな差が見られる観測地点では、同時導出された地表面射出率も海水射出率から大きな隔たりが見られた。講演では、導出結果の精度評価、他の季節・領域での推定結果、地表面パラメータを導出する際の各種パラメータを変更した際の導出結果への影響についても報告する予定である。