JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-AS 大気科学・気象学・大気環境

[A-AS11] [JJ] 大気化学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:入江 仁士(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、町田 敏暢(国立環境研究所)、谷本 浩志(国立環境研究所)、岩本 洋子(広島大学 生物圏科学研究科)

[AAS11-P18] 原子間力顕微鏡を用いた個別雲凝結核の吸湿特性評価

*古家 正規1松木 篤1岩田 歩1 (1.金沢大学)

大気エアロゾルの多くは吸湿性を持ち、水蒸気を取り込み雲凝結核(CCN)として働くことで間接的に気候に影響を与える。吸湿性パラメーターκはエアロゾル粒子の吸湿性を示す単一パラメーターである(Petters and Kreidenweis., 2007)。κを求めるには、相対湿度・乾燥粒径・吸湿成長因子(gf)・気相液相界面の表面張力の正確な測定が必要である。その測定のため、従来の研究では、主に吸湿性タンデム微分型静電分級装置(HTDMA)が広く用いられてきた。
  HTDMAの観測から求められるのκは、大多数の粒子の平均を反映しており、必ずしも極端な吸湿性を示す一部の粒子の存在を反映しない(Morris et al., 2016)。または、液滴の表面張力を直接的に測定する手法がなかったために、主に表面張力を純水かバルク溶質のそれ過程してκを導出してきた点などが問題として挙げられる。
  我々は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、単一液滴の表面張力とgfをそれぞれ直接測定し、原理上、個別粒子のκを直接的に求める手法の確立を目指している。本研究では、塩化ナトリウム(NaCl)のgfと表面張力を測定した。この実験で得られたgf (80% RH) は1.73±0.35となり、先行研究(Morris et al., 2016)の値と標準偏差内で一致する。表面張力の導出においては、その算出に必要な保持力が平均19±3 nN となり、先行研究(Morris et al., 2015)で報告されている30 nN よりも僅かに低くなった、この差は双方の研究で使用されたカンチレバーの形状の違いによるものだと考えられる。この実験で得たgf、乾燥粒径、表面張力から導出される吸湿性パラメーターκは1.10となった。この値は先行研究(Koehler et al., 2006; Clegg and Wexler., 1998)で報告されているκの値とよく一致したことから、この手法が妥当なκを導出できる可能性を示した。将来的には、この手法を用いて様々な表面活性を示す物質、無機塩や有機種を混合した物質などを分析し、最終的には実際の大気エアロゾル物質に適用する予定である。