JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC37] [EJ] アイスコアと古環境変動

2017年5月23日(火) 10:45 〜 12:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:川村 賢二(情報・システム研究機構 国立極地研究所)、竹内 望(千葉大学)、阿部 彩子(東京大学大気海洋研究所)

[ACC37-P11] 1980年ヒマラヤ山脈エベレスト・クンブ氷河ウエスターンクームで掘削された浅層アイスコア解析

*堀 燿一朗1竹内 望1吉田 稔2藤井 理行3 (1.千葉大学大学院理学研究科、2.白山工業株式会社、3.国立極地研究所)

キーワード:浅層アイスコア、雪氷化学、ヒマラヤ、山岳氷河

1980年12月,植村直己隊長率いるヒマラヤ山脈エベレスト冬季登山隊によってクンブ氷河の涵養域ウエスタンクーム(標高6100-6400 m)にて,2本のアイスコアが掘削された.掘削されたコアは,冷凍されたまま日本に輸送され,国立極地研究所の低温室に保管された.このアイスコアは冷凍のまま保存されているヒマラヤの氷資料として非常に貴重なものである.アイスコアはそのまま長い間解析されることなく保管されていたが,2016年になってコアの再確認が行われ,千葉大学で解析が行われることになった.2本のアイスコアについて,層位観察,コア長・密度の測定,さらに水素・酸素安定同位体比と主要化学成分濃度の分析を行い,アイスコアの基礎的特徴を明らかにすることを目的とした.コアの層位観察の結果,Core1とCore2では大きく層位が異なった.Core1は全層位の98%がザラメ層で,2%が氷板層,ダスト層は唯一深さ7.3 m付近で観察された.一方,Core2は全層位の15%がザラメ層で,85%が氷板層であった.さらに砂や礫を含む層が多く見られ,特に深さ0.40~0.60 m,1.2 m,3.4~4.0 mに顕著な層があった.以上の結果は,Core1は比較的融解の少ない連続的なコアであるのに対し,Core2は融解が激しく,さらにエベレスト南壁からの雪崩の影響を大きく受けていることを示唆している.アイスコア中の水素・酸素同位体比を分析した結果,Core1はそれぞれ平均で-126.4 ‰,-17.6 ‰,Core2はそれぞれ平均で-163.3 ‰,-21.5 ‰であった.わずか300 mの標高差で大きく同位体比に差がついたのは,Core2には南壁上部の同位体比の小さい雪が雪崩によって供給されているためと考えられる.アイスコア中の主要化学成分も2つのコアに差があった.Core1は,ClとNa+が全体の60 %以上を占めたのに対し,Core2は,Ca2+が平均72 %を占めていた.これは,Core2に含まれる南壁からのデブリ,および融解再凍結の影響と考えられる.