JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC38] [JJ] 雪氷学

2017年5月22日(月) 13:45 〜 15:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:縫村 崇行(千葉科学大学)、堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)、石川 守(北海道大学)、舘山 一孝(国立大学法人 北見工業大学)、座長:堀 雅裕(宇宙航空研究開発機構地球観測研究センター)

14:00 〜 14:15

[ACC38-02] 札幌で8冬期間に観測された積雪不純物がアルベドに与える効果

*広沢 陽一郎1青木 輝夫2,3庭野 匡思3的場 澄人4兒玉 裕二5 (1.岡山大学 理学部、2.岡山大学 大学院自然科学研究科、3.気象研究所、4.北海道大学 低温科学研究所、5.国立極地研究所)

近年、積雪面積や積雪期間は主に北極域において減少している。雪氷は一般にアルベドが高いため、地球温暖化に伴う雪氷の融解はアルベドを低下させる。その結果、地表面による太陽放射の吸収の増加し、地球温暖化をさらに加速させる。代表的な豪雪地帯である札幌において、積雪アルベドは積雪粒径と積雪不純物濃度に強く依存していることが報告されている(Aoki et al., 2003, 2007)。本研究では、札幌の積雪アルベドにおける積雪不純物濃度の影響を、Aoki et al. (2011)によって開発された積雪アルベド物理モデル(PBSAM)を用いて調べた。観測場所は北海道大学低温科学研究所の気象観測露場(43°04'56"N, 141°20' 30"E, 15 m a.s.l.)で、観測期間は2007-2015年の8冬期間である。積雪断面観測及び放射観測データをPBSAMに入力して得られる広波長帯域アルベドの理論計算値と観測値を比較した。さらに、積雪不純物によるアルベドの変化に関する感度実験も行った。
 解析期間の各年で時系列の観測値とモデル計算値を比較すると、積雪粒径や積雪不純物濃度の変化に対応したアルベド変動の計算値は観測値とよく一致していることが分かった。全解析期間において、短波長域(SW)におけるアルベド観測値と計算値の比較から得られる決定係数(R2)と二乗平均平方根誤差(RMSE)はそれぞれ0.831と0.045で、これらの結果からPBSAMの高い精度が確認された。次に、ブラックカーボン(BC)と鉱物性ダストからなる積雪不純物の有無による、可視域、近赤外域、短波長域のアルベド変化に関する感度実験を行った。全解析期間における積雪不純物(BC+ダスト)によるアルベド変化は可視域で-0.085、近赤外域で-0.016、短波長域で-0.053であった。また、短波長域のアルベド変化へのBCとダストそれぞれからの寄与を調べた結果、全解析期間の短波長域のアルベド変化はBCのみにより-0.043、ダストのみにより-0.009であった。さらに、涵養期と融雪期の間の短波長域のアルベド変化の比(融雪期/涵養期)はBCが4.1倍、ダストが12.0倍、BC+ダストが4.9倍であった。

参考文献
Aoki et al., 2003: J. Geophys. Res., 108(D19), 4616, doi:10.1029/2003JD003506.
Aoki et al., 2007: Ann. Glaciol., 46, 375–381, doi:10.3189/172756407782871747.
Aoki et al., 2011: J. Geophys. Res., 116, D11114, doi:10.1029/2010JD015507.