09:30 〜 09:45
[ACG47-03] 傾度法を用いた温帯二次林におけるメタン交換量の連続測定
キーワード:メタンフラックス、改良傾度法、森林
メタン(CH4)は強力な温室効果気体であるが、陸域生態系におけるその動態については依然よく分かっていない。本研究では、森林群落スケールのCH4交換量を改良傾度法によって測定した。改良傾度法と渦相関法、双曲線簡易渦集積(HREA)法によるCO2・CH4フラックスを相互比較し、手法間による差異を考察し、改良傾度法の利用可能性を検討した。
京都府木津川市の山城水文試験地において2016年の1年間観測を行った。改良傾度法の適用のため、2高度(35、25 m)の鉛直濃度プロファイルと渦相関法による拡散速度を計測した。風速の対数法則から地面修正量を求めるために、3高度(35、25、22 m)で水平風速を計測した。不安定条件ではCH4濃度勾配が分析計の精度よりも小さくなることが想定されるため、CH4フラックスの計算には安定条件のデータのみの使用を検討した。拡散係数を精度よく求めるため観測地固有の普遍関数を決定した。改良傾度法によるフラックスの計算には温度に関する普遍関数(Φh)とCO2に関する関数(Φc)を用いた2通りのデータを算出した。
不安定条件のデータを含んだ改良傾度法と渦相関法によるCO2フラックスは一致したが(R2 = 0.66~0.68、RMSE = 5.66~6.66 gCO2 m-2 d-1)、CH4フラックスについては一致しなかった。安定条件のデータのみを用いてCO2フラックスの日積算値を算出したところ、Φhを用いた改良傾度法は渦相関法と比較して50 %の過大評価であった。一方、Φcを用いた改良傾度法では過大評価がみられなかった。安定条件について積算時間と精度の関係を検討したところ、30日以上の期間で平均すると両手法のR2が高くなることが分かった(R2 = 0.86~0.91、RMSE = 5.73~6.42 gCO2 m-2 d-1)。改良傾度法における誤差の多くは拡散係数の評価精度に起因すると考えられ、30日平均をすることによってランダム誤差を低減できたと考えられる。
6~10月と12月において、改良傾度法では0.63~1.79 mgCH4 m-2 d-1の放出、HREA法では0.58~1.96 mgCH4 m-2 d-1の放出となり、両手法によるCH4フラックスの季節変化が一致した。1~3月と11月の季節変化が両手法間で異なったのは、この期間に渦相関法やHREA法のデータの欠測が多かったことが原因したと考えられる。6月3日からは高度25 mのプロファイル計測の平均化時間が180秒であったのに対し、それ以前の期間は60秒となっていた。平均化時間が短いことで4月と5月の季節変化が一致しなかったと考えられる。1~5月と11月を除けばHREA法と改良傾度法によるCH4フラックスは同様の季節変化を示しており、安定条件を利用した改良傾度法が有効な手法であることが示された。
両手法による年間のCH4収支を計算すると、改良傾度法で172 mgCH4 m-2 yr-1、HREA法で237 mgCH4 m-2 yr-1とどちらも年間で正味の放出を示した。一般に森林はCH4の吸収源と考えられているが、この森林では2016年の1年間でCH4を放出していることがわかった。
HREA法と改良傾度法の季節変化が一致した夏季の6~10月について、改良傾度法による月別CH4フラックスは、1ヶ月前の月降水量と相関があることが分かった(R2 = 0.97、p < 0.01)。降雨により土壌が徐々に嫌気状態に転じ、メタン生成細菌が遅れて活性化した可能性を示唆する結果である。
京都府木津川市の山城水文試験地において2016年の1年間観測を行った。改良傾度法の適用のため、2高度(35、25 m)の鉛直濃度プロファイルと渦相関法による拡散速度を計測した。風速の対数法則から地面修正量を求めるために、3高度(35、25、22 m)で水平風速を計測した。不安定条件ではCH4濃度勾配が分析計の精度よりも小さくなることが想定されるため、CH4フラックスの計算には安定条件のデータのみの使用を検討した。拡散係数を精度よく求めるため観測地固有の普遍関数を決定した。改良傾度法によるフラックスの計算には温度に関する普遍関数(Φh)とCO2に関する関数(Φc)を用いた2通りのデータを算出した。
不安定条件のデータを含んだ改良傾度法と渦相関法によるCO2フラックスは一致したが(R2 = 0.66~0.68、RMSE = 5.66~6.66 gCO2 m-2 d-1)、CH4フラックスについては一致しなかった。安定条件のデータのみを用いてCO2フラックスの日積算値を算出したところ、Φhを用いた改良傾度法は渦相関法と比較して50 %の過大評価であった。一方、Φcを用いた改良傾度法では過大評価がみられなかった。安定条件について積算時間と精度の関係を検討したところ、30日以上の期間で平均すると両手法のR2が高くなることが分かった(R2 = 0.86~0.91、RMSE = 5.73~6.42 gCO2 m-2 d-1)。改良傾度法における誤差の多くは拡散係数の評価精度に起因すると考えられ、30日平均をすることによってランダム誤差を低減できたと考えられる。
6~10月と12月において、改良傾度法では0.63~1.79 mgCH4 m-2 d-1の放出、HREA法では0.58~1.96 mgCH4 m-2 d-1の放出となり、両手法によるCH4フラックスの季節変化が一致した。1~3月と11月の季節変化が両手法間で異なったのは、この期間に渦相関法やHREA法のデータの欠測が多かったことが原因したと考えられる。6月3日からは高度25 mのプロファイル計測の平均化時間が180秒であったのに対し、それ以前の期間は60秒となっていた。平均化時間が短いことで4月と5月の季節変化が一致しなかったと考えられる。1~5月と11月を除けばHREA法と改良傾度法によるCH4フラックスは同様の季節変化を示しており、安定条件を利用した改良傾度法が有効な手法であることが示された。
両手法による年間のCH4収支を計算すると、改良傾度法で172 mgCH4 m-2 yr-1、HREA法で237 mgCH4 m-2 yr-1とどちらも年間で正味の放出を示した。一般に森林はCH4の吸収源と考えられているが、この森林では2016年の1年間でCH4を放出していることがわかった。
HREA法と改良傾度法の季節変化が一致した夏季の6~10月について、改良傾度法による月別CH4フラックスは、1ヶ月前の月降水量と相関があることが分かった(R2 = 0.97、p < 0.01)。降雨により土壌が徐々に嫌気状態に転じ、メタン生成細菌が遅れて活性化した可能性を示唆する結果である。