JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG48] [EJ] 北極域の科学

2017年5月24日(水) 09:00 〜 10:30 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:森 正人(東京大学先端科学技術研究センター)、津滝 俊(宇宙航空研究開発機構)、鄭 峻介(北海道大学 北極域研究センター)、漢那 直也(北海道大学 北極域研究センター)、座長:漢那 直也(北海道大学 北極域研究センター)

09:30 〜 09:45

[ACG48-03] 太平洋側北極海における栄養塩と植物プランクトンの分布についての観測研究

*Nishino Shigeto1菊地 隆1川合 美千代2川口 悠介1平譯 享3伊東 素代1藤原 周1青山 道夫4,1 (1.国立研究開発法人 海洋研究開発機構、2.東京海洋大学、3.北海道大学、4.福島大学)

キーワード:北極海、海氷減少、海洋循環、渦、栄養塩、植物プランクトン

北極海の太平洋側に位置するチャクチ海とカナダ海盆には、栄養塩の豊富な太平洋起源水が流れ込んでおり、これが植物プランクトン分布に大きく影響している。本研究では船舶観測や係留観測により植物プランクトン分布を特徴づけている海洋の物理・化学環境について調査した。太平洋側北極海の玄関口となるチャクチ海南部では、海氷融解期に植物プランクトンの春季ブルームが起こるのに加えて、秋季にもブルームがあることが観測された。春季ブルームが太平洋起源水による栄養塩供給で維持されているのに対して、秋季ブルームは海底に蓄積された有機物の分解により生じる栄養塩が支えていることが示された。一方、カナダ海盆の栄養塩と植物プランクトンの分布は海洋循環と密接に関係していることが分かった。カナダ海盆アラスカ沖では、近年の海氷減少に伴い、高気圧性のボーフォート循環が強化され、その表層に淡水が蓄積される。このため貧栄養化が進行し、大型の植物プランクトンが減少している。この海域では渦が栄養塩輸送に大きく寄与していることも分かってきた。カナダ海盆のアラスカ沖とは逆に、シベリア沖では表層の栄養塩濃度が増加している。これは、秋季開放面水域の増大に伴い東シベリア海で形成される冬季水が増加し、この水がシベリア沖に栄養塩を運んでくるためと考えられる。この海域のデータはまだまだ不足しており、栄養塩変動と植物プランクトン分布の関係解明については、今後の観測に期待される。