JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] ポスター発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG48] [EJ] 北極域の科学

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:森 正人(東京大学先端科学技術研究センター)、津滝 俊(宇宙航空研究開発機構)、鄭 峻介(北海道大学 北極域研究センター)、漢那 直也(北海道大学 北極域研究センター)

[ACG48-P20] バロー海底谷における太平洋水のフラックスと北極海の温暖化への影響

*伊東 素代1菊地 隆1西野 茂人1 (1.海洋研究開発機構)

キーワード:北極海、海洋温暖化、海氷減少

近年の北極海における夏季の海氷減少は、太平洋側の海盆域で特に顕著で、ベーリング海峡から流入する太平洋水の増加が原因の一つと指摘されている。チャクチ海北西部に位置するバロー海底谷は、太平洋水の海盆域への主要な流出口である。本研究では、バロー海底谷における流量、熱、淡水フラックスの定量的な見積もりと、そのカナダ海盆の温暖化への役割に注目している。JAMSTECでは、バロー海底谷で2000年から20016年まで通年の係留系観測を実施しており、年平均の流量、淡水、熱フラックスは、0.43 Sv、31 mSv、2.12 TWであることを明らかにした。熱フラックスは非常に経年変動が大きく、年平均で0.93 TW から 3.34 TWの幅があった。係留系によるバロー海底谷の熱量と、衛星によるバロー域の海面水温を比較することで、北向き熱フラックスのほとんどが観測される夏季の熱量の長期変動を調べた。その結果、1980年代から2010年代の間に、熱量は1.5倍に増加したことが示唆された。海盆域の海洋観測データから、カナダ海盆域の亜表層は、1990年代以降に水温上昇傾向があり、特に2010年以降は急激に水温上昇が観測されていることが分かった。これは、2007、2010、2012年にバロー海底谷の熱フラックスが多かったことの影響と考えられる。