JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CG 大気水圏科学複合領域・一般

[A-CG49] [JJ] 地球惑星科学における航空機観測利用の推進

2017年5月21日(日) 13:45 〜 15:15 304 (国際会議場 3F)

コンビーナ:高橋 暢宏(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、小池 真(東京大学大学院 理学系研究科 地球惑星科学専攻)、鈴木 力英(海洋研究開発機構 地球表層物質循環研究分野)、町田 敏暢(国立環境研究所)、座長:高橋 暢宏(名古屋大学宇宙地球環境研究所)

14:15 〜 14:30

[ACG49-03] 活断層研究における航空機リモートセンシング

★招待講演

*鈴木 康弘1石黒 聡士2 (1.名古屋大学、2.愛知工業大学)

キーワード:LiDAR、航空写真解析、活断層

日本の活断層研究は1960年代後半以降に飛躍的な進歩を遂げたが、その背景として、縮尺4万分の1~2万分の1の航空写真の実体視判読が自由に行えるようになったことが大きい。日本全国の航空写真判読に基づく活断層の認定が行われ、1980年に「日本の活断層」、1991年にはその改訂版が刊行された。これにより「活断層発見の時代は終わった」とも言われた。しかしその後に1万分の1航空写真が活断層研究にも導入されるようになり、さらに詳細な活断層の発見が相次いだ。
 その後、21世紀以降、航空写真とLiDARを組み合わせた活断層研究が開始された。鈴木ほか(2003)は、糸魚川-静岡構造線活断層に関する重点調査観測において、初めて活断層沿いのLiDAR計測を行った。また、糸静線全域において新旧の航空写真を用いて詳細なDEMを作成し、断層変位地形の測量を行い、さらに、POS-IMU計測を併用した縮尺1万分の1航空写真撮影並びに地形計測を行った。
 航空写真測量の利点は、①1940年代の地形改変以前の地形を復元できること、②個々の地表対象物を視認して対象物を特定できることである。一方、LiDARの利点は、①植生等に覆われた地域においてもラストパルスを利用することにより地表のDEMを捉えることができること、②地震前後のデータがあれば差分を容易に解析することができることである。一方、航空写真測量の短所は、①解析に専門技術が必要であり、②標定にGCPが必要となることであり、LiDARの短所は、①レーザーの反射地点が厳密には特定できないこと、②技術開発が新しいため1990年代以前のデータは入手できないことなどが挙げられる。こうした長所と短所があるため、航空写真とLiDARを組み合わせて補い合うことが重要である。
 2014年神城断層地震後に、Suzuki et al,2015はLiDAR差分により隆起量分布を明らかにした。さらに震源域において航空写真の再撮影を行い、2002年に撮影した航空写真と比較して、被害が著しかった堀之内地区の地殻変動を解析した。その結果、この地区が局地的に西方へ移動しながら隆起したことが判明し、逆断層運動と調和的であることがわかった。
 2017年熊本地震においても、衛星SARのみならず、航空機LiDARデータも地殻変動の検出に大いに役立った。今後はさらに、航空機LiDARと衛星SARと航空写真解析の3つを複合した地殻変動解析方法の高度化が望まれる。